3月17日(日)「能登半島地震復興支援チャリティーコンサート出演 & ダンサーからファーマーとなって」

3月17日のなのはな

「よし、みんな行くよ!」
 本番前、スタンバイのため舞台袖の扉の前に待っていると、少し離れたバンドメンバーの控えている場所から、あゆちゃんの明るい声が聞こえてきました。「はい!」あゆちゃんの声にこたえる皆の声に、気合いが入っているのを感じました。

 この日は、美作文化センターで『能登半島地震復興支援チャリティーコンサート』が開催され、私たちも演奏とダンスで参加させていただきました。前日には、現地での音調整や、演奏とダンスをあわせてのリハーサルも行いました。いつもと違った景色や出はけ、場所に少し戸惑ったところもありました。

 特に、大人数の『ホワイト・フラッグ』では、大人数での隊列移動が多く、リハーサルでも衝突が起こったり、改善点がいくつかありました。ダンススペースがステージ下のスペースで、幅およそ6.5メートルになります。後ろの人を大切に思い、下がりすぎないこと、コーラスを最大限に歌い、周りに自分の存在を伝えたり、相手を感じられやすくすること、など前日の夜に古吉野の体育館で練習して、皆と共有して詰めました。本番、(どうか、うまくいきますように)と、ただ祈る気持ちと、最大限に皆を感じて自分の役割、立ち位置を確実に果たしていこうと思いました。

 

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 今回は、約20分間の演奏時間で『ビューティフル・ピープル』『バッド・ハビット』『ホワイト・フラッグ』の3曲を演奏させていただきました。1曲目の『ビューティフル・ピープル』では、私は袖で待機をしながら、袖の暗幕の開け閉めの役割も行っていました。あゆちゃんやバンドメンバー、ダンスメンバーが幕の隙間から見えました。なのはなの演奏が始まり、会場がなのはなの空気に、色に変わっていくのを感じました。

 2曲目『バッド・ハビット』。堂々と、どこかミステリアスに、そしてのびやかに大きく、思いっきり表現しました。前日のリハーサルでは、お父さんお母さん、あゆちゃんから、動きが小さく見えると教えてもらっていた曲です。思いっきり、あゆちゃん、バンドメンバーの音にのせて曲の一部としての自分を演じるのは、やはりとても気持ちが良かったです。

 

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 この曲では、ローラースケートでやよいちゃんが一緒に演出してくれています。曲の途中、下手の袖幕からやよいちゃんがローラースケートで登場すると、会場のお客さんも興味津々で目で追ってくださっていることを感じました。最後のポーズをして、はけるとき、会場のお客さん、お父さんお母さんや、応援組のみんなの温かい笑顔や拍手を感じられ嬉しかったです。

 最後の曲『ホワイト・フラッグ』。多人数のダンスです。前日のギリギリまで隊列移動で衝突があった曲でとても緊張しました。しかし、曲を踊っていると皆がお互いをカバ―しようとしている空気、お互いを大切に気持ちを通わせながら、前に気持ちを一緒に飛ばしている空気がわかりました。
 私は、前列で踊ることが多く、後ろの大人数の隊列の皆が成功しているのか、していないのか、わかりませんでした。でも、空気できっとうまくいっていることを感じました。皆と踊って、表現している、こういう空気が好きで、こういう空気に自分は癒されると感じています。

 

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 今回、能登半島地震の復興支援の演奏でした。私は、実際にその場に行き直接誰かの力になったり、その場で一緒に大変な状況を共有することはできません。でも、今同じ時代、同じ時間に能登半島や、違う場所で大変な状況にいる人達がたくさんいるということを胸に置きながら、私が、私の目の前の役割や、使命、今回は演奏という形でしたが、そのようなことに誠実に向かい生きる、表現する、それしか出来ないけれど、それを真摯に大切に考え、実行しなければいけないのだと、改めて考えさせられました。それは、自分の傷、摂食障害、ということでも変わりないことだとも思いました。

 

