10月8日のなのはな
『第42回 勝央町金時祭』が開催されました。
久しぶりの開催となった今日、心配されていた空模様はお祭りに味方し秋らしい涼を届けてくれて、会場の勝央文化ホール前広場周辺では、式典やステージイベント、屋台村が開かれ、たくさんの方々が集う華やかなお祭りとなりました。
私たちは、3つのステージで役目を果たせるよう準備をして、この日に臨みました。勝央音頭保存会による「ふるさと総踊り」、なのはなファミリーステージ、そして勝央金時太鼓の演奏です。
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10時20分より、勝央音頭保存会の一員として「ふるさと総踊り」に出演しました。
午前9時前に会場に到着すると、お祭りの会場には既に多くの方々が集まっていて、その賑わいに気持ちが引き締まりました。
金時祭では、保存会のお揃いの浴衣と赤い裾除けを身にまとって踊ります。控え室で着付けていく時間の中で気持ちがつくられていきました。
白と紺の浴衣に、赤い裾除けと赤い襷が鮮やかで、同じ赤の口紅を差した一人ひとりの姿がきれいだと思いました。誰かに着付けを直してもらったり、襷を結んでもらったりする度に、隣にいる仲間の存在が嬉しく、心強く感じました。
そして保存会の方々が、私たちが綺麗に浴衣を着ることができるよう見守り、手直しをしてくださいました。
準備を終えて控え室から出ると、外の陽の光の中で見る浴衣は、より鮮やかに、より華やかに感じて、その美しさに見合った踊りがしたいと思いました。
1曲目は『勝央音頭』、そして2曲目は『勝央ヤットサ節』を踊りました。
ステージ前の広場に、円をつくりながら踊っていきます。観てくださっている方々のすぐ側を通りながらみんなと円を描いていくと、会場の空気が少しずつ輪踊りの空気になっていくことを感じました。手を叩きながら見てくださっている方、振りに合わせて手を動かしながら見てくださっている方たちが目に入ると、喜んでくださっていることを感じ、目が合って笑顔を交わせることが嬉しかったです。
「みんなで踊ろう、『きんとくんサンバ』」では、幅広い世代の方々と同じ曲を踊ることができました。
最後の曲『四つ拍子』は、歌と太鼓の生演奏で踊りました。
秋らしい外の空気に太鼓の音色がとても似合っているなと感じました。観客の方や、なのはなの応援組のメンバーとも一緒に踊ることができて、たくさんの人とつくる四つ拍子が嬉しかったです。
パリッとしたお揃いの浴衣を着ると、気持ちが引き締まります。
地域の方たちに喜んでいただいていることを感じ、その中でみんなと踊ることができて、嬉しかったです。
(ゆず)
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お昼からは、なのはなファミリーの演奏が始まります。
ふるさと総踊りを終えて、浴衣からなのはなの演奏の衣装へ着替えるとともに、気持ちも切り替えました。
広場には客席が並び、舞台上にはバンドの楽器がセットされました。バンドの音出しとともに、会場の空気感が変わっていきました。
本番前、あゆちゃんが待機している私たちに、言葉をかけてくれました。
「みんな、自分の中にあるものを、全部出しきってね。全部出して、空っぽになったら、新しいものが入って来て、成長できるから」
あゆちゃんの言葉を聞いて、この本番の1回1回が、私たちが人間として成長するための手がかりであることを感じました。本番を経るたびに、今の自分から成長して、新しい自分になっていくために、全てを出し切らなければなりません。
お客さんを前に、恐れず、良いパフォーマンスをするため立ち向かっていくこと。未熟でもいいから、今の自分の最大限で、演じてみせる。そうして自分の幅を広げていくことができるのだと、感じました。
1曲目の『グレイテスト・ショー』。序盤の、ポーズで静止するとき、全員が彫刻のように同じ形で止まって、時間が経つほどに、私たちの気迫がクレッシェンドしていくことをイメージしました。私は一人じゃない。みんなの中で、気持ちが大きく、強くなっていくような感覚がしました。
今回の金時祭は、お客さんがとても多かったです。客席は満席で、ステージの横からも後ろからも、立って見られるお客さんもいらっしゃいました。
