【7月号⑮】「父の日 なのはな音楽祭 ―― ショーマン、そしてヒーローとなって ――」 えみ

 

 父の日のお祝いに、みんなと「なのはな音楽祭」のプレゼントをしました。
 事前にあゆちゃんがアンケートでみんながそれぞれやりたいことというのを募集してくれて、みんなのアイデアが集まってできた様々なジャンルのチーム。ダンス、バンド、アンサンブル……などなど。中には、ミュージカルやゴスペルなど、なのはなでは今まであまり聞いたことのないようなジャンルまであり、一体どんなものになっていくのか、わくわくとしていました。

 畑作業などとも並行して準備を進めていき、チームのみんなと一から出し物を作っていくその過程も本当に充実していて、宝物のような時間だったなと思います。

 当日まで、お互いのチームの全貌は分からりませんでした。でも、夜の時間も古吉野なのはな中の至る場所からみんなの歌声や楽器の音色が聞こえてきて、活気のある空気がとても嬉しかったです。

 

卒業生からもお花やプレゼントが届きました

■父の日音楽祭、開幕

 私は、今回まえちゃんチームの一人として、みんなと『サンダー』という曲でダンスを練習しました。チームのメンバーにはりゅうさんや、お仕事組さんのなおちゃんや、まことちゃんもいてくれて、十一人の大人数チームでした。日中に全員揃うということはなかなかなかったけれど、夜の時間や、時には朝練習もしながら、何度も踊りこんで振りを揃えていって、みんなと気持ちを一つにしていけた時間がとても楽しかったなと思います。

 そして、迎えた当日。少し緊張もしていたけれど、みんなお父さんに喜んでもらいたい、そんな気持ちで溢れているのを感じました。パーカッション隊を前に全員でステージに並び、お父さんお母さんをお出迎え。オープニング曲は、『ウィラーマン~なのはなバージョン~』です。

 

 

 この曲は、もともとはニュージーランドに伝わる鯨漁の仕事歌で、あゆちゃんがお父さんのために替え歌を作ってくれて、さとみちゃんが三部合唱に編曲してくれて、全員で歌いました。

「むかし、むかし、あるところに健坊という男の子いた」
「そして、彼は決めたんだ。この生きづらさの原因を、自分の人生をかけて突き止めてやる。健坊は時を経て、今、私たちのお父さん。生きる答えをくれたお父さん」

 とてもテンポが良くて、みんなと練習していても思わず口ずさんでしまうような曲でした。パーカッションチームのみんなが叩くリズムに合わせて、お父さんに向けて感謝の気持ちを込めて歌うことができて嬉しかったです。「お父さん、いつもありがとうございます!」

 なのはな音楽祭の幕が開き、続いて各チームによる演奏です。
 トップバッターは、「ボディーパーカッション 弾打々」。かにちゃん筆頭に虹色のターバンを頭に巻いた六人が、手足を使って、リズムを作りだしていきます。一曲目は、木の箱を使っての演奏。二曲目は、足を踏み鳴らしながら、全身を使ってのリズミカルな音楽にくぎ付けになりました。身体を使って、こんなにもすごい演奏ができるのかと驚き、みんなの力強い目力や生き生きとした表情が印象的でした。

 

ボディパーカッションのステージ

 

 二チーム目は、せいこちゃん、さきちゃんによる『ジ・アザーサイド』。
 映画『ザ・グレイテストショー』に出てくる曲の一つで、せいこちゃんが一番好きだという曲。せいこちゃんの弾き語りがしたいという思いと、さきちゃんの連弾がしてみたいという思いによって結成されたチームでした。

 二人の息ぴったりの掛け合いが聞いていても気持ちが良かったし、本当に楽しそうに、伸びやかに表現している二人の姿がかっこよかったなと思います。

 

『ジ・アザーサイド』の弾き語り

■トウモロコシと雨

 三チーム目は、「健人ピストルファミリー」。一曲目は、りんねちゃん、りなちゃんによるアコースティックギターの演奏、二曲目は、バンドの編成での『RAIN』という曲でした。
 アコースティックギターで演奏してくれたのは、お父さんが大好きな『玉蜀黍(トウモロコシ)』を題にした曲。

 

 

 りんねちゃんとりなちゃんが並んでギターを弾く後ろで、よしえちゃんが、演奏者の二人が一緒に考えたというMCを読んでくれました。

「私たちは、なのはなに来るまで、芽を出したくても出せなかったトウモロコシの種でした。真っ暗な土の中で、それでも、地上の太陽の光を信じ続けていました」
「思いが届いて、私たちはお父さんに巡り合いました。お父さんがくれた太陽の光を見ている限り、私たちは、真っすぐに空に向かって、伸び続けることができます」

 ギターの音色に乗せて流れた、その言葉に思わず涙が出てきそうになりました。

 

 

『RAIN』は、お母さんが大好きだという曲。今回の会のために結成されたバンドとは思えないほど、それぞれのパートがぴったりとはまっていてびっくりしました。
「濡れないための、大きな傘なんて要らない! 濡れてしまえ!」
 力強い歌詞とチームのみんなから伝わってくる前向きなエネルギーに、聞いているだけで力が湧いてきたなと思います。

 

『RAIN』は普段と違うメンバーでのバンド演奏です

 

 前半ラストのチームは、「ダッドロマンス」の四人組。
 一曲目は、レディ・ガガの『アプローズ』。二曲目は、『ダンシング・ヒーロー』。
 今まで見たことのない四人の一面に衝撃を受け、でも何故か、見ていると一度自分もやってみたいという気持ちになるような不思議な魅力がありました。特に二曲目では、四人がとびきりの変顔をしながらキレキレのダンスを踊りこなしていて、四人がとてもかっこよかったし、これほどになくお腹を抱えて笑ってしまうほど面白かったです