9月8日(金)「稲刈り始まりの日、石生山裾東田んぼへ! & 桃の夏への気持ち」

9月8日のなのはな

 なのはなファミリーの校舎から、または畑から一望できる、石生田んぼの景色。田植えが始まった5月には一面緑色の海だったのが、6月、7月と時は過ぎ、穂が出始めて、だんだんと色が移り変わり、8月末辺りから黄金色の景色へと変わりました。道を走っていても、たわわに実った穂が垂れ下がるように首をかしげていて、その上空を赤とんぼが飛び交っている景色を見ていると、秋になったのだなと感じました。

 今月に入ってから、あちこちでコンバインを見かけるようになり、地域の方々が稲刈りを始められている姿を見ました。つい昨日まで黄金色だったお隣の田んぼが、翌日見ると、穂が刈り取られて、真っ新になっていて、ほんのりと稲を刈ったばかりに香る、甘い良いにおいが漂っていました。石生田んぼもオセロが白黒と変わるように、少しずつ稲刈りされた田んぼが増えていき、地域の方々が稲刈りされている姿を見かけると、わたしたちも早く稲刈りしたいなという気分になっていました。

 

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「なのはなも、稲刈りがもうそろそろだよ」。田んぼ担当のあゆちゃんやまえちゃんから話題が上がり始めたころ、思いがけず、「今日、みんなで手刈りをしたいと思います!」と驚きのニュースが発表されました。

 モチ米を育てている、山裾東・西田んぼ。水はけが悪く、落水してからも地盤がぬかるんでいて、コンバインが入るには厳しい条件になってしまっていました。また、来週から雨予報が出ています。今の内にコンバインが入れない部分を、みんなで手刈りしようということになり、家族総出の手刈り本番! ではありませんが、少し予行練習も兼ねて、今季1枚目となる、稲刈りが行われました。

 今日活躍してくれるのは、なのはなにある5台のコンバインのうち、盛男おじいちゃんからいただいた大切なコンバインです。先日、さくらちゃんたちがメンテナンスを行って、きれいに掃除をしてくれていたおかげで、1年ぶりの出動でしたが、勢いよくエンジンがかかりました。
 この日、コンバインを操作してくれるのは、あゆちゃんです。「このコンバイン、あゆより2歳上なんだよ」と教えてくれたあゆちゃん。あゆちゃんが盛男おじいちゃんからいただいたコンバインをとても愛おしく、大事にしていることが表情や言葉から伝わってきて、記念すべき1枚目が盛男おじいちゃんのコンバインで嬉しいなと思いました。

 

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 田んぼに着いて、まず、コンバインが入れるスペースを取るために2メートル四方ほど手刈りしました。真新しい稲刈り鎌は刃がよく研がれてあり、とても刈りやすそうです。一束掴んで、根元に刃を当て、弧を描くように力を入れて引くと、ザグッと気持ちよいの音を響かせて、稲束が刈れました。(うわぁ~、1年ぶりの快感だ!)といきなり、気持ちが上がりました。そのまま続けて、ザグザグと刈っていき、あまりの気持ちよさに手が止まらないほどで、あゆちゃんに、「そのくらいでいいよ」と言われてしまいました。刈り取られた稲の口は空洞になっていて、ここから水を吸い上げていたのだなと思いました。

 コンバインが入れるスペースが確保できたら、いよいよ出動です! あゆちゃんが運転席に乗り、コンバインの爪を下ろして、刃も回り出しました。少し緊張した面持ちのあゆちゃんでしたが、動き出すと、キリッと眉が上がって真剣な表情になり、わたしもあゆちゃんが気持ちよく漕げるように、良い手元として動こうとやる気が高まりました。

 動き出したコンバインはまるで生き物のように稲穂を吸い込んでいき、先端の籾だけが刈り取られ、お尻からは残った稲藁が出てきます。あゆちゃんがラインに沿って一列をきれいに刈っていき、わたしはそのあとを追って、稲藁を落としていきました。

