【8月号①】「揃えて連ねる 踊りと気持ち ―― 勝間田天神祭 道中踊り ――」 るりこ

勝間田天神祭は、7月23日から25日にかけて開かれる勝央町の伝統的な お祭りです。24日、たくさんの人々と屋台で賑わう旧出雲街道勝間田宿の、 昔ながらの街並みのなかを、勝央音頭を踊りながら練り歩きました。

 

 勝央町勝間田天神祭が開催されました。このお祭りは旧出雲街道勝間田宿で開かれるお祭りです。石畳の道には夜店が所狭しと並び、その合間を御神輿が行き交い、若い方から年配の方まで大勢の方々が集います。
 わたしたちはその一環で勝央音頭保存会の一員として、道中流しに出演させていただきました。

 約一か月前から、踊りの練習に取り組んできました。天神祭では三曲を踊りました。『勝央音頭』と『サンサン勝央』と『ヤットサ節』です。それぞれに特徴があり、振り入れをしてからは全員で揃える練習を徹底して行いました。定期的にお父さんお母さんに見てもらい、アドバイスをもらいました。何度も踊っていても、お父さんが見てくださるごとに新たな気付きがいくつもあり、それを見つけて日に日に上達していく手応えを自分自身でも感じながら、練習を積み上げていく過程がとても楽しく感じました。

 なかでもお父さんから、目線で踊ることを度々教えてもらいました。基本的には目線は手の先を追いますが、ただ見ているだけでは情緒がなく、例えば顔の前でお月様のポーズをつくるとしたら、一度顔を下に下げてから、手の先を追って顔を上げていくと良いことなどを教えてもらいました。ダンスと共通するところも多いですが、踊りならではの情緒の持たせ方などをたくさん教えてもらい、ますます踊りの魅力を感じ、踊りが好きな気持ちが膨らみました。やればやるほど、良くしていける練習法は飽きることがなく、本番直前まで毎日のように踊り練習をしましたが、比例するように楽しさや好きな気持ちが増していきました。

 

■踊りへ向かう気持ち

 本番当日の出発前は、みんなと気持ちを揃えて向かうために、お母さんが気持ちづくりについて話をしてくれました。
 そのなかで印象に残ったことは、「勝央町になのはなファミリーがいてくれて良かったと思っていただけるように笑顔でね」と話してくださったことです。
 久しぶりのイベント出演でもあり、この道中流しも久しぶりのことです。勝央町のみなさんに、よりなのはなファミリーの存在を知っていただき、そしてわたしたちの力でお祭りを華やかにし、喜んでいただける機会になればと思うと、この一度きりの出演がこれからのなのはなファミリーに繋がっていく、とても大切な場であることを感じました。
 勝央町の伝統を繋げ、そして地域の方々との交流の輪がもっと繋がるような良いパフォーマンスにするために、まずは自分たちが気持ちをしっかりと持って、笑顔で堂々と楽しんでいきたいと思いました。
 夕方に古吉野を出発し、公民館の一室で、着付けを行いました。すでに保存会の方々が数名いらっしゃっていて、お久しぶりにお会いできました。みなさんが変わらずに、「なのはなさん」と声をかけてくださり、とても温かく迎え入れてくださったことに、とても嬉しく、安心した気持ちになりました。

 

■浴衣に背筋を正して

 道中流しでは勝央音頭保存会のお揃いの浴衣を着ます。白地に紺の模様が入っている、落ち着きのある大人らしい浴衣で、さらに帯は黒地に金の模様が入り、より締まります。浴衣の模様で右腰から左足にかけて斜めに切り込むように入った紺のラインがわたしは好きで、この浴衣を着させていただけることが嬉しいと思いました。

 この日に向けて、一人ひとりが浴衣をきれいに着付けられるようにと、河上さんが着付け教室を二度開いてくださいました。なのはなに来るまで、浴衣を一人で着付けられるようになるなんて思ってもみませんでしたが、夏になると、河上さんが着付け教室を開いてくださり、一から丁寧に教えてくださるので、わたしも一人で浴衣を着付けられるようになりました。
 今回は二から三人のチームをつくり、お互いにきれいに着付けられているかを見合い、裾の長さからお端折りの長さ、その他の処理まで、みんなで美しく着ました。

