【7月号⑰】「『金太郎ばやし』 魅力あふれる演奏を目指して」 りな

 

 毎週水曜日、十二人のメンバーは、勝央文化ホールへ、勝央金時太鼓の練習に行っています。これまで、『風の舞』『わかば』『那岐おろし』という三曲を主に練習してきました。六月から、『金太郎ばやし』という曲の練習を、新しい編成でスタートしました。『金太郎ばやし』は、以前、勝央金時太鼓保存会の方々と、勝央金時太鼓保存会三十五周年記念コンサートで共演させてもらいました。お囃子のリズムが、とても特徴的な曲です。

 金太郎ばやしは、他の曲と違い、刻みが三連符の真ん中を休符にした、パッカパッカと馬が走っているような、軽快で、楽しいリズムになっています。私達は、宮太鼓で、金太郎ばやしのフレーズを練習していました。

 

 

 今回は、宮太鼓以外の太鼓も含めての演奏が出来るように練習を始めました。同じ曲とはいえ、コンサートに出ていない、新しいメンバーとも一緒に、新しいパートに挑戦するので、全く新しい曲のように思えました。

 金太郎ばやしは、七,八種類の太鼓、楽器を使って演奏します。たくさんのパートがあって、一つひとつの太鼓を思い浮かべるだけでもワクワクした気持ちになります。

■お囃子の世界へ

 最初は、締太鼓の、ポンポンとした、軽くて高温の音が響きます。その後、囃子太鼓、笛が入って、メロディラインが出来上がります。お囃子の同じフレーズが、少しずつ、クライマックスに向けて速くなっていきます。

 毎週、金時太鼓を教えて下さる、保存会会長の竹内さんが、金太郎ばやしの楽譜を用意してくださりました。私達は見慣れているけれど、初めて見る人はびっくり。なぜならば、楽譜がカタカナと漢字でできているからです。
 将棋盤のようなマス目の中に、カタカナ、漢字が当てはめられたように見える楽譜は、読み方が分かれば、ちゃんと解読できるのですが、最初に見ると、暗号のように思えます。

 マス目は、カウントと、右手で叩くのか、左手で叩くのかが表されています。カタカナは、太鼓の出す音があらわされています。「テケ」は、皮打ちの音、「ツ」は、少しバチ先を押し付けるようにして軽く出す音です。そのほか、「天」は、四分音符の皮打ちで、アクセントをつけます。ある時から読むことが出来るようになって、とても嬉しい気持ちになりました。
 はじめは、みんなと宮太鼓を使って、お囃子のフレーズを練習しました。リズムが転ばないように、ひたすらに刻みを揃えました。初めて金太郎ばやしを演奏するメンバーのみんなとも、宮太鼓のフレーズを覚えて、楽譜なしでも叩くことが出来るようになって、とても嬉しかったです。

 

■テンポをつくる鉦の音

 休憩時間、竹内さんが、『金太郎ばやし』のチャンチキのフレーズを教えて下さりました。チャンチキ、というのは、手で持つことのできる、鐘のような楽器です。銅色をした、お皿のような形をしていて、鹿の角でできたバチで叩いて音を鳴らします。普段の練習でも、竹内さんが、チャンチキを使って、テンポキープをしてくださります。名前のように、甲高い、澄んだ音がして、太鼓の音がどれだけ大きくなっていても、その中に同化して聞こえなくなることはなくて、いつでもキラキラ浮き出て、聞きやすい音です。
 金太郎ばやしの曲の中も、テンポを作っていく役割で、チャンチキは欠かせません。これまで叩いたことはなかったけれど、竹内さんに叩き方を教えていただけたことがとても嬉しかったです。

 

鹿の角でできたバチで叩く、チャンチキ

 

 まず持った時に、その重量感に驚きました。片手で持って、親指と小指で挟んで、叩く面が垂直になるように支えるのですが、二本の指で支えることが難しく、手の平をべたっと付けて、支える事しかできなくなりました。竹内さんや、保存会の方が、軽々と、チャンチキを叩いている姿をこれまで何度も見てきたけれど、それが本当に凄いなあと改めて感じました。

 チャンチキのフレーズは、「チ」と「チャン」の二種類の音で出来上がっています。「チ」の音は、チャンチキを支えている指以外の、三本の指を面に付けて響かないようにした状態で、チャンチキの内側面を叩きます。「チャン」は、三本の指をはなして、面を叩いたときに出る響いた音です。右手では三本指を忙しく付けたり離したりして、左手では、叩く場所を変えて動かします。

 

 

■魅力的な曲に

 最初は、両手違う動きをすることに慣れなかったけれど、だんだん叩けるようになってきて、少しずつではあるけれど、保存会の方が叩かれていた、聞きなれたチャンチキの音に近づいてきて、とても嬉しかったです。
 パートを分けての練習はまだしていないけれど、宮太鼓、締太鼓、チャンチキの三種類を、ローテーションで入れ替わりながら叩いた練習時間が、とても楽しかったです。違う音、違うフレーズが、一つにまとまって、三種類ではあるけれど、お祭りのように賑やかで、面白みがありました。
 また、テンポがだんだん速くなっていくので、終わりになるにつれて、盛り上がって、熱が入ります。これが、笛が入ったり、他の種類の太鼓が入ったら、どんなに楽しい曲になるのだろう、と夢が広がりました。

 

 

 叩き方も、直線的にバチ先を上げるのではなく、弧を描くようにして、柔らかく上げます。これまでみんなと練習してきた曲とは、また叩く時の気持ち、見せ方も違います。金太郎ばやしを叩くことで、表現できる幅も広がるような気がして嬉しいし、その曲が持つ楽し気な雰囲気、活気のある空気が、見てくれる人にもたくさん伝わるような、魅力的な曲に出来たらいいなあと思います。

 これから、それぞれのパートに分かれて、一人ひとりが小さなピースとなって、練習していけることがとても楽しみです。