 その頃、手刈り部隊のみんなが田んぼに集結しました。コンバインと同時並行で手刈りもスタートです。大人数だからこそできる、なのはな自慢の二刀流の稲刈り。足元の悪い場所にみんなが縦横一列に並んで、これもまたものすごい勢いで刈っていってくれました。見る見るうちに地面が露わになり、畦にはみんなが刈った稲束が並べられていきます。新品の鎌で刈る稲刈りがみんなもとても楽しいようで、コンバインの音で声は聞こえなくても、表情や動きからみんなのうきうきした気持ちが伝わってくるようでした。

 

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 一通り、ぬかるみ範囲の手刈りが一段落すると、少しおやつ休憩を挟んでから、脱穀に入りました。脱穀は稲刈り作業のなかでも、わたしも1番に好きな工程です。コンバインに向かってみんなで列をつくり、稲穂の束をバケツリレーで運搬していくのですが、ハイスピードで、「はいっ」「はいっ」と稲を回していくのが、みんなとの連帯感を強く感じて、(この瞬間が1番好き!)と感じました。

 先頭のまえちゃんから、コンバインでスタンバイするあゆちゃんに向かって、長い列ができあがり、みんなが勢いよく稲束を回していき、脱穀が進みました。今回わたしはコンバインの手元につかせてもらい、出てくる稲藁を集めたり、ハーベスタの袋がいっぱいになったら取り替えるという役割を担当させてもらいました。

 

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 みんなから回ってくる稲束から刈り取られた籾が袋の中にどんどん溜まっていき、次から次へといっぱいになった袋を取り替えなければなりません。籾自体は本当に小さい小さい粒なのに、それがハーベスタの袋いっぱいに溜まると、一人で持ち上げるのもやっとなほど、ずっしりと重たくなるから驚きます。

 たくさんあった稲束もみんなでバケツリレーで繋ぐとあっという間で、夢中になっていると、手が空いたみんなが周りに集まってきてくれて、補助をしてくれたり、落ち穂を集めてくれる子がいました。そして最後の一束が流れてきて、脱穀が完了しました。

 

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 田んぼの3分の1ほどの範囲が手刈りで刈り取られ、脱穀され、稲穂がなくなった部分が広く見えました。あゆちゃんが、「みんな、ありがとうね」と嬉しそうに笑ってくれました。この日はまだ狭い範囲だったけれど、こうして大人数で手刈りができて、とても稲刈りが楽しいと感じました。鎌で刈るときのザグッという気持ちよい音や稲を吸い込んでいくコンバインのエンジン音、香ばしい稲の香り、たわわに実る稲穂、籾を少し剥くと見えてくるお米の白い光沢……。

 稲刈りを経験すると、日本人でよかったなと思います。そして稲刈りの楽しさの1番は、やっぱりみんなと協力してできることです。1人や2人では到底できないし、何時間もかかってしまう大仕事だけど、昔の人も家の垣根を越えて、地域一帯で稲刈りをしていて、それは日本人に利他の文化があったからだと、以前お父さんが話してくれました。わたしたちもお米を種籾の芽だしから播種、田植え、稲刈りまでをなのはなで一から経験させてもらって、1つひとつの工程をイベントにして、みんなで稲作を行ってきました。そのなかで大人数だからこそ活かせる強みがあり、大人数だからこそみんなで一致団結して、できた達成感、喜びをみんなと分かち合えて、それも利他心があってこそ感じられる気持ちなのだろうと思います。

 

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 手刈り部隊が去ったあと、わたしは引き続き田んぼに残り、あゆちゃんとまえちゃんと残りの範囲をコンバインで刈り取っていきました。あゆちゃんがコンバインの手元につくときのコツとして、乗っている人が漕ぎやすいように先手を打って動くことを教えてくれて、慣れない部分もありましたが、あゆちゃんがストレスなく漕ぎ続けられるようにという気持ちで補助をさせてもらいました。あゆちゃんの乗るコンバインが通ったあとは、次の条がきれいに真っ直ぐ並んでいて、刈り残しがなく、美しかったです。

 1周、2周、3周……とあゆちゃんが田んぼを回っていき、最後の条を刈り取って、山裾東田んぼのモチ米の稲刈りが終わりました。あゆちゃんとまえちゃんが、「なかなかの収量じゃないかな」と話していました。古吉野に向かって、石生田んぼの中を走っていると、今日1日だけでもまた景色が変わったように感じました。遠くで地域の方のコンバインが走っているところも見受けられました。

