【2月号⑩】「ザーサイと歩んだ道のり」 ちか

 「九月五日、種が古吉野に到着
 九月二五日 種まき百二十粒 育苗開始!」
 ここから始まって、今では真っ黒になった『貴州搾菜』の栽培ノート。いよいよ二〇二四年一月九日に、私にとっても、なのはなファミリーにとっても初めてのザーサイの収穫を迎えました。
 私たちが育てた『貴州搾菜』という品種は、比較的大型の品種で、株が横に広がりやすいという特徴があります。ザーサイ特有のコブがもこもこしていて、成長した株は何か不思議なモンスター(?)のような、他の野菜にはない独特の雰囲気があります。
 野菜カタログに載っていた写真を見て、これは面白そう! と思い、早速、夏の終わり頃にお父さんへ提案しに行きました。種をまいてからワクワク、どんな風になるんだろう、と楽しみでした。
 ザーサイは、人間で例えると子供、学生、大人の三段階がある野菜だった、と思います。

 

  
■見守った成長

 九月に種まきをしてすぐの、子供、つまり苗のころは、みんなからキャベツに似ているとか、ダイコンみたいだね、と言われて、他のアブラナ科の野菜とあまり変わりのない、本当にこれがあのザーサイになるの? という可愛らしい姿でした。
 定植をして、追肥をした後の十一月頃が二段階目です。ここでは、葉がもりもり育ってきて葉野菜状態になります。姿かたちの雰囲気からすると、ああ育ってきた! と思いますが、まだまだ本来の姿には遠いです。
 秋が過ぎ、寒い冬の季節が来てから、ザーサイの本番です。葉の巨大化が止まったあたりから、株元の茎がゴツゴツ、モリモリと育ってきます。寒さに耐える強靭な筋肉を育てるかのように、霜のおりるような朝が続こうと、構わず立派に育っていきます。こうして立派な大人になります。
 そしていよいよ収穫です! 同じ野菜のチームのどれみちゃんや、台所のエース・まちちゃんが同行してくれて、一緒に保管方法を考えてくれました。ザーサイを収穫するときは、まず株をそのまま引っこ抜いて、下葉をめくるように落としていきます。最後に根を綺麗に落とすと、ザーサイの完成です! 一株目を穫ったとき、種袋に記載されている写真にそっくりで、成功したんだ……! と心が達成感でいっぱいになりました。昼食の席でお父さんに見ていただいたら、「まさか一年目で収穫できるとは」とびっくりされていて、嬉しかったです。
 台所さん&河上さんが快く引き受けてくださり、ついにザーサイの実食です。河上さんが作ってくださった「ザーサイの浅漬け」は、市販の濃い塩味で漬けられているザーサイとは違いました。薄い塩味で軽く漬けられたもので、特有のコリコリとした食感とともに、少しシャキシャキ感も味わえる食べ方です。これは、「栽培している人にしか食べられない味」ということでした。ラー油のピリ辛の味付けもすごくあっていて、ご飯がすすむ味わいでした。週末に来てくださったりゅうさんも、
「塩味のザーサイは中国で食べたことがあって、本場の味がする」
 と教えてくださいました。お母さんも、
「これ、本当に美味しいわぁ」
 と言ってくださったことが、記憶に残っていて、成功体験になったなあと思いました。

 

 

■力強かったザーサイ

 ザーサイは、私たちがウィンターコンサートで忙しい時も、いつでも自立して元気に育ってくれました。これといった病気もなく、本当にすくすくと、健康に育っていったと感じています。強い野菜だと思います。私もザーサイのような、まさに、「雨にも負けず風にも負けず、丈夫な身体を持ち欲はない」……人間になりたい! と思わせてもらいました。思わぬところで、ザーサイに勇気や、生物としてこうあるべきというヒントをもらった気がします。
 今回はザーサイにとって一年目、まだまだこれからです。栽培をしてみて感じたことや、次期に活かしたいこと、今作の気候など詳しく記録に残してマニュアル化をして、次回はもっとたくさん、食べられるようにしたいです。
 そして何より、最後まで一緒に見てくれた旬花愁冬(しゅんかしゅうとう)チームのみんな、本当にありがとうごさいます! 感謝です。