7月22日(土)「広い世界を臨んで踊る ―― 諾神社 夏越祭への出演」

7月22日のなのはな

 オレンジ色に光るライトの中、諾神社の境内で色とりどりの衣裳を身にまとい、踊る時間。それは一瞬、時が止まったかのように感じるほど、華やかで豊かな気持ちになりました。

 この日、諾神社では名越祭が開催され、私たちにとって、この夏初めてのイベント出演がありました。

 

 

 『諾神社 名越祭』では、全7曲のフラダンスを披露し、中には今回が初披露の新曲が3曲ありました。

 私も新曲の中では『カアナアレ』という曲のフラダンスをゆりかちゃんに教えてもらい、この日に向けてみんなと振りを揃え、踊りこんできました。
 『カアナアレ』は、実は日本の『ハナミズキ』という曲がハワイアンにリメイクされた曲で、フラダンスの振り付けの中にもハナミズキの花が登場します。

 サビのはじまり、手を交互に前に出し、上へ上へと昇っていく振り付けは、ハナミズキの樹が枝を伸ばし、葉を茂らせ、花を咲かせる様子を描いたようになっており、みんなで作り出したハナミズキの花を、目の前の人へ送ります。
 『カアナアレ』のフラダンスは、まだ振り入れをしてから間もないのですが、今回、諾神社の演奏に向けて練習を重ねていく中で、とても思い入れのある、大切で大好きな曲へとなりました。

 その主な理由は2つあります。
 というのも、『ハナミズキ』の曲はもともと、なのはなのお母さんが大好きな曲で、私たちも母の日やお母さんのお誕生日に毎度、みんなで『ハナミズキ』の歌をお母さんへ届けます。
 今回、ゆりかちゃんから『カアナアレ』という曲をやると聞いて、その曲が日本の『ハナミズキ』という曲をリメイクして作られたと知り、振り入れの前からどんな曲なのか、どんな踊りなのかとても楽しみにしていました。

 

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〈午後6時から夏越祭がはじまり、諾神社の本殿では神事が行なわれました〉

 

 諾神社では、ステージの広さの関係で『カアナアレ』は10人で踊ったのですが、ゆりかちゃんが、
「この曲はいつでも全員で踊れるようにして、毎年母の日や、お母さんのお誕生日に踊れるようにしたいんだ」
 と話してくれていて、私にとって大切な曲が増えました。

 もう1つは、1週間ほど前、古吉野なのはなの体育館で諾神社のリハーサルをした時に、『カアナアレ』を踊るタメやトメについてお父さんからアドバイスをいただき、それを基にこの1週間、みんなと振りを揃えてきたからです。

「ダンスを踊るときは、ただ踊っていたらカウント通りだけれど、オンタイムより100分の1遅れて踊ることで、動きにメリハリがついてタメが作れる。ダンスは気持ちで踊るんだよ」
 と、お父さんが話してくださったとき、私は今まで自分では意識しているつもりでも、まだまだタメやトメを作れていなかったことに気が付きました。

 そのタメやトメを作るために私たちは「見えない波乱を起こす」ということを思いながら、動き1つひとつに強弱や情緒、ここは早く、ここは滑らかに、ここはぎりぎりまでタメて、というような緩急などをつけて、見ている人からはみんな揃っているけれど、実際には、カウント通りではなく、見えないところでメリハリのある波乱を起こし、見せ場や気持ちを強くこめる場所を作っていきました。

 お父さんに教えてもらったことを基に1週間、練習を重ね、本番の前日にもう一度、『カアナアレ』のフラダンスを見ていただいた時には、
「こんな風に、タメやトメをしっかりと作ることで、踊りが上品に濃厚になっていく」
 と話してくださり、改めて、踊りは普段の生活からの気持ちの粘りやメリハリが全て、身体の動きやどこまでタメるか、どこに強弱をつけるかに表れるのだと感じました。

 そして迎えた『諾神社 名越祭』の当日。
 会場である諾神社へ向かうと、真っ先に見えたのは、鳥居に囲まれた太く長い茅の輪の門。ステージとなる境内にはオレンジ色のライトがあちこちに吊り下げられ、地域の方々が笑顔で迎えてくださりました。

 

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〈「茅の輪くぐり」〉

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 夏越祭の神事のあとには、いつも私たちのことを支援し、大好きでいてくださっている水田さんによる弾き語りがあったのですが、最後の曲では、
「なのはなファミリーの皆さんに、よい幸せが訪れるよう、この曲を送ります」
 と言って『乾杯』を歌ってくださりました。

 

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〈いつもなのはなファミリーを応援してくださっている、水田さんの弾き語りステージ〉

 