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 今回、演奏をしていて、表現する意味と目的がはっきりとしていて、目の前の見てくださる人に訴えたい気持ちがハッキリとしていて、それを一緒に表現できる仲間がいて、思いっきりダンスという言葉で訴えることが出来る、ということがありがたいことだと感じました。いつかまだ見ぬ誰かの力に、少しでもなれたら、と思います。自分の存在が、その人たちの力になれると信じられるとき、私自身が救われているなとも思います。

(あけみ)

 

***

 

 能登半島地震復興支援チャリティーコンサートを成功の形で乗り越えた、わたしたち。
 喜ぶのはまだ早い。この日はビッグイベントが、もう1つ待っていた。
 気分はダンサーからファーマーへ切り替え。
 次に続くのは、春ジャガイモの植え付けだ。

 3月に入って、近頃、本当に暖かくなった今日この頃。
 いよいよ畑も春野菜に移り変わります。
 その第1号は、足が短く、育てるのが簡単、調理にも万能、年中通して欠かせない、野菜の王道、ジャガイモ。
 なのはなでも人気のなのはなカレーに必須な上、手間いらずで育てることができるので、春のジャガイモは大規模栽培で力を入れています。
 春ジャガイモの植え付けは、多人数作業のビッグイベントです。

 昼食をとり終えたとき、予定より早く作業を始めたほうがよいのではないか、とお父さんの一言。
「雨はいつから降る予報?」
 実は、午後から雨予報が出ていた。
 雨が降る前に、なんとか植え付けを終わらせてしまいたい。
「雨雲レーダーでは、15時から雨予報です」
 すぐになっちゃんが調べてくれました。
「それなら、今すぐ行こう!」
 お父さんの判断で、即、畑に向かうことになりました。

「でも降らないと思うよ。僕が畑にいる限りはね」
 晴れ男のお父さんの一言が、畑に向かう車の中でみんなの間でも交わされました。
 空は曇天。でもきっと雨はもってくれるだろう。
 お父さんの晴れパワーを信じて、わたしもお父さんが畑に来てくれたら、雨は絶対に降らないだろうという安心感がありました。

 

〈前作のジャガイモを保存しておいた種芋は、太く丈夫な芽が動き出すよう、前もってガラス温室のなかで日に当てていました〉

 

 今季、9枚の畑で育てる予定の春ジャガイモ。
 この日、その1、2枚目のスタートを切るのは、河原上・下畑で、品種はメークインを植え付けます。
 牛肥がのった1.5トントラックは、お父さんが運転してくれました。
 畑に着くと、昨日の午前中にみんなで立てた畝が真っ直ぐに並んでいて、畑のコンディションは良さそうでした。
 河原上・下畑ともに面積はそこそこありますが、すでに畝が立っていることもあり、この人数でなら、きっと一瞬にして植え付けてしまえるだろうと思いました。

 まず、お父さんが、これから始まる春ジャガイモの植え付け方法について、流れとやり方を説明してくれました。
 第1工程は、穴開け。畝の真ん中に30センチの間隔で植え穴を開けていきます。

 このときのポイントは、三角ホーで掘る回数をなるべく少なくすること。
「いち、にっ、さん。3回で穴を開けましょう」
 畑作業をするときに、よくお父さんが『ワンアクション』というポイントを教えてくれます。そのように無駄な動きをなくして、動き方や回数を固定することで、テンポよく作業がはかどります。

 さらにもう1つのポイントは、三角ホーの持ち方です。なるべく柄の長い位置で持ち、三角ホーをしっかり振り上げて、軽い力で穴を開けることをアドバイスしてくれました。

 

 

 お父さんの見本を真似て、わたしたちもいざ実践です。1人1畝に入って、お父さんの、「よーい、どんっ」で穴開けから始まりました。
 自分のなかで『3回で開ける』というポイントを意識しながら、30センチ間隔で、「いち、にっ、さん」……と唱えながら、掘っていきます。
 さらに柄を長く持つと、力も最低限で済む上に、腰が痛くなることがなくて、長い1畝だけど、まったく疲れ要らずでした。
 だんだんと自分のなかで心地よいリズムができあがってきて、三角ホーを振り上げる手と足が勝手に動いて、気がつけば端まで到達していました。
 スピード感もあって、運動会のようでもあって、とても楽しかったです。

