【3月号③】「究める味噌作り! 糀と歩んだ1か月」 ひろこ

 

 4週にわたって行った、2024年の味噌の仕込みが完了しました。
 1回につき、味噌2樽ずつ。最後の第4回では、味噌1樽と塩糀を作り、味噌は全部で7樽仕込みました。私は、その全4回の糀づくりに携わらせてもらいました。

■糀の名前とチーム名

 第1回では、最初に集まった時から、メンバー全員が黄色のバンダナをつけていて、それを見たなつみちゃんが、「イエローファミリーだ!」と言ってくれて、そこから『イエローファミリー』というチーム名に決まりました。

 糀の名前は、味噌メンバーでランニングに行ったときのお題回しで考え、メンバーで多数決を取って決めました。
 なるちゃんが考案してくれた、『おはぜ』と『はぜ吉』です。糀菌が繁殖し、お米に食い込むことを「はぜる」と言い、そこからとって名付けてくれました。たくさんはぜて欲しい。繁殖して欲しいという願いがこもっています。名前がつくと、より愛着がわきます。

 

 

 第2回では、種つけの日が2月4日で立春だったため、『立春春風くん』と糀という漢字と、糀が蕾のようなのと、春の芽吹きの蕾という所から、『米花つぼみちゃん』という名前がつきました。
 チーム名は、『糀とわたし』。どこかで聞いたことがあるな、と思った方もいるかもしれません。お父さんの新しい本『摂食障害とわたし』から連想しました。糀と私達の物語りという感じがして、気に入っています。

 第3回の糀は、『マチョー』と『ムーチョ』糀のもこもこが元気な筋肉のたくましさを連想させることと、元気に育って欲しいという願いが込められています。
 そしてチーム名は、どの作業をしても、食事もスピーディーというチームメンバーの特徴から、『SPEED JOBS』というチーム名に来まりました。
 実はこれは、私が思いついたのですが、スピーディー……速い……ということを考えていたら、パソコンの処理速度が速い……スティーブ・ジョブズ……? スピード・ジョブズ! 仕事が早い、スピードジョブズだ! とひらめいたのです。我ながらぴったりではないか! と思ったのですが、みんなが「良いね!」「それにしよう!」と笑って応えてくれて、嬉しかったです。

 

 

 そして第4回では、糀作りが初めてという、ほのかちゃんが入ってくれた9人のチームでした。このときはチーム名から先に決まりました。ほのかちゃんが考えてくれた、『ほっこりーズ〜今日も笑顔でいきましょう〜』で、メンバーの雰囲気がほっこりしているからということと、笑顔が素敵だから。ということで、考えてくれた名前です。それが、とても嬉しかったです。自分ではほっこりしているようには感じていなかったけれど、そんな風に言ってくれたのだから、ほっこりなメンバーに囲まれ、ほっこりと穏やか人でありたいなと思いました。

 糀の名前は、なかなか決まらなかったけれど、盛り込みの手入れの時に、しなこちゃんが、「ちょっと考えてみたのがあるんだ」と言って、発表してくれたのが、「もっちー」と「パラ夫」でした。思わず全員が笑ってしまったのですが、とっても愛着が湧く名前だなと思って、即決しました。
 このように、各チームの雰囲気、色がそれぞれにあって、それぞれのチームにピッタリなチーム名になり、糀の名前がつき、糀の物語がありました。

 名前を考えるのも楽しかったです。それから、4弾の糀が何故、モッチーとパラ夫になったのかには理由がありました。その理由については、後々……。

■なのはなの手作りお味噌

 なのはなの自給に必要な味噌は、年間約640キログラム。1樽が80キログラムになるので、約8樽分が必要です。
 1樽に必要な大豆が22・5キロ。お米22・5キロと、種糀22・5グラムを使って作る米糀。塩9キログラム、振り塩818グラム。
 味噌づくり1弾ごとに、2樽を仕込むため、1回に作る量が、この倍の量になります。

 

■米研ぎ・浸漬・水切り

 糀づくりのはじめの工程が、米研ぎです。精米した米粒には、糠層が付着しているので、水洗いで糠層を取り除きます。
 普段のお米研ぎよりも念入りに行い、お米をキレイにします。
 普段お米研ぎをしていないメンバーも、味噌づくりに向けて、一緒にお米研ぎに挑戦しました。

 お米は、どんどん吸水していき、時間が経てば経つほど割れやすくなってしまうので、手早く行いました。
 力を入れすぎると割れてしまうし、弱すぎると糠が落としきれないので、力加減も重要です。

 第1回では、お米研ぎに慣れている、なのはな米研ぎプロが集まり、とてもスピーディーにお米研ぎができました。
 お米研ぎが終わったら、翌朝まで水に浸けておきます。適度に吸水することで、いい蒸米になります。最低15時間、浸漬しておきたいので、午後にお米研ぎをする場合の目標時間が、16時まで。それまでに終えて、そして、翌朝7時に水切りをします。

 1つの容れ物に、5升ずつ入れ、それが6つ。計30升のお米を研ぎました。
 なのはなファミリーでは、『ミルキークイーン』を使用しています。

 2日目の朝、前日研いだお米を水切りします。
 水切りが悪く、米に水がついていると、その部分がべたつき、蒸し加減が均一になりません。

 自分達で普段使っている道具を駆使して、水が切れやすいように工夫をしています。ザルを斜めにして固定することで、水が落ちやすくなります。

■種糀

 水切りと同時に、種糀を量りました。 

 種糀は、ヒグチモヤシのBF1号菌。1回ごとに2樽分の糀を作りますが、それに対して使用する種糀の全体量である45グラムを量り、そして12等分し、約3・75グラム。それを1つのせいろの蒸米に種つけします。糀を繁殖させる「糀箱」に入れるときには、さらに3等分するので、1つの糀箱につき、約1・25グラムの糀菌ということになります。種糀は、抹茶のような見た目をしています。吹いたら全て飛んでいってしまうくらい軽く、繊細です。

