私たちの大好きな、なのはなのお母さんのお誕生日は、一月二十三日。その日に先駆けた、一月二十一日の日曜日。お誕生日会は家族みんなで、お母さんからリクエストのあった、謎解きゲームを中心に遊んで、お祝いしました。
オープニングは、なのはなのバンド演奏で、お母さんが『倶に(ともに)』を歌ってくれました。
中島みゆきさんの『倶に』は、紅白歌合戦でお母さんが初めて歌ってくれた曲でした。初めて聴いたときから、心に強く訴えかけてきて、涙が出て、深く印象に残っていた曲。たけちゃんも、この曲が大好きで、日ごろから「とーもにー、走りだーそうー」と、嬉し気に歌っている曲です。
その『倶に』を、また聴けることが、本当に嬉しかったです。
■『倶に』
今回はお母さんが、みんなで歌えるように、と歌詞を書いて貼ってくれました。
歌を聴いただけでは聞き取り切れていなかったところも、お母さんが書いてくれた歌詞を見て、どういいう曲なのか、より深く感じることができました。
お母さんが、全力で歌う姿。みんなに語り掛け、お母さんの生きることへ向かう意志が伝わってくるような、太く強いお母さんの歌。
「君は走っている。絶対走っている。確かめるすべもない、遠い遠い距離の中で」
「倶に走り出そう。倶に走り継ごう。生きる互いの気配が、ただ一つだけの灯」
『倶に』の歌詞は、最初から最後まで、お母さんそのものでした。
確かめるすべもない、遠くにいる仲間を信じて、自身に「よく生きよう」と誓いを立てるように、日々を生きている、お母さん。誰よりも若く、私たちの先頭を走り続けて、背中で語ってくれるお母さん。
私たちに、一から育てなおすように、生きる上で大切なことを教えてくれるお母さん。きらきらした瞳で、なのはなファミリーの未来の夢を語ってくれる、お母さん。 この曲は、お母さんそのもの。お母さんは、私たちにとって、何よりも大きな希望であることを、演奏を聴いて、強く感じました。
私も、お母さんのように強くなりたい。お母さんの仲間として、同じ方角へ向かって、走り続けたい。そう、思いました。
演奏後には、お仕事組さんと、あゆみちゃんたち岸本家から、お花が贈られました。小さいたけちゃん、ちーちが、それぞれに小さな花束を持って、大好きなお母さんへ渡す姿と、受け取るお母さんの嬉しそうな笑顔を見て、心が温かくなりました。
■お母さんクイズ
次は、もっとお母さんを知りたい! ということで、全十二問の『お母さんクイズ』が出題されました。
クイズの内容は、「お母さんの出身地と誕生日」という基本的なことから、「お母さんの好きな場所」「お母さんの好きな、お父さんの手料理」「お母さんが一日やってみたい職業」など、お母さんのことをより深く知ることができる、問題ばかりでした。
一問ずつ出題された後、各チームで話し合って、メガホンを耳にあてた実行委員の元へ、リーダーさんが解答を伝えに行きます。全チームが伝えられたところで、実行委員から順に解答を発表し、その後、お母さんからの答えを聞かせてもらいました。
問題の形式は、選択形式ではなく、チームでゼロから考える、という難しいものでしたが、みんな、お母さんのことはもう、かなりよく知っていて、正解率は高かったです。
■お母さんの好きな場所
私が印象的だったことは、お母さんが生まれ変わるなら、「もう一度人間」ということ。その答えに勇気づけられる思いがしました。
チームからは、「もう一度お父さんと一緒になる」など解答が寄せられていました。
また、お母さんが好きな場所、という問題の答えは「デスバレー」。
お母さんが二十歳の頃、アメリカのデスバレーに行って、それからはお父さん、あゆちゃん、盛男おじいちゃんたちとも行き、人生で三回、訪れた場所ということでした。
私は、デスバレーを知らなかったけれど、塩でできた真っ白な渓谷が、はるかに続いていて、涙が出るような光景だ、と聞いて、お母さんがその場所にいることが思い浮かぶようだ、と思いました。
デスバレーの景色は、お母さんが生まれ育った、和歌山の紀ノ川の景色と、重なるそうです。
このデスバレーは、もしもどこでもドアがあったら、お母さんがなのはなのみんなを連れていきたい場所、にも挙げられていていました。いつか、本当に行きたいなと、心の中に新しい夢が、ぽっと灯るようでした。
■二十七題の謎
さあ次は、いよいよ謎解きゲームです。古吉野の校舎中に隠された、二十七題の『謎』を解き明かして、ゴールするまでのタイムを競い合います。
私は今回、謎解きゲームの実行委員として参加しました。
実はこの準備が始まったのは、お誕生日会の前日。一から謎を考えるところからの、スタートでした。
あゆちゃんを中心に集まった七人で、分担をして謎を考えました。卒業生のやすよちゃんも実行委員に入ってくれて、私はやすよちゃんと一緒に、校舎を回って、謎の答えになりそうなものから、探していきました。
謎の答えを探す目で見ると、古吉野なのはなの校舎はお宝ばかりでした。
音楽室には数々の楽器が揃っていて、図工室にはコンサートで使った大道具がずらり。いたるところに絵画や写真が額で飾られていて、図書室前の廊下には、小さい子たちの機関車や、ベンツ(!?)まで停車しています。
「何を謎の答えにしようか」
みんなには内緒でひっそりと、やすよちゃんと少し悪だくみをするような気分で、答えになりそうなものを見つけていくことが、楽しかったです。