 わたしはよしえちゃんとももかちゃんとチームになりました。ももかちゃんは道中流しに出演するのが初めてで、まだ浴衣の着付けにも慣れていませんでしたが、よしえちゃんやどれみちゃんと共に、ももかちゃんの身体に浴衣がビシッと締まるように見合いました。人に浴衣を着付けることは、自分自身が着付ける以上に難しく感じましたが、一工程ずつ、きれいに処理し、最後はとてもきれいに着付けることができました。ももかちゃんも初めは緊張した面持ちでしたが、きれいに着付けることのできた浴衣を身にまとって、とても嬉しそうで、何度も、「ありがとう」と喜んでくれる姿がわたしもとても嬉しかったです。

 

 

 続くように、今度はわたしも着付けをしました。河上さんに教えていただいたことを思い出しながら、一工程ずつを追っていきました。背中側の処理はももかちゃんが見てくれて、お端折りの処理ではどれみちゃんが助けてくれました。二人の力加減や締め具合にとても安心感があり、これまでになく自分の身体によく合う、安定した着付けをすることができました。

 最後に赤い襷を結び、これもお揃いで赤いシュシュを頭のお団子に付けました。白地の浴衣に赤い襷やシュシュが付くと、より華やかになり、自分自身の背筋も正されて、気持ちが引き締まりました。周囲を見渡すと、保存会の方々もなのはなのみんなもお揃いの浴衣をまとっていて、今から勝央音頭保存会の一員として、みんなと浴衣も気持ちも揃えて踊るのだと、一層気持ちが作られました。
 最終確認として、三曲を一通り踊ってから、十九時前に現地へ向けて出発しました。

 

道中踊りは、勝間田神社のそばから出発します
卒業生やその子供たちも応援に駆け付けてくれました

■道中踊りの始まり

 石畳の入り口まで来ると、いくつもの提灯がぶら下がり、人も行き交っていて、お祭りムードを感じました。
 ふと見ると、遠くでお父さん、お母さんや応援組のみんなの姿がありました。手を振ると、笑顔で振り返してくれ、その後すぐ近くまで来てくれました。
 お母さんが再び、「笑顔でね」と声をかけてくれて、その言葉でスイッチが入りました。

 先頭車両を前に、河上さんと保存会の方が先頭に並び、続くようになのはなのみんなで二列をつくり、踊りました。わたしの前にはななほちゃんとももかちゃんがいて、赤いシュシュをつけた二人の凛とした後ろ姿がずっと前にありました。

 一曲目は『勝央音頭』です。踊りの曲のなかでもこの曲が一番好きという子が多く、わたしも『勝央音頭』が踊りやすくて好きです。浴衣の袖を押さえる振りや、両手を天に向かってハの字に広げ、続いて地に向かって止める、伸びと押さえが効いた振りなど、一番覚える振りが多いですが、どれも和を感じる落ち着きのある振りばかりで、踊っていてもとても和やかな気持ちになります。

 

 

 二曲目は『サンサン勝央』で、こちらは両手で円をつくる、お月様を表現するポーズから始まる曲です。この曲で魅力的なのが、腰から胸、そして耳の横へと三段階をかけて、手を叩きながらだんだんと上に向かっていく振りです。この振りは、「勝央町が繁栄しますように」という意味が込められた振りだと教えてもらい、意味を知るとより気持ちも込めやすいと感じました。

 三曲目は『勝央ヤットサ節』です。この曲は覚える振り自体はシンプルですが、一つひとつの動きが少し特徴的で揃えるのが難しかったです。両手でお団子を転がすように手をこねる動きが何度も出てくるのですが、イメージを掴んでできるようになるまで苦戦しました。
 ですが、どの曲も本番まで何度も何度も練習を重ねてきました。お父さんに教えてもらったポイントを一つひとつ押さえながら、これまでの積み重ねを信じて、堂々と笑顔で踊りました。

 屋台が立ち並ぶ中間地点辺りまでくると、人の数も増え、四方どこを見てもお祭りに集った人でいっぱいでした。手を伸ばす振りのときには、お客さんに手が当たってしまいそうなほど人と人の距離が近くて、横を見ると、すぐ近くにこちらを見てくださっている人の姿がありました。
 いろいろなイベントがありますが、これほどお客さんを近くに感じるイベントはないと思います。でもその分だけ、見てくださっている方の反応や声が直接耳に入ってきました。