 午前7時10分から水切りを行い、蒸米開始を8時30分に予定し、それまでの間に、ザルなどの片付け、蒸米に向けての準備をし、朝食を頂き、蒸米、種つけへと向かいます。
 第3弾のチーム『SPEED JOBS』は、朝食を食べるのも速かったです。

 

■蒸米

 第1回は、今年最初の味噌づくりだったけれど、はじめの蒸米では、ゆりかちゃんとなるちゃんが蒸し器についてくれて、耳たぶくらいのかたさの、とても良い加減に蒸し上がりました。『ひねりもち』といい、みんなで実際に触ってみて、その状態を確かめて、感覚を自分の中に入れることが出来ました。

 良い状態はどういう状態なのか、正しいイメージを持つことはとても大切に感じ、ありがたかったです。1人ひとりが理想を知って、みんなが同じ理想を持って、同じ気持ちで、同じところを目指していけると、気持ちもそろい、良いものができるように感じました。

 お米の芯がない硬さ。私たちが糀づくりに使っているミルキークイーンは、もちもち感が特徴のお米なので、糀にはあまり向いていないとも言われていますが、なのはなファミリーでは、ミルキークイーンを栽培しているため、そのミルキークイーンを使って、いかに糀を上手く作れるかを、試行錯誤もありますが、どのくらい蒸したら良いか検証しながら作っています。

 

 

 何分蒸すのがベストか、という目安が分かるように、時間を記録しています。
 蒸し器はとても繊細だなと思いました。少しの隙間があったり、お米の入れ方で蒸され方が変わってきます。その日の気温、室温、湿度などによっても蒸し時間は変わってくるだろうと思います。

 そんな、難しさもある中で、第1回は全てがパラパラの良い蒸し加減でお米を蒸すことが出来ました。
 2弾、3弾では、1回目の成功体験を引き継ぎ、さらに良い、理想的な蒸米が出来たと思います。
 台に広げるときも、パラパラ感を肌で感じ、音も違うと思いました。

 第4回では、いつものようにセットしたと思ったのですが、これまでのようにはいかず、真ん中に火が通らず、硬いところを蒸すために時間を足していくと、蒸し過ぎの部分が出て来て、結果として全体的にもちもちになってしまった蒸籠がありました。

 蒸米がもちもちしていると、菌がつきにくいと言われるため、なるべく米はパラパラしているほうが良いので、これらがちゃんと糀になれるのか、どうなのだろうと思いました。

 

 

 もちもちになってしまったのが、3つほどありましたが、パラパラに仕上がったのがほとんどでした。モチモチしているのは、リスクがあるけれど、でも、モチモチとパラパラ両方あることで、糀の繁殖や仕上がりにどういう違いがあるのか、ないのか、知れることも、検証できる機会でもあると思い、逆に良かったと思いました。
 ということで、モチモチしているから、『もっちー』パラパラしているから『パラ夫』となったという経緯があります。

 来年に向けて、蒸米を確実に成功させる為に、原因を探し、思い当たるところすべてに注意して、蒸米も確立させたいと思いました。

 せいろにお米をセットするときに、押し固めてしまうと上手く蒸されないこともあったということで、ふわっと入れること。そして、真ん中をくぼませること。
 そして、火加減。コンロによって、火力に違いがあるので、それぞれこれまでに培った、一番良い火力で、確実に行うこと。

 一つひとつの工程で、イレギュラーを作らずに、行ってみること。
 パーフェクトに、全てをパラパラに蒸せるようにしたいです。

 蒸米が出来たら、種つけ台に移し、冷却します。糀菌は、45度以上で死滅してしまうので、蒸したてほやほやの蒸米を広げ、杓文字で広げ、ひっくり返したり、うちわで扇いで人肌程度まで一気に冷まします。終了時に30度を目指すため、冷却を40度から42度で切り上げて、種つけにむかいます。
 この時も、チーム『SPEED JOBS』は、さすが! 特に手早かったです。うちわを動かす手の速さ、杓文字をかえす手慣れ感。職人技でした。

 

■未来に繋がる糀作りに

 これも、先輩方がマニュアルに残してくれているものなのですが、他にも色々なところに工夫や、気遣いを感じられるところがたくさんあります。細かなところにも意識を向けて、自分達で作る糀を、よりよい糀づくりにしていっていることを感じます。毎年の記録も細やかに残してくれてあります。

 そうして、年々積み重ね、よりよくなり、良い糀作りになっていっているのだと感じています。自分も、マニュアルは参考にするけれど、頭も心も柔軟に、自分もつくって行く側として、アンテナを張り、未来に繋がる新しい発見、やりかたを見つけられるよう、尽力したいと思いました。

 こうして、自分が新しい価値観を作っていく1人になるんだという心意気で取り組むと、より一層楽しさもやり甲斐も倍増するように感じました。

 