答えになりそうなものの候補が決まると、そのキーワードを元に、頭を捻りながら謎を考えていきました。
謎の作り方に決まりはなくて、言葉を言い換える問題だったり、絵から連想して答えを導く問題だったり、クロスワードのような形だったり、なんでも大丈夫。
なのはなのみんなが知っている答えに行き着くように、こうしたら面白いんじゃないか、とあれこれ考えて頭を捻りながら、謎を作っていくことが、とても面白かったです。
■秘密の会議室では……
謎がいくつか考えられてきたら、実行委員で集まって、お互いにできた謎を解きあって、精査していきました。
これは、本当に面白い時間でした。問題の中には、「なるほど、すごい!」と感心するような凝ったもの、イラストがかわいらしいもの、それから、まえちゃんが逆立ちした写真がバン、と貼られているもの(答えは絵馬。)のように、思わず笑いが込み上げてくるようなもの……、実行委員の趣向が凝らされたものばかりでした。
中には、「ちょっとそれ、いいの!?」と突っ込みたくなるような問題もあって、こっそり内緒で進めているはずが、気づけば秘密の会議室となっている三年生教室から、こらえきれない笑い声とツッコミがもれ出てしまっていたはずです。
当日の朝、ある謎のために、実行委員で紙飛行機をたくさん折りました。
遊んでいる場合ではないと感じつつ、ちょこっと、なるちゃんが折り方を調べてくれて、槍飛行機、へそ飛行機、伝書鳩、トンビなど、いろいろな折り方をしました。
「かっこよくできたよ!」「この形はよく飛ぶ」など喜びながら、大小、色も多様に、たくさんの紙飛行機を折っていくことが、とても楽しかったです。
折られた紙飛行機には、ある文字を書き込んでいきます。
この問題は、「飛行機を飛ばせ!」
文字の中から、ひ、こ、う、きを飛ばして読むと……、ある場所が見つけられるはずですよ。
■ヒントマンチャレンジ
当日の準備はちょっぴりドタバタでした。一番大切な、チームごとに謎を順番に並べて番号を書く作業をして、体育館にヒントマンチャレンジのブースを作り、みんなより早く昼食を食べて、みんなが食堂で昼食を食べている時間に、校舎中に謎を隠していきます。
謎を隠すときは、そのチームが辿る道筋を二十七か所、正確に辿っていきます。間違いがないように順番通りに行くため、体育館、音楽室、また体育館、と、校舎の端から端を、行ったり来たりすることも。
私はせいこちゃんとペアになって、決して間違いがないように、慎重に確認しながら、二チーム分の謎を、隠していきました。
全て隠し終わるころには、マラソンを走り終えたかのような、達成感と疲労感が……。けれど、本番はこれからです。
私たち実行委員は、ゲーム開始後、謎がどうしても解けなかったときにヒントを出すヒントマンとして、体育館でいろいろなヒントマンチャレンジを用意して待ちました。
ヒントマンチャレンジは、ピンポンをカップに入れるゲーム、県庁所在地と首都当てクイズ、ピアノで音当てクイズ、恐竜つり、お尻歩き競争の五種類。
私は、なるちゃんと、恐竜つりとお尻歩きのブースを担当しました。
次々と、ヒントを求めてやってくるみんな。
お尻歩きでは、ヒントマンが相手になって、一対一で競い、挑戦者がヒントマンに勝つまで、続けます。
みんなには、速くヒントを伝えたいけれど、ここは真剣勝負。全力でお尻歩きをしました。その中で、自分がお尻歩きが得意だということに、気づきました。
一人目に勝つと、二人目の挑戦者と。二人目に勝つと、三人目。連続でお尻歩きをしていると、さすがに前へ進めなくなりました。
人生で、こんなにお尻歩きをしたのは、初めてでした。どんなに全力でやっても、進んでいるのは数メートルで、シュールな光景。みんなと笑いながら競えたことが、楽しかったです。(その後二日間は、筋肉痛に苛まれました……)
ヒントマンチャレンジに成功して、ヒントを伝えると、誰かがはっとひらめき、「○○だ!」と正解を言うや否や、チーム全員がその場所へ向かって走り出していく。
勢いよく体育館を去っていく、みんなの後ろ姿を見送れることが、とても嬉しかったです。
■謎を解いて
今回は謎が二十七題とボリューム満点だったこともあって、一番速かったチームもスタートからゴールまで一時間以上かかり、かなりの時間、じっくりと謎解きゲームが続きました。
一着はオレンジ色ののんちゃんチーム。断トツの早さでのゴールでした。
その後も、最後の謎に苦戦しながらも、全チームが二十七の謎を解いて、ゴールに辿り着きました。ゴールをしたみんなが口々に、「楽しかった!」言っていたことが、嬉しかったです。
お母さんも、「あー、楽しかった。謎は全然解けなくても、ただみんなと走っているだけで楽しい」と言ってくれました。お母さんの晴れやかな笑顔を見て、心から楽しんでくれたことを感じて、本当によかったと思いました。
たけちゃんや、みんなと一緒に走り回って、全力で謎解きゲームを楽しんでいるお母さんの若さを、ひしひしと感じました。
お母さんの歌を聴くと、笑顔を見ると、たけちゃんたちと走っている姿を見ると、前向きな力が湧いてくる。
お母さんのお誕生日だけれど、お母さんは祝われるだけの受け身の立場ではなく、私たちの方が、お母さんから元気をもらったと思いました。
大好きなお母さんと家族みんなで、『倶に』から始まり、充実したお母さんのお誕生日会を過ごせたことが、本当に嬉しかったです。