 その言葉や素敵な演奏に勇気をもらい、今度は気持ちを引き締めて、私たちの番です。

 1曲目は新曲『ウリリ』。
 この曲は“メリケンキアシサギ”という渡り鳥をモチーフにしたフラダンスで、笛や打楽器などによる歌のない曲です。
 曲の出だしに、“メリケンキアシサギ”の鳴き声が入っているのですが、その音を聞いてか、諾神社には“メリケンキアシサギ”につられるようにして、色々な野鳥の鳴き声が響いていました。

 

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 この曲は、フラダンスというよりも、本物の“メリケンキアシサギ”の動きに近いような踊りとなっており、5人のダンサーが揃って顔を右へ、左へと向いてはピタッと止まったり、翼を広げる振り付けや、曲の最初から最後までほとんど止まることのないファーラップの腰の動きも特徴です。

 それだけではありません。この日に向けて、“メリケンキアシサギ”をモチーフにした衣裳も手つくりしました。
 布やビニールの素材を使った、黒や銀色に光る羽の飾りを頭や首に着け、腰にはボリューム感のある羽が付き、ファーラップの動きをするたびに、衣裳が立体的に動きます。それは、人が踊っているというより、鳥が音楽を聴きつけて踊り出してしまったというくらい、鳥らしく、魅力的でした。

 

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 あゆちゃんがMCの中で“メリケンキアシサギ”について話してくれて、その中に「北半球の果て、アラスカで繁殖し、アラスカが冬になると今度は、南半球のハワイ、ポリネシア、カリフォルニア、メキシコ、オーストラリアなどにわたります。その距離、最長約3300キロメートル」とありました。

 5人のダンサーの、切れ味よく羽を広げるように勢いよく両手を出したり、身体を上下させたりする踊りを見ていると、メリケンキアシサギの逞しさ、生きる強さをありありと感じさせられるような気がしました。

 そして、2曲目は『カアナアレ』。
 赤のフラスカートにピンク色のオーバースカートをはいて、頭にはピンク色の花飾り。会場に来てくださった方々へ、ハナミズキを咲かせ、捧げます。

 

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 ステージへ立つと、目の前には地域の方々や子どもたちがじっと温かいまなざしでこちらを見てくださっていたり、なのはなの応援組のみんなが浴衣を着て、背筋を伸ばして笑顔で見てくれているのを感じ、安心して踊ることができました。

 

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 みんなと一緒に一瞬一瞬を大切にしながら、見せ場やタメを作り、最後、私たちの作ったハナミズキの花が空へ向かってあげられて、パッと花が開く瞬間、みんなと気持ちも動きも連動するように揃っているのが空気で伝わりました。

 タメやトメをみんなで同じようにそろえるのは難しいところもあったのですが、みんなと気持ちが1つになれば、動きも1つになっていくのを感じ、改めてみんなで表現する、1人では伝えられないことも、みんなとなら伝えることができるのを感じました。

 3曲目は、ゆりかちゃんがソロで踊る『ア・レヴァ』。
 伸びやかで、上品でなゆりかちゃんの踊るこの曲は、ゆりかちゃんの気持ちが見ている側へぐっと届き、その曲や踊りに引き込まれていきます。

 

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 ほんのりと辺りが暗くなってきた中、ゆりかちゃんが回転するたびに、赤色のシフォンスカートがふわっと弧を描き、その弧の周りに無数の星や光が舞っているように感じるほど、華やかで、ゆりかちゃんの作り出す空気は魅力的で、華やかです。

 4曲目は『オテア・ルミア』。私はこの曲で、プイリという竹で作ったハワイの楽器を手に踊りました。
 午後の初め、諾神社へ場ミリや出はけの確認をしに来た時、あゆちゃんから『オテア・ルミア』の出はけは、「アマゾンに住む動物のようにもっと躍動感のある、生き生きとした感じで、いつでもパッと散れるくらい、攻めの気持ちで」と話してもらいました。

 

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 この曲はテンポが速いのですが、ひょうたんと竹で作ったイプとプイリを持った私たちの楽器を鳴らす音がピタッとそろうと、迫力があり、真ん中で踊るゆりかちゃん、あけみちゃん、ふみちゃんのキレのある美しい踊りが引き立ちます。

 そして5曲目は『ハウ・ファー・アイル・ゴー』。
「今の世の中のレールに乗って、生きていけ、と言われても 安全な地位や、保障をかき集めろ、と言われても 私の心はそれとはまったく違う曲を奏でている」
 あゆちゃんの読むMCの気持ちで、若々しく、逞しく、もっと深い世界、もっと優しい世界、もっとスケールが大きくて、遠い海のような世界を思い描いて、踊ります。

 