■いよいよ種つけ

 1弾で、種つけをするときに、お米をまんべんなく平らに4角く広げて種つけをしていたのですが、そうすることで、均一に種糀を振りやすくなるのと、このあとの工程で3等分する時にも、等分しやすいということが分かりました。
 これが、これまではやり方が統一されてはいなかったことでした。それが、良かったこととして、2弾からも通してこのやり方に統一して行いました。

 ただ、広げると温度が下がりやすいので、スピード感が大事になってきます。また、お米の1粒ひとつぶに種糀が付着できるように、お米の1粒ひとつぶをなるべくバラバラにさせます。

 さぁ、これからいよいよ種つけに入ります。
 職人になったつもりで種糀を振っていきます。
 左手に種糀がのったアルミを持ち、右手には茶こしを持って、茶こしを揺らして種糀を蒔いていきます。ゆっくりしていると、1か所に偏ってしまうので、一気に手早くまんべんなくやることが重要です。緊張もするけれど、これが楽しいです。

 

 

 そして、手の平をつかって、両手でお米を軽くもむようにしてすり上げます。お米の表面に傷をつけることで米の内部に繁殖しやすくなるため、お米の1粒1粒にまんべんなくつける意識で行いました。

『糀菌は1人で歩かない』と言われています。
 ですから、私達の手で、お米の1粒ひとつぶに付けてあげなければ、糀菌がついていないお米は、『ただの米』になってしまいます。責任重大です!

 さらにこの時に、時間をかけすぎてしまうと、温度が下がってしまうので、手早く行いました。
 種糀が、まんべんなくお米についたら、3つの糀箱に移します。全体を3等分して、それらを、なまこ型に形成します。

 

■引き込み

 種つけを終えた糀を、糀箱に移したら、糀をなまこ型に成形していきます。

 3箱を比べてみて、量が均等になっているかを確かめ、なまこ型を作るのですが、ここでの発見は、ぎゅっと凝縮させることで、繁殖が進むということです。

 第1回を振り返ったとき、なるちゃんが、切り返しくらいまでは、なまこ型をぎゅっと寄せるようにしてやると、繁殖が進むんじゃないか、と言ってくれて、2弾からは統一して行いました。すると、盛り込みの時には、箱の中のお米をまるごと手で持ち上げられるくらい板状になっていて、よく伸びた菌糸がお米同士を繋ぎ、かなり繁殖が進むことが分かり、このやり方も、新たにマニュアルに加わりました。

 菌同士がくっつきあっていると、繁殖がしやすいのだと思います。お米はくっつきあっていると、その間に糀菌が入り込めないので、バラバラにする必要があるけれど、菌がお米のまわりについたら、くっつきあっていたほうが、繁殖がしやすい。

 その様子が、仲間を集めて仲間と共に輪を広げていくようで、仲間がいれば百人力! という感じがして、私達なのはなファミリーとも似ている気がして嬉しくなりました。

 

■タオルの絞り加減

 なまこ型が作れたら、熱湯消毒したタオルを保湿用に掛けて、いよいよ糀室に入れます。
 このタオルの絞り加減も、変化させたことの一つでした。

 糀が自分で発熱するまでの間。最初のスタートが特に、糀が繁殖する為に大事な時期で、お米がべたついていないことが大事だと感じ、そのために、タオルの絞り加減を硬めにするという方法をとりました。タオルは、保湿の為、最初は緩めにしていたのですが、水分が多いとお米がべたつきやすいのではないか、ということで硬めにしてみました。

 すると、次の手入れまでにタオルが乾き過ぎて悪影響が出るということも無く、お米がべたつかないということが分かりました。お米がパラパラのほうが糀菌が繁殖しやすいため、なるべくべたつかないようにすることが、とても大切なこと、そして、こうした細部にまで意識を向けることで、進化させられるんだということを感じました。

 タオルを掛けるのは、大切な赤ちゃんにお布団をかけてあげるような気持ちになります。(頑張ってね)(たくさん繁殖してね)そんな祈るような気持ちになります。
 糀の上にタオルをかけ、カビ防止で、糀箱の壁にタオルがつかないように、端を折り込みます。

■糀室

 タオルを掛けたら糀室に入れます。
 糀室には、18×2で、36箱の糀箱が入るようになっています。それぞれに番号を振り、後の温度・湿度管理のときにも、並び順や配置に気を配ります。
 糀室にはペットボトル煙突がついていて、内部の天井付近には、水滴が落ちるのを受けるビニールと小ボールをセット。
 一方、一番下には電熱器、その上にはお湯を入れた鍋を置きます。電熱器を使って糀室内を温めるのですが、電熱器には小鍋にお湯をいれて蒸発させて、湿度を高めるという工夫も、自分達で考えたものです。

 

 

 さらにその上には発泡スチロール板で仕切りをつくり、水滴が床に落ちないようにします。そこには温度計をセットし、糀室内の温度と湿度を計り、見回りの時に確認しています。

 この育苗機(糀室)は、なのはなファミリーならではの、手作りのものです。糀箱も手作りです。ラックとなっているフレームは、お米の苗を運ぶときに使う棚と同じ形で、そこに丁度入るサイズの糀箱を作りました。

 一番はじめは、こたつを使っていたという話も聞きました。いろんな試行錯誤があって、今の形が作られ、上手く糀が作れるようになり、マニュアル化し、毎年、確実に糀を作り、味噌を仕込んで、手作り味噌を年間通して頂けることが、今では当たり前になっているけれど、当たり前ではないのだな、これまでの積み重ねてきたもの、努力があるからこそなのだなと思います。そう思うと、本当にありがたいなと思います。