 

■希望の姿

 多くの方々がわたしたちの踊りをじっと見入っていて、手拍子をしながら加勢してくださる方もいました。年配の方から若い方、そして小さな子どもまで、大勢の方々が温かく見てくださっているのを感じました。
 なかには、「とても揃っているね」「だって、なのはなさんだからね」と話されている声も耳に届き、そのときには、勝央町のみなさんになのはなファミリーの存在を知っていただく機会にできていることがわかり、嬉しく思いました。

 踊りは往路と復路に分かれていて、行き四十分の道のりののち勝間田駅前まで来て、一度小休憩を挟みました。行きまでの道のりがあっという間だったような気がしました。その頃には空が暗くなり、提灯に火が灯り始めました。薄闇に浮かび上がるようにぼんぼんと並ぶ提灯が幻想的で、とてもきれいな光景でした。
 復路は来た道を戻ります。時刻は二十時を回っていましたが、人の勢いは変わらずに屋台と屋台の間の小道はとても賑わっていて、その間をくぐり抜けるように進んでいきました。

 


 

 しばらくしたところで、路肩で弾むように手拍子をしてくださっている人の姿が横目に入り、ふと顔を向けると、そこには卒業生のまちこちゃん一家がいました。
 まちこちゃんが曲に合わせて手拍子をしながら応援してくれていて、目が合うと、にこっと微笑みかけてくれました。まちこちゃんの旦那さんはわたしたちに向かって団扇を仰いで風を送ってくれていて、まちこちゃんご家族のとても温かい応援に心がじんわりとするくらい嬉しかったです。

 またしばらく進むと、今度は元勝央町議会議長の岡本さんの姿がありました。とても温かい笑顔でにこにこと微笑みながら、「おぉ、なのはなじゃ」と見守ってくださっていました。
 他にも卒業生のそらちゃんとお子さんのこはるちゃんがカメラを構えて、写真を撮ってくれていたりと、大勢賑わうお客さんのなかにも、なのはなを応援してくださってる顔見知りの方々の姿を見かけると、とても心強く、その人たちにも向けて希望の姿を届けたいと思わせてもらいました。

 

元町議会議長の岡本さんが向けてくださった笑顔と応援 に、嬉しさと勇気でいっぱいになりました

■伝統を繋げて

 辺りも暗くなりかけ、『サンサン勝央』でお月様のポーズを取っていると、実際に自分たちの手で夜空にお月様を掲げているような気分になりました。ポーズはまん丸の満月をつくりますが、今宵の空には三日月がかかり、とても明るく煌々と光っていました。
 その月明かりと赤提灯に照らされたなかで踊る景色は、外から見たらどんなふうに映っているのかなと思いました。
 復路は往路より、より早く過ぎ去っていきました。あっという間に終着地点に辿り着き、曲もきれいに『ヤットサ節』が収まって終わりました。

 

 

 時間としては一時間半ほど踊っていたことになりますが、体感としては本当にわずかな時間だったように感じ、まだまだ踊っていたいなという名残惜しい気持ちで、旧出雲街道の石畳を後に、控え室へと戻りました。

 控え室へ着いてから、保存会のみなさんと記念撮影をしました。
 そして最後に保存会の山下さんが、
「次回は金時祭りです。また一緒に踊りましょうね」
 と話してくださいました。少し期間が空いた秋口に、保存会のみなさんとまた踊りが踊れるのだと思うと、とても嬉しく、それまでにもっと踊りに磨きをかけられたらいいなと思いました。

 勝間田天神祭の道中流しへの出演を通して、本番からその過程までのなかでも踊りを踊る楽しさをたくさん感じる機会となりました。勝央町に続く伝統を、勝央音頭保存会の一員として、みんなと繋げていけたことがとても嬉しかったです。
 そして、このお祭りを通して、勝央町の多くの方々になのはなファミリーの存在を知っていただき、温かく喜んで見ていただけたことがとても嬉しく、地域の輪を感じる温かいお祭りだったと感じました。そのなかで、わたしたちが踊りを通して表現した志、よく生きたいという気持ちが、一人でも多くの人に届いていたら、もっと嬉しいです。