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 この曲を踊っていると、今の自分がどうであっても、いつか絶対にまだ見ぬ誰かのために生きられるように強くなって見せるという覚悟や勇気が湧いてきて、この曲の和訳にもあるように、私が、私たちがどこまで広い世界に行けるのか、これからどんな展開、どんな世界、どんな優しい世界が待っているのか楽しみな気持ちになるし、それを私たちが作り、私たちが広げていくと思うと、希望を感じます。

 子供組のみんなと作った手つくりのティーリーフスカートをはいて、水しぶきを上げるように手を大きく開いて、パッと目に見えない大切なものをつかみ取る振り付けが私は大好きです。

 続いて6曲目は、新曲『オ・ヴァイ』。
 この曲は爬虫類の捕食をテーマにしているとあゆちゃんが話してくれて、その野性味やいつでも戦える強さ、その中にある生命力の美しさを感じる1曲です。
 白と金の衣装に、麻や貝殻で作った手つくりの髪飾りや足飾りをまとい踊るダンサーは、女神さまのように美しく、神々しく、自然の美しさや尊さを感じさせられます。

 

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 ラストの7曲目は、私たちの大好きな曲『ビューティフル・ピープル』。
 昨日、あゆちゃんが『ビューティフル・ピープル』のダンスを前から見てくれていた時、
「この曲はもっと、バイタリティ溢れる若々しさや、日々のなのはなでの生活が目に浮かぶような表情で踊る」
 と教えてくれました。
 それを思うと、気持ちが作りやすかったです。

 今、私は桃チームのみんなと毎日、桃畑を周り、桃の収穫をしたり、ネットをかけたり、ブルーシートを敷いたりしていて、その中で仲間の存在を強く感じます。
 お互いに足りていないところをフォローしあい、お互いに助け合えるところは協力し合い、汗を流してたくさん動いた後の、達成感や充実感を感じられる日々。
 なのはなファミリーでは、一人ひとりがかけがえのない大切な仲間で、一人ひとりの存在があるからなのはなファミリー全体が明るい方へと前進していき、それぞれが与えられた役割を真っすぐに向かう姿は、美しいです。

 そんな、充実した日々や、作業や生活の中で感じる仲間の好きなところ、尊敬するところを思い浮かべたり、こんな風に大切だと思える仲間がいて、私もその中の1人として今、生きることを楽しめることが幸せだと感じます。

 

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 今回、一緒に踊る仲間、応援組として浴衣を着て見に来てくれた仲間のことを思い浮かべながら、なのはなファミリーの代表として、なのはなの子として誇らしく、堂々とした気持ちで踊りました。
 出演前、お父さんがミーティングで、
「ステージに立って人に伝える気持ちを作るという時、“真面目な良い子”になる、というのではいけないよ」
 と話してくださりました。あゆちゃんも、
「狭い教室に閉じ込められたままの優等生のように表情を作るのではなく、もっと広い世界を見て、遠いところを見て踊る」
 と話してくれました。

 なのはなファミリーのこと、今、私たちが回復した先にある世界、これから出会うまだ見ぬ誰かのことを思うと、自然と力が湧いてきます。勇気が出ます。
 泥臭く、未来に何の保証もなくても、前を向いて力強く生きていく。例え、この先どんなに大変なことがあろうとも、まだ見ぬ誰かのために何度でも挑戦して、生きる意欲をもって進んでいく。
 そんな気持ちで踊りました。

 

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 すべての演奏が終わった後、アンコールの声がかかりました。
 アンコールをお願いしたいと頼まれたのは、その日の午後3時ごろで、突然のアンコールだったのですが、私たちにはいつでもみんなで踊れる曲があり、今回は急遽、『フラガール』を踊らせてもらいました。
 そのころには、もう辺りはすっかり薄暗くなり、オレンジ色のライトに、私たちの黄色とオレンジ色のスカートが照らされて、その温かく、優しい空気の中、踊らせてもらえたことが嬉しかったです。

 

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 諾神社では、お客さんとの距離も近く、一人ひとりのお客さんの表情が見えるのですが、どの方も肯定的に、温かいまなざしで見てくださっているのを感じました。
 上を見上げる振りの時、樹と樹の隙間から星が見えました。また、アンコールになった時、気が付けば水田さんがシャボン玉をたくさん作ってくださっていて、キラキラと虹色に輝くシャボン玉の中、踊る時間はとても素敵でした。

 

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『諾神社 名越祭』。
 なのはなファミリーの夏のイベントは、ここから始まります。

 数日後には『勝間田天神涼み』や『夏まつり作東』なども控えているのですが、今日感じた気持ち、なのはなの子として堂々とした気持ちで踊ること。お客さんに喜んでいただけたことを胸に、この夏もいつでも表現者、ダンサーになり、いつでもファーマーになり、いつでもなのはなの子としてどこを切り取られても恥のない、心持ちでいたいと思います。

(ななほ)