 工夫が詰まった糀室へ、すべての糀箱を収めるまで、時間も意識しながら確実に作業するので、種付けと引き込みは終始、とても集中します。みんな必死です。
 けれど、あっという間に最後のせいろに……。

 

■温度管理(見回り)

 いよいよ全ての糀が糀室に入りました。ここからは温度管理をして、糀を育てていきます。これからは、1時間おきにチームで見回りをしていきます。
 段階ごとに、糀の最適温度や湿度があり、次の手入れの目標温度に向けて温度管理をしていきます。

 盛り込みという手入れまでは、目標の35度くらいまで糀自ら発熱する力が無いため、人工的に温める必要があります。電熱器を使って、糀室内を温めます。電熱器は、200ワットと400ワットに切り替えることができ、適正温度に持っていくために調整します。

 私達は、糀室に毛布を掛けて保温もしているのですが、この毛布も大きな効果を発揮してくれています。

 1、2弾を通して感じたことでは、手入れ後に早めに33度へもっていくということです。糀の生育の適温は、だいたいが33度以上。はじめは、32度から36度、一番手入れまでは、33度から37度というように、33度が分岐点にあるように思います。なので、その33度に早めに持っていくことが、糀の甘みを出し、繁殖に繋がるのではないか、と思いました。

 

 

 手入れをすると、30度以下に下がります。そこから自分で発熱するようになれば、すぐに上がることもあるけれど、糀の力だけに任せるのではなく、人工的にも温かい環境を作ってあげて、なるべく早く適正温度にしてあげると、その分繁殖が進む。そして、なるべく高い温度を経験させると、より繁殖が進む、ということを感じました。

 前半でも品温が40度近くまで上がることがありますが、温度が高く上がった糀は、真っ白に繁殖が進んでいました。上がり過ぎは良くないですが、特に一番手入れからの後半は、40度を経験させると、より甘い糀に仕上がりました。

 見回り表には、その時の糀の温度、外気温、糀室の湿度の他、行った手入れ、連絡などを記入していきます。その記録が、宝だなと感じています。私達も、以前の記録を見させてもらって、参考にさせてもらうことがたくさんあったり、歴史を感じたりします。
 はじめは温度計が一つでした。
 それが3つになり、今は6個の温度計を使っているけれど、6か所全て温度が違います。対策の仕方も、以前はうちわや扇風機をよく使っていたけれど、今はあまり扇風機を使わず、箱の配置替えで対策が出来ていたり、変わってきています。

 手入れまでの間は、少人数での見回りとなり、メンバー全員が集まることがないので、見回り表が連絡帳ともなり、その連絡や経過を見て判断し、今どうするべきかを考えます。
 こうして、歴史を繋げ、より良く進化させていっているのだなと感じ、自分もこうして味噌作りに携わることができて、とても嬉しく思いました。

 

■最初の手入れ

 一番最初の手入れは、『切り返し』と言って、糀菌をまんべんなく繁殖させるために米の塊をほぐし、全体を攪拌し、糀菌の繁殖を促します。
 糀は、温度を高くしたり、下げたりと繰り返し、その一番頂点の温度が段々に高くなっていくのが理想です。その理想的な温度変化の表もあります。
 蒸しタオルをはぐって見てみると、すでにやや繁殖が進んでいることを感じました。糀の良い香りがします。そして、攪拌すると、お米が動く!! 
 ピコピコと動くのが、糀菌が目の前にいるようで、とても可愛らしかったです。
 糀は生きてる! と実感出来る瞬間でもあります。
 この時の蒸しタオルの絞り加減はやや硬めにしました。

 

 

■夜の見回り

 この日の夜は、家庭科室の隣の部屋の音楽室に寝て、夜中も1時間おきに見回りをしていきます。種つけから1日目、2日目と、2日間、音楽室に泊まります。
 ぐっすり眠ってしまっている時でも、見回りの時間に起きそびれないよう、私達には目覚まし時計というアイテムがあります。

 お仕事組のなるちゃんが用意してくれた、最初の目覚まし時計。なんと、時間丁度にセットしても、10分前に鳴ったり、10分後に鳴ったりと規則性がない……。その為、結局自分で起きました。アラームよりも私のほうが正確だと言われました(笑い話です)。

 それで登場した2代目目覚まし時計。今度はアナログではなく、デジタル時計! アラームに特化した時計を用意してくれて、これは、デジタルなのでアラームの鳴る時間が狂うということがない。1時間おきにアラームをつけたいと言ったら、それならタイマーが良いのではないかとお店の人に言われたということですが、それにも笑ってしまいました。1時間おきに起きたい人など、そうそういませんね。

 それでも私は、アラームが鳴る前に目を覚まし、自ら起きてしまいます。糀が好きで、糀に会えるのが楽しみなので起きられます。
 少々余談をはさみましたが、私達の裏話です。

 

 

■盛り込み

 翌日の朝、盛り込みという手入れをしました。
 引き込みから約18〜20時間が経つと、米粒に白い斑点が見えて来ます。これが、糀の菌糸。米糀が米の表面に繁殖することを、「はぜる」といい、繁殖の状態を「はぜまわり」と言います。この時点で、はぜまわりは3割が理想です。

 第1弾の「おはぜ」と「はぜ吉」は、この「はぜる」から名前をとっています。
 糀に掛かっているタオルを取ってみると、「わぁ〜!」という歓声。白くなって、繁殖している様子がうかがえます。2弾から、タオルの絞り加減を変え、引き込みと切り返しでのなまこ型の成形をギッシリさせ、その効果もあってか、この時の繁殖率が上がったように感じました。