 古吉野に着くと、籾摺り機倉庫でさくらちゃんが待ってくれていて、すぐに刈り取ったばかりのモチ米を乾燥機へと入れることができました。今日から約1日をかけて、乾燥機へかけて、適切な水分値へと持っていきます。盛男おじいちゃんからいただいた乾燥機、籾摺り機で、籾摺りまでをなのはなでできることが、とてもありがたいことだと感じました。

 

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 今季初の稲刈りは事故も怪我もなく、最後までスムーズに行われ、さい先の良いスタートが切れました。いよいよ明日はお父さん号の大型コンバインも出動し、来週に向かって、なのはなも稲刈モードへ突入です。そして今度こそ本番の、家族総出の手刈りも待っています。わたしも日本人として、そしてなのはなファミリーの一人として、身近な食料であるお米がいただける形になるまでをしっかり見届けたいです。稲刈りが順調に進むように、みんなと気持ちも力も揃えて、今日からしばらく稲刈りを頑張っていきます。

(るりこ)

 

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 この日の桃の収穫は、さくらピーチ、白皇、白露をまわり、そのすべての木になっていた、桃を全収穫しました。
 これで、今年の桃の収穫は完了となりました。
 6月19日、早生品種の『はなよめ』の収穫が始まってから、3か月弱。品種は、早生から極晩生まで16品種ありました。長いようであっという間だった、シーズンでした。

 今日は私は収穫の手元をしていたのですが、各品種、各木に、それぞれに物語があるように感じました。
 桃は、毎年同じようにはいきません。天候も違えば、手入れの違いで、その手入れをする時期の違いで、ほんの少しの違いでも、出来が違ってきます。とても繊細で、本当に難しい。けれど、だからこそ、やり甲斐のある、作物だと感じます。
 桃は、手をかけたらかけただけ、受け取ってくれる。気持ちも受け取ってくれるように感じます。それが、桃を食べた人へと伝わって、たくさんの人に喜んでもらえたことが、とても嬉しかったです。

 

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 全収穫をした、さくらピーチは、全体的な評価として、良い出来になり、大玉できれいな良い実をたくさん収穫することができました。

 白露は、その見た目の白さと、果肉のみずみずしさ、収穫時期が二十四節気の『白露』の頃からその名がつけられたのですが、カレンダーを見ると、ちょうど今日が『白露』でした。
 白露は、私たちは今年初めて収穫した品種だったのですが、その美しさとおいしさに感動しました。

 白皇は、特に心配をし、そして、ハプニングも含めて、本当にいろんなことがあったので、こうして、最終的には、甘くてきれいな実がたくさん収穫することができ、本当に、本当に良かったなと喜びもその分大きかった品種のひとつです。
 変形果が多くなってしまったり、大雨や台風で落果が多く出てしまったこと。台風による強風で、ネットがはがれてしまったハプニング。
 その時の衝撃は、今でも鮮明に覚えています。
 けれど、どんなことがあっても、気持ちを切らさずに、桃メンバー全員で、気持ちをひとつに、桃のために必死に動き、走り続けた日々が、かけがえのない宝物だと感じています。

 

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 桃を守る一心で、汗を流し、一人ひとりが自分の役割を果たしていき、本当にチームプレーで、誰一人としてかけてはならない、大切な仲間で、みんなで、駆け抜けた、桃の夏でした。
 なのはなのみんなにたくさん助けてもらって、乗り越えられた桃のシーズンです。みんなにも感謝しています。

 桃を通して、気づかせてもらったこと。得られた大切な気持ち。成長させてもらったことがたくさんあり、本当にありがたいです。
 桃は生きています。もうすでに秋剪定は始まっていて、防除も予定しています。
 また、1年をかけて桃を育て、また来年、良い収穫に結び付けられるよう、そして私たちも成長していけるよう、精一杯力を尽くし、精進していきます。

(ひろこ)

 

 

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〈畑の肥料まき、畝立て作業も進みました〉