 穴開けチームのあとを追うのは、第2工程の種芋置きです。
 こちらはペアになり、1人が種芋が入ったコンテナを持ち、もう1人が両側の畝の穴に種芋を置いていく、というやり方です。
 この時点ではとにかくスピード重視で、ポンポンと置いていくことがポイントです。

 

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 そしていよいよ第3工程の植え付けです。ここが1番、重要です。
 ジャガイモを種芋を植え付けるとき、農家さんによって、芽の向きを上にするか下にするかはそれぞれです。下向きにして植えることで、出てくる芽は丈夫で強い芽に育つことがあるそうです。
 今回、わたしたちはなるべく芽を出やすくするために、上向きして植え付けることになりました。
 昨春に収穫したジャガイモから用意した種芋は、芽が出かかった状態で、お父さんが、「種芋の状態としてはベストだ」と話してくれました。

 

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 開いた穴に置かれた種芋は、まだ芽の向きが統一されていないので、まず芽が上になるように置き直します。
 その上にモミ殻を一掴み置きます。ふわふわのモミ殻を間に挟んでやることで、勢いづいた芽が土も押し上げて出てきてくれる効果を狙います。
 その上に覆土をしますが、このとき、しっかり土をかけてやることが肝心です。
 覆土が薄すぎると、土が乾燥してしまうため、モミ殻が隠れるくらいにしっかりと土をかけてやりました。

 植え付けもなるべくワンアクションでスピード感を持つことも心がけましたが、全体を見てくれているお母さんが、「急がなくていいから、しっかり芽が出るようにね」と何度も声をかけてくれました。
 1番は、この種芋たちが発芽できる状態にしてやることが、わたしたちの果たすべき目的です。
 お母さんの言葉から、わたしも丁寧さも見失わずに、(芽が出ますように)と祈る気持ちを持ちながら、植え付けていきました。

 今回は役割を固定せずに、流れ作業でみんなで全工程に携わる形で進んでいきました。
 順を追って各工程に入れるから、短いスパンで作業が移り変わって、集中力も持続します。
 自分がやっていた工程が終わると、お父さんとお母さんが、「次はこっちに入って」と指示をしてくれて、見る見るうちに1枚目の畑が完了してしまいました。

 

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 最後の工程として、元肥がわりに牛肥を施しました。
 本来であれば、植え付け前に元肥を入れておくことがベストでしたが、今回は植え付けと同時にやりました。植え穴に入れるという方法もありましたが、それだと種芋に直接、牛肥が触れてしまい、肥料焼けをしてしまうリスクがあると、お父さんが話してくれました。そこで今回は植えた種芋のすぐ上に、つまり畝の真ん中に筋状に撒くことになりました。
 そうすることで、雨で染みこんでいった牛肥が芽に行き届きやすくなるのです。

 お父さんが1つひとつの工程ごとに作業をやる意味、気をつけるべきこと、抑えるポイントをわかりやすく説明してくれて、自分たちも何が大事なのかということを考えて意識しながら作業に取り組むことができて、全員の質が揃うことを感じました。

 多人数の牛肥まきはやっぱり楽しいです。エルフの荷台に4人の子が乗って、テミに牛肥を入れていってくれます。他のメンバーはエルフの横に2列に並んで、テミを受け取って、畑に撒いたら、また戻ってきて並んで……クルクルと回っていくシステムが楽しくて、また、牛肥が入ったテミを持って、畑を全力で駆け抜けるのも、みんなとだからとても楽しくて、どこまでも走れそうな気分でした。
 この日植え付けた2枚の畑を合わせて、1反ちょっとありますが、牛肥の量としては1500キロほど撒いたことになりました。反当たりにすると、900キロくらいです。