 特に4弾では、箱の底から米糀を両手ではがすと、なまこ型が崩れずに持ち上げられるくらい、板状になっていて、良く繁殖していました。はぜまわりも3割以上になっていたと思います。
 心配していた「もっちー」も、繁殖が進んでいて安心しました。

 この時点でも、米粒をよーく見てみると、わずかに菌糸が伸びているのが分かりました。お米に産毛が生えているようにも見えます。
 ここから一番手入れまで、33度から37度をキープし、38度に持っていきます。1時間に2度ペースで上がる予想です。

 この予想を元に、事前の対策を打っておきます。そして、手入れの時間から逆算し、入れ替え(糀箱の配置を入れ替える作業)を最終にする時間をメンバー全員で共通認識しておきます。

 次の一番手入れは17時予定なので、14時か、15時が最終の入れ替えになるね、と話合いをしました。
 そうして、予測を立ててながら、実際の糀の様子を見て判断し、一番良いかたちで目標の温度にもっていけるようにしていきました。
 今年の味噌づくりでは、この盛り込みから一番手入れが特に温度が上がり、入れ替えをたくさん行いました。特に、2弾と4弾は、とても元気が良い糀でした。

 

 

■糀箱の段の入れ替え

 入れ替えとは、糀箱の段の入れ替えです。温度計を上段、中段、下段に2か所ずつ、計6か所の糀にさして、温度を見ているのですが、温度が高くなり過ぎるのを防ぐ為、そして、全体的に温度のバランスを良くするために、温度の高いところと低い所を入れ替えて、温度差を調整します。

 糀室内では、はじめは上が低く、下が高いという状態から、徐々に上段が高くなり、次は中段が高くなると段階的に温かい空気の流れが変わってきます。糀室内の右側と左側でも差が出来ることがあります。部屋の環境のためか、後半では、右下の温度がどうしても思うように上がらないというのが常にありました。

 2弾では、入れ替えをしても、どんどん温度が上がってしまい、今期初めて左右の入れ替えをしました。大抵は、右側と左側では、それぞれ上・中・下の入れ替えが基本ですが、あまりに差があったり、温度が高くなりすぎてしまいそうな時には、左右の入れ替えもします。
 これでどうにか持ちこたえてくれて、夕方の一番手入れに入ることが出来ました。

 4弾では、どう入れ替えをしても、ほとんど全ての糀が38度以上で、一部は40度を超えてしまいました。ぐんぐん温度が上昇する元気さで、ここで初めて扇風機を登場させました。

 糀は、42度(又は45度)以上になると死滅してしまうと言われています。
 かけている布やビニールの中に扇風機を入れて、温度を下げたい場所にめがけて扇風機で風を送ると、温度が下がっていく、と対策法に書いてあったものの、ここ3年ほどは扇風機を使わず、入れ替えでどうにか温度が保たれていたようです。私は初めて扇風機を使った対策を行いました。

(どうか温度が下がって下さい。糀を助けて下さい)
 という祈る気持ちでした。バディと一緒に、必死に願い、温度を確認しつつ、10分間行いました。
 すると、徐々に温度が下がっていくではありませんか!
 湿度が下がることを心配していましたが、思ったほど湿度は下がることなく、安全圏で湿度を保ちつつ、品温を下げることが出来ました。

 しかし、それでも、どんどん温度が上昇します。
 部屋の温度を下げるために、窓を開け放ち、換気扇をつけ、外側から扇風機を当てて、部屋の温度を下げても、糀の品温はどんどん上がり続けます。とても元気です。もっちー・パラ夫も共に元気です。ほとんどの糀箱が40度に達して、入れ替えをしていました。

 再び危機的状況にきて、再び扇風機を登場させました。

 私は、これまで扇風機を使ったことがなく、扇風機の良さも知らなかったけれど、扇風機の効果を知ることができて嬉しかったです。色々な対策法を実際にやってみて、どのような効果があるかを知っていると、状況により判断して、そのとき一番良い対策をしていける。
 イメージが持てる、と思いました。なので、危機一髪ではあったけれど、扇風機を使う機会ができて、逆に良かったなと思いました。  

 

 

■一番手入れ

 『盛り込み』から10時間。ハラハラする時もありましたが、無事に一番手入れを迎えることができました。ここから、糀作りの後半に入ります。
 『手入れ』とは、蒸米を手で攪拌することです。攪拌することで、熱が放出されて品温が下がり、同時に酸素が供給されます。
 この『一番手入れ』が、糀作りの中で一番好きという人もいるくらい、感動する場面です。
 糀に掛っている蒸しタオルをはぐると……。

「わぁ!」と、歓声が上がります。
 真っ白なふわふわの糀。菌糸が伸びている様子は、目がぼやけているように見えます。
 肉眼でも、しっかりと菌糸が伸びている様子が分かります。思わず、顔を近づけてしまいます。
 何度も声をあげてしまうくらい、感動と嬉しさとが入り交じります。
 真っ白なふわふわな糀達が、本当に可愛いなと改めて感じる瞬間です。遠目からみると、タオルをはぐったのに、タオルに見えるという声も。

 

 

 特に温度が高く上がった糀は、しっかりと繁殖しているように感じました。
 板状になっている糀の塊をバラバラにするように、そして、空気を入れるようにして、攪拌していると、蒸米の時にパラパラしていたものは、パラパラパラと糀箱の上でも、良い音がして、手にべたつきませんでした。
 まるで、チャーハンのようです。

