「理想を見る」 えつこ

3月1日

 

 

 最近、摘蕾をしていて、回数を重ねるごとに、楽しさが増していっています。あんなちゃんが、「作業ははやくやるほど楽しくなる」と、話してくれました。

 あんなちゃんのような美しい早送り再生のような手つきに私は足下にもおよばないけれども、それでも、あんなちゃんの職人技のような手つきに一歩でも近づきたくて、あんなちやんの手つきをイメージしながらやると、回数を重ねるごとに上達していっているのを感じて、楽しいです。

 作業のときの空気も、摘蕾をやりはじめたころよりもずっと、スピード感が増していて、作業が効率良くなると空気も良くなるのを感じています。全神経を桃に集中させて、作業をしていると、風が冷たい日も、指先がポカポカとあたたまってきます。桃との心の距離が近づいているのを感じて嬉しくなります。

 「人を見るのではなくて理想を見る」というお父さんのお話を聞いてから、作業や当番のときの、頭の中の雑音がなくなってきているのを感じます。理想を見ていると、自分の未熟さを作業で感じることはあっても、そのことで自己否定をしている暇はなくて、じゃあもっと理想に近づこうと、改善することに楽しさを感じます。

 今日の作業の中では、脚立の使い方が下手だな、と感じます。少し高いところが苦手なことも原因ですが、着地する場所を決めるようにすると、高い所に対する怖さは、なくなってきました。みんなを見ていると、適切な作業しやすい場所に脚立を置くのが、私は下手だと感じます。お父さん、あんなちゃんの脚立を置く位置などを見て勉強し、一発で適切な場所に置いて、スマートに移動するのが格好良いと思い、そうできるようになりたいです。

 今日は、夕の子畑の桃の木を全部終えて、石生の桃も進めることができました。桃の品種や、年数によって、蕾の形や、樹の醸し出す雰囲気が違うのがおもしろいです。石生の桃に、どっしりとした貫禄を感じました。

 また、やすよちゃんと一緒におとちゃんも来てくれて、最初はやすよちゃんがおとちゃんをおんぶしながら摘蕾をしていたのですが、途中、おとちゃんはコンテナの中に入って、私たちが作業しているところを見てくれていました。しばらくして、おとちゃんが、ひとりで立っていました。昼食の席のコメントで、おとちゃんが立つようになったことを、のぞみちゃんが話してくれていたのですが、本当におとちゃんが立っているのを、見られたことが嬉しかったです。ふとしたときにおとちゃんの姿を見ると、心が柔らかくなって、おとちゃんと一緒に畑にいられたことも嬉しかったです。

 作業の終わりに、あんなちゃんが、美しい笑顔で「ありがとうございました」と言ってくれるのが、いつもとても嬉しくて、あんなちゃんの笑顔を見ると、いくらでも頑張れてしまうくらいに、自己肯定感が上がります。