踊っているとき、会場全体のお客さんが、ステージに見入ってくださっていることを感じました。今までの、お祭りのがやがやとした空気感がシンと鎮まっていました。
そんな中で、私も今まで以上に強い心持ちを持って、ダンスも潔く踊ることができました。脇へ一度はけたとき、ステージで踊っているみんなの表情を見ても、いつも以上にみんなの表情や動きの空気感が、揃っていることを感じました。みんなのオーラが、ステージを特別な場にしているようでした。
曲が終わった後のお客さんからの拍手で、気持ちが確信になっていきました。私たちの演奏が、お客さんの心を掴んだことを感じました。
3曲目の『チープスリルズ・シェイプオブユー』では、最初はコミカルな飛び跳ねるような動き、後には大人っぽい粘りのある動きが出てきます。
前の2曲の積み重ねで、お客さんが私たちを肯定的に見てくれていることを感じていたから、怖いものを捨てて、思い切り自由に踊って、変顔も、することができました。
5曲目の『オテア・ルミア』は、あゆちゃんから、アマゾンのおさるさんになったように出ていくことを教えてもらっています。
おさるさんのように軽快で、遊び心があって、原始的なエネルギーに満ちていて。そんなイメージで、ゆりかちゃんたちの後ろを支えるように、プイリやイプをならして踊りました。最後は、打楽器の「ダン、ダダン、ダン!」という音と共に、「どうだ!」という気持ちで決めポーズをします。その思いの分、お客さんから大きな拍手があり、嬉しかったです。
最後の曲の前に、あゆちゃんがMCでウィンターコンサートの紹介をしてくれました。
今年はクリスマス・イヴに、目の前の勝央文化ホールにて、ウィンターコンサートを行います。きっと、今日のステージを観てくださった方々はコンサートに来たい、と思ってくださるのではないかと感じました。
最後の『ビューティフル・ピープル』では、お客さんが全面的に私たちを肯定してくれている空気を感じて、伸び伸びと踊ることができて、私たちの思いを伝える演奏ができた、と感じました。
バイバイをしながらはけていくとき、客席を見ると、大勢の方が笑顔を向けてくださっていて、ああ、きっと私たちのファンになってくださったのではないか、と感じられました。私たちを好きになってもらうこと、ファンになってもらうことが、未来のなのはなファミリー、ひいては、なのはなファミリーを必要とする、まだ見ぬ出会うべき人に繋がっていくと、リハーサルの際にあゆちゃんから教わりました。それが、今回の金時祭では大成功だったな、と思いました。
演奏を終えて、夕食の席で、お母さんが、
「今日のみんなの演奏は、本当によかった。どの曲も自然と、鳥肌が立つような感覚があって、笑顔にも気合が入っていて、よかった」
と、話してくれました。
また、ちさとちゃんが、演奏後にお客さんから、「感激をした」という感想をいくつも聞かせてもらった、というお話もしてくれました。
本番中に感じていたことは本当だったんだな、と思えて、とても嬉しかったです。
私は、イベントでは悔しい思いをすることもあります。大勢の人の目を前に、緊張して、足元に力が入らなかったり、笑顔を作れなかったり。去年の秋に出演したイベントでは、そんな風だったことを覚えています。
けれど今日は、出せるものは全て出し切った、という感覚がしています。演じて見せる立場として、しっかりステージに立てたことを感じました。
私にとって、それは全然当たり前のことではありませんでした。人前で堂々と、伝えるべきものを持って演じられるということは、なのはなで、今に至らなければ、実現することではありませんでした。
でも、そうして演じられるようになり始めて、ずっとこうでありたかったのだと感じました。小さいころから、この感覚を味わいたかった。それが今、叶っているということが、本当に恵まれているなと思ったし、なのはなで演じさせてもらえることが、本当にありがたいことだと思いました。
それでもまだまだ、自由に演じ切れているとは言えません。それは、1回1回の本番で、今までの自分を打ち壊しながら、少しずつ自由になっていくことができるのだと思いました。
お客さんに想いが届いた、と感じられたこと。私たちの演奏が、大きな拍手と共に大きく肯定されたこと。