 蒸しすぎで心配していたモッチーも繁殖が進んでいる様子でしたが、やはりパラパラしているのに比べると、米の内部への食い込み方が弱いなと思いました。
 感触は、ややモチモチ。繁殖はするけれど、お米のもちもち感は変わらない様子。表面の繁殖は進み、真っ白くふわふわになっています。

 一番手入れでは、これから温度が上昇していくので、なまこ型をやや崩して広げ、真ん中にくぼみをつけて、熱を放出しやすいようにします。
 一番手入れから仕舞仕事まで、33〜39度、湿度90パーセントをキープし、最終的に39度へ持っていきます。

 

■二番手入れ

 一番手入れから5〜6時間後、二番手入れを行います。二番手入れは一番手入れと同じ内容です。二番手入れは、必ずやる必要がある手入れではないのですが、二番手入れをすることで、夜中の管理が楽になることと、タオルが乾燥しやすいので、手入れをすることで、蒸しタオルを交換することができ、保湿にもなることから、私達は基本的に二番手入れを行っています。
 品温が38度に達した頃に行います。

 過去の記録によると、一番手入れからは1時間に4度のペースで上がるというデータがありましたが、それはコシヒカリやあきたこまちを使用していた頃のデータで、ミルキークイーンの場合は、後半は品温の上昇が緩やかになるのが特徴的だと感じました。

 1時間に4度、温度が上昇すると見込んで対策を早まりすぎると、なかなか温度が上がらないということがありました。
 基本的な糀の最適温度、33度以上というのは基本で、その温度までは早めに持っていくということが大事だと思いました。まずはそこまで温度を持っていってから、対策を行う。

 今年初めてやってみた対策のもう1つが、毛布を取り払う、ということです。糀室にかけている毛布が4枚ありますが、毛布の前側を開いてたくし上げる、ということはしていても、毛布を取り払うということは、これまでしたことがありませんでした。

 今回、温度が急上昇していった時に毛布を取ってみました。
 4枚のうち、2枚をはぐり、それでも上がっていっていたらもう2枚も取り払うと、大分効果があり、発見でした。
 夜中の換気扇も効果的でした。外気温が低い日は特に効果的で、冷たい空気が室内に入って来るため、室内が冷えて、糀の品温の上昇を防ぐことが出来ました。

 逆に温度を上げたいときには、毛布を掛け、窓を全て閉め、ペットボトル煙突の蓋を閉める。鍋のお湯を多めに入れる。電熱器を両方つけるなどをすると、温度が上がります。

 

■仕舞仕事

 夜中の入れ替えは何度か行いましたが、危機的状況にはならずに、予想通りという具合で、むしろ、わりと穏やかに『仕舞仕事』を迎えました。
 2番手入れから7〜8時間後、品温が39度に到達した頃です。

 仕舞仕事が最後の手入れとなります。最後なのかと思うと、寂しい気持ちにもなります。タオルをはぐると、攪拌した糀達も真っ白く、菌糸を伸ばし、繁殖が進んでいることが分かります。

 仕舞仕事では、糀箱全面に糀を広げ、最後に川の字の溝をつけます。これを、糀の『花道』と言います。
 花道というと、糀が自立へと向かう道。バージンロードを通って花嫁さんが、旅立つようなイメージがあり、糀が花嫁さんに思えてきます。

 嬉しいような寂しいような、親心のような気持ちになります。
 仕舞仕事後、出糀まで、33度から39度をキープし、40度に持っていき、出糀となります。

 

■翌日の仕込みに向けて

 仕舞仕事の後は、翌日の味噌の仕込みの準備で、大豆を洗いました。大豆は、なのはな産の白大豆で、今年みんなで選別した大豆です。その大豆が、選別していたときも感じたけれど、とてもキレイな大豆で、短時間で洗うことが出来ました。

 大豆の2・5倍の嵩の水を入れ、翌朝まで浸水します。その他、塩の準備や、重石となるブロックの準備などを進めました。
 出糀は、引き込みから48〜54時間程度と言われています。なのはなでは、糀作りシステムが確立してからはだいたい、午後4時頃が目安時間となっています。そこから逆算して、入れ替えをする時間のラスト時間は何時か、というのをメンバーで共通認識しました。1時間に3度ペースで上がる予想。およそ2時間おきに入れ替えをする心づもりで、予測を立てます。

 ここでは、思ったよりも温度が上がらないという特徴がありました。特に4弾は、面白い程に緩やかでした。場所により、40度に達するところは出てくるけれど、1度下げるとなかなか上がらなくなるという特徴がありました。
 お昼に入れ替えをし、その後、温度がなかなか上がらず、緩やかに上がっていくのを、40度に達するまで待つという感じでした。
 1弾では、16時丁度に40度に達し、出糀を迎えました。

 私が、温度管理をするなかで、意識していたのは、全ての糀が40度に達することでした。
 糀作りの後半、出糀までの12時間の間に、6時間は品温40度以上を保つと、甘み成分のグルコアミラーゼが分泌され、甘みの強い糀になると言われています。そのため、なるべく高い温度を保つことを意識しました。

 入れ替えをすると、どうしても品温も糀室内の温度も下がってしまいます。特に仕舞仕事から出糀までの間は、入れ替えの際に糀室内の温度を下げすぎないように注意すること。また、ミルキークイーンの場合は、後半の温度の上昇が緩やかになるということを踏まえての対策をすることを意識していきたいと思いました。