 

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 ラストスパートはみんなで1枚の畑に集結して、牛肥を撒ききりました。
「終わったーーー!!!」
 そう言って、見た時刻は、なんと15時の15分前。雨予報が出ていた15時前な上、作業開始から1時間も経っていなくて、ものすごくハイペースで作業が完了できたのだとわかりました。
 お父さんも、「今年くらい、芽が絶対に出ると思える年はないね」と言ってくれて、その言葉が嬉しく、わたしもきっと必ず芽が出揃ってくれるような気がしました。

 植え付けが完了して、いよいよこれからがジャガイモの成長のスタートです。
 お父さんが改めて、これから芽が出ていってからのこと――芽かき、土寄せ、芽の状態の判断基準などについて、今年初めて一緒に畑作業を経験していく仲間もいるなかで話してくれました。
「ジャガイモは育てやすい野菜です。なんといっても、収穫が早い。あと3か月もしたら、収穫できます」
 そうです、6月にはこの子たちも1つの種芋だったのが、何十個ものジャガイモになるから不思議です。そう思うと、野菜の生命力はやっぱりすごいです。
 ジャガイモが豊作になるように、まずは発芽を見守り、それからの手入れもしっかりとやっていきたいと思いました。

 

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 この日、穴開けから植え付け方法までを、お父さんから教わり、みんなで共通認識して、全工程に携わりました。まだ残りの植え付けが待っていますが、今日みんなで揃えた質のままに、今後も進めていけるように、わたしもしっかり覚えておきたいです。

 空は曇天のままに雨も降らずにもってくれて、畑を全力で駆け回ったわたしたちも程よく汗をかいて、気分も爽快。みんなと過ごした、気持ちの良い週末。

 この日はダンサーにもなり、ファーマーにもなり、大きなイベントが2つもあったけれど、どちらも自分たちのベストパフォーマンスで取り組むことができました。
 畑も演奏も、1つひとつのイベントを通して、気持ちの面でも一回りも二回りも成長していける。
 そういう場がたくさんあることが、とても嬉しく思います。

(るりこ)

 

***

 

 トウモロコシの植え付けをしました。
 育苗トレーのなかのトウモロコシの苗は、双葉がピンと立っていて、苗を見ているだけでも、トウモロコシの生命力を感じたし、ハウスのなかで大切に育てられてきた苗たちが、外の世界へと旅立つのだと思うと、自立の節目なのだと思いました。

 畝は事前に立ててあり、穴があいているところに、苗を置いていきました。
 はじめに、私は、苗を畝に置いていきました。セルトレーのポットを手の指で軽く押すと、苗が培土と一緒にぽこっと出てきて、培土には、白い長い根が張り巡らされていました。
 根を見たら、「もう畑に出る準備は出来ているよ」と、教えてくれているようでした。

 

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 根を切らないように、そっと、植えつけるところへと置き、そのあとは、みんなで定植をしました。

 双葉が隠れないように、土をかけていき、少し土がごつごつしているところは、さらさらの土になるように、手で軽く土をほぐして、トウモロコシを植えていきました。

 土に植わって、スッと立っている様子をみると、ちゃんと自立できたよと、喜んでくれているようにも感じました。

 みんなの植えつけのスピードが速く、スピード感のある作業でした。
 まえちゃんが全体をみて、先を読んで、みんなに声かけをしてくれます。みんなもそれぞれに、周りの動きをみて、必要なところにスッと入っていたり、声をかけ合いながら、協力して作業が進んでいくことが嬉しかったです。

 

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 植えつけた苗に水やりをして、根が活着しますようにと願いをこめ、寒さ対策としてビニールをかけました。

 トウモロコシは、お父さんも好きな野菜の1つで、夏にいただくトウモロコシは最高に美味しくて、私も大好きです。
 この先のトウモロコシ畑をイメージして、美味しいトウモロコシが実るように、今後の手入れも頑張りたいです。

(ふみ)