金時祭での、なのはなの演奏が大成功したことが、私たちの自信になりました。とても嬉しかったです。
(りんね)
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なのはなファミリーの演奏が終わり、私は、金時太鼓を学んでいる8人のメンバーと一緒に、すぐさま衣装の早着替えへ。次は、勝央金時太鼓保存会のステージに切り替わります。金時太鼓保存会の一員として、なのはなからは9人のメンバーで『那岐おろし』『若葉』の2曲を演奏しました。
赤い法被を着て、黒の帯を締めると、キュッと気持ちが引き締まる思いがしました。衣装と共に、気持ちも着替えて太鼓打ちの気迫、空気を身にまといます。パラパラと小雨が降りだしているけれど、そんな少し暗い雲も気持ちで吹き飛ばしてしまうぐらいの、見ごたえのあるステージを作りたい、と思いました。
トップバッターは、勝央金時太鼓保存会の方と、岡山県和太鼓連盟の有志の方が共演して演奏して下さりました。ステージから聞こえてくる芯のある、力強い音がお腹の底まで響き渡ってきました。太鼓の演奏が始まると、客席に座ったお客さんがステージ上で繰り広げられるパフォーマンスに一点集中している空気を感じました。私達も、この空気を繋ぎたい、と思いました。
中学生のステージが終わると、次はいよいよ私達の出番です。ステージに立った時に、客席にたくさんの方の姿があり、これから始まる演奏を今か今かと興味を持って待ってくださっていることを感じました。
1曲目は、『那岐おろし』、大太鼓の迫りくる地響きのような打ち出しから始まります。全神経を大太鼓の一音一音に集中させます。1人、ソロで叩く大太鼓のふみちゃんに、宮太鼓も、締め太鼓も、全員で気持ちを送ります。1人の音を、ステージ上にいる全員で拡大させます。
太鼓には、「ドレミ」のような音階はありません。けれど、リズムでハーモニーを奏でることは出来るんだと思いました。大太鼓、宮太鼓、締め太鼓それぞれの受け持つ役割が違って、リズムも違うけれど、それが全てぴったりと当てはまって一つになった時に、その太鼓のリズムの面白さだったり、鳥肌が立つような感動になるのだと思いました。
今回は初めて屋外でする演奏でもあって、毎週の練習の時と、自分の叩く太鼓の音も、隣の人が叩く音も、全然違いました。その、初めての環境の中でのステージに、緊張もしたけれど、音がそのままお客さんに吸い込まれていくような感覚が、とても嬉しかったです。
一人ひとりの音が微妙にずれていたら、音が散らばってしまうけれど、芯の音を出すタイミングがぴったりと揃う時、何倍にも大きく、突き抜けるような音を出すことが出来ました。太鼓メンバーのみんなと心を研ぎ澄ませて、仲間を信じて阿吽の呼吸で叩きました。
2曲目の『若葉』という曲は、宮太鼓から始まり、大太鼓、締め太鼓……とだんだんと人数が増えていきます。それが、まるで若葉がどんどん色の濃さも増して、茂っていくようなシーンが思い浮かぶような曲です。
憂いがなくて、どこまでも太陽の光を浴びて、高く、大きく成長していく植物の若葉のように、この曲も、そんな若葉が芽吹いて、茂って青々と輝くようなシーンが目に見える、バイタリティ溢れる曲にしたいと、太鼓メンバーで話しました。
曲の中で、3つのパートがコロコロと主役を入れ替わり、時には引き立てて、時には前に出て叩く構成や、締め太鼓と宮太鼓が掛け合いをするような場面は、若葉がクルクルと空中を舞って踊っているような楽しい気持ちになります。『若葉』らしいリズムの面白さがあって、ステージも客席も一体となって、共有することができました。
2曲が終わって、礼をした時、客席から大きな拍手が沸き上がり、達成感でいっぱいになりました。私達の太鼓の演奏を真剣に聞いてくださって、伝わる演奏が出来たことが、とても嬉しかったです。
回数を重ねるごとに、使える身体の可動域や、出せる一番大きな音、小さな音が広がっていくことを感じます。聞いてくださる方がたくさんいて、その前で演奏することで、私達も大きな音を出せる強い気持ち、覚悟が作られていくことを感じます。今回のステージも、その一つの段階として、太鼓メンバー全員でステップアップできたことを感じました。
(りな)