 特に後半は、糀室内での温度差が大きくなってきます。下段は、どうしても温度が低いままで、中段が高くなります。そのため入れ替えをするのですが、この際に、全ての糀が40度に達することができるように、入れ替え方も考えます。 

 見回り表に色をつけて、どの糀が40度に達したか、何度を辿っていっているか、というのが分かりやすいようにしました。色をつけることで、どの番号が、どこにあるのか、ということも分かりやすくなりました。

■出糀

 全体が40度に達したら出糀です。
 糀を糀室から出し、10度以下の風通しの良いところで急冷して、菌の活動を止めます。糀菌は、米の内外まで十分に繁殖すると、それ以上繁殖は進まず、むしろ胞子を作って、糀がだんだん黄緑色になっていき、これを『老』と言い、温度が高い室内では、菌が活動を続け、老化してしまいます。

 糀室から糀を出し、かけていたタオルをはぐります。すると、歓声が上がります。
 真っ白に、さらにふわふわに、糀が成長しています。高い温度を経験した糀は、よりしっかりと繁殖が進んでいるのが分かりました。お米を割ってみると、内部まで菌が食い込んでいるのが見えました。
 これまでかけていたタオルは、熱湯消毒をして、再び糀にかけていたけれど、もうそれはいらない。タオルをすべて取り払い、糀箱が互い違いになるように重ね、冷却します。
 ついに、糀の旅立ちだと思いました。

 

■甘い糀になったのは

 1弾から4弾までで、一番甘い糀になったのは、3弾だったと思います。
 1弾は、今年初めての糀作りでしたが、とても上手くいって、甘い糀になり、良い糀が出来たと思います。2弾も上手くはいきましたが、甘さがもう一歩足りないように感じました。

 2弾を終えて思ったのが、後半の温度がいまいち上がらなかったので、40度近い高い温度を長い時間経験させることが、甘さに繋がるということを感じました。

 

 

 1弾、2弾の反省を踏まえて最善を尽くした3弾でした。その結果、甘みの強い糀ができました。3弾は、お米の蒸し加減も良く、温度管理も上手くいったと思います。これまで中心となって糀作りをしてきてくれた、ゆりかちゃんやなるちゃんが、ミルキークイーンを使っての糀作りを経験した中で、一番良い出来ではないか、と言ってくれました。3弾は、仕事のスピード感もあり、スピード感のある仕事は、良い仕事(結果)に繋がる。そのスピード感の良さも、勝因なのかなと思いました。

 4弾では、もちもちの『もっちー』とパラパラの『パラ夫』とで、違いを比べる事ができて、それが分かりやすかったと思いました。
 4弾は、ほとんどの糀が、40度以上を通過し、出糀を迎えました。温度管理は、良かったと思います。
 その中で、もっちーは見た目は真っ白にしっかりと繁殖している様子だったけれど、食い込みが甘いように感じ、甘みもそこそこはあるけれど、弱いと感じました。それに比べてパラ夫は、しっかりと食い込み、甘みが強いように感じました。

 やはり、お米がパラパラしているほうが繁殖がしやすく、温度が高いほうが甘くなるのだなと感じました。

 

 

 いよいよ翌日は、味噌の仕込みです。
 大豆を煮る準備で、台所の大鍋を洗ったり、ミートチョッパーの準備。そして、糀が糀室から卒業したので、糀室の解体をします。かけていた毛布や布、ビニールを外し、手洗いや洗濯機に入れて洗濯をし、温度計や、電熱器も取り払い、育苗室のラックだけとなり、糀が冷めたら、再びラックへと戻します。
 大鍋は、油が浮いてこないように、念入りに洗いました。

 

■大豆を煮る

 いよいよ、味噌の仕込み当日です。当日の早朝、大豆を煮るところから始まります。第1回戦の仕込みの為、朝6時半には点火しました。
 今年の味噌づくりでは、河上さんが見て下さって、大豆の煮方を動画で残し、マニュアルを作りました。紙面での言葉や写真よりも、よりリアルに分かり、事前に見て予習をしておくことで、イメージがつきやすく、上手く出来たと思いました。
 灰汁の取り方の基本から、水の量、どのように水が澄んで来るのか、豆が踊らない、一番灰汁を出せる火加減の様子が動画で見ることができると、とても分かりやすいです。

 私は、1弾から4弾まで毎回、大豆を煮させてもらいました。
 大豆は、いかに灰汁を出させるか。そして、豆を踊らせないようにするか。濁った水で大豆を煮ても、美味しい豆にはなりません。灰汁を出させることが大事で、そのため、灰汁が出るような火加減にしなければいけない。けれど、踊らせると味が悪くなるので踊らせない火加減です。そうして、火加減を見ながら、ひたすら灰汁を取っていきます。

 灰汁を取っていると、水も減ってきますので、水かさが減ったら水を足します。これを、灰汁が出切り大豆が柔らかく煮えるまで続けます。
 大鍋だと、どうしても火が一部に集中してしまい、沸騰している所と、弱い所とで差が出てしまうのですが、そんな時は、大きな杓文字で混ぜると良いと河上さんが教えて下さり、すると、煮えムラも防ぐことができると同時に、沸騰も和らぎました。

 初めてやった時は、大豆を踊らせないようにということに重点を置きすぎて、火加減が弱すぎて、煮る時間が長くかかってしまいましたが、河上さんに教えて頂いたり、回数を重ねるうちに、これがベストの火加減というのを自分の中に入れることができ、迷いなく、スムーズに煮ることが出来るようになりました。

 私は、大豆を煮るのが楽しいなと感じ、とても好きになりました。意識するところがたくさんあるけれど、それも楽しさの一部だなと思います。
 火加減を見て、水加減を見て、灰汁をひたすら取っていき、どんどん水が澄んでくること。灰汁が出なくなった頃、丁度豆が良い具合に煮え、時間的にも丁度良いタイミングで煮あがると、達成感を感じました。

 大豆を煮て家庭科室での味噌の仕込みの場に合流すると、「大豆、凄く良く煮えていたよ!」と笑顔でゆりかちゃんが言ってくれて、嬉しかったです。特に、4弾は一番良く煮えたかなと思います。みんなも、握りやすいと言ってくれたり、ミートチョッパーもかけやすく、スムーズにいったと教えてくれました。(良かった)と思いました。
 同じ味噌メンバーのしなこちゃんと1鍋ずつ煮させてもらい、しなこちゃんも毎回大豆を煮てくれていたので、2人共マスターできたかなと思い、凄く嬉しかったです。

 

■楽しい空気で

 味噌玉づくりは、煮た大豆と、糀、塩を混ぜ合わせて、玉を作るように丸めながら空気をぬいて、味噌玉を作っていきます。できるだけ空気を抜き、空気中にいる雑菌が味噌の中に残るのを防ぎます。 

 その味噌玉を樽の中に入れ、敷き詰めたらげんこつで空気を抜きながら潰していきます。
 毎回、たけちゃんやちーちも来てくれて、みんなにも手伝ってもらって、味噌を仕込みました。みんなが笑顔で、優しくて楽しい空気のなか、みんなと味噌の仕込みをできる時間が、幸せだと感じました。特に、第4弾では、その日が雨で、全員で味噌玉づくり(仕込み)ができて、それが、とても嬉しかったです。

 

 これまでできていなかったという、桃のメンバーや建築作業のみんな、まえちゃんも来てくれました。作業台の周りに人が入りきれないくらい、ぎゅうぎゅうになって味噌玉作りが出来て、糀も大豆も、嬉しいだろうなと思いました。

 味噌は、触れた人の気持ちで味が変わるとも言われ、その時にしか作れない味噌になります。
 絶対に美味しい味噌になるに違いないと思いました。

 なのはなのお味噌が美味しい理由は、ここにもあるのだと思います。みんなの気持ち、楽しい空気感、喜びがつまっているからこそ、一層美味しく、そして、一緒に食べる仲間がいるから、またより一層美味しいと思って食べることができるのだなと思います。

 

■塩糀

 第4弾では、作った糀の半分を、塩糀にしました。
 塩きり糀を作り、それをタッパーに入れて、水をひたひたまで入れて、毎日かき混ぜます。すると、2週間ほどで完成します。バナナのような甘い香りになり、お米の形状がなくなり、とろとろになるのが完成の目安です。
 糀を作るにあたって、再び見廻り当番を作り、毎晩交代で混ぜています。

 そこでも、気温や状態を記録していっています。毎日確実に変化していて、発酵が進んでいる様子が覗えます。特に、香りの変化が面白いなと感じます。

 はじめは、ザ・糀という匂いだけれど、そこに酸味が出てきて、徐々に甘い香りへと変化していきます。状態も、はじめは混ぜるのが大変なくらい重たく、米感があったけれど、だんだんとしゃばしゃばとしてきて、かき混ぜるのも楽にできるくらいになってきました。

 

 

 ちなみに、塩糀になった糀は、『緑のもっちー』で、塩糀の名前が『真っ白い恋人 〜塩糀のもっちー〜』と命名しています。
 塩糀にも名前をつけて、愛着を持って作っています。

 この記事を書いている時は、まだ完成していないので、完成を楽しみに、見回りを楽しみにしています。
 糀作りが終わって、糀に逢えなくなるのは寂しいなと思ったけれど、塩糀があって、糀を見られることが嬉しいです。
 出来あがって、調理されて食卓で見た時、作った時のことを思い出すだろうなと思いました。
 みんなに愛される、美味しい塩糀になってくれると良いなと思います。

 今年仕込んだ味噌達は、6月頃に天地返しをします。天地返しをすることで、上下が入れ替わって発酵が均一になることと、発酵が促され、味噌の風味や味に深みが出ると言われています。

 なのはなファミリーでは100リットルの漬け物樽に仕込むため、発酵を促すために、この天地返しが大切な作業になっています。
 また数か月後、再会できるのが楽しみです。

 

■難しさと楽しさ

 味噌作りのマニュアルはあり、同じような状況や場面はあったり、条件が一緒ということはあると思いますが、まったく同じということは一切無く、その時の、自分達の状況、メンバー、時間。お母さんがよく教えて下さるように、時・場所・時間が違えば答えが変わるのだと感じます。

 本当に応用編で、そこで、その時の精一杯で自分達の頭と心を使って根拠を持って考え、最善を尽くす必要があるのだと思いました。そこで見つかる新しい発見や気付き。
 味噌作りという同じ作業ではあるけれど、中身はまるで違うものになります。

 追求する気持ち、より良い糀を作りたい。良い味噌づくりにし、美味しい味噌を作りたいという気持ちで取り組み、同じ気持ちで向かう仲間がいるということも、とても嬉しく、嬉しさや楽しさが倍増するように感じました。

 私は、そんななのはなの味噌づくりが、本当に楽しくて、大好きです。
 美味しいお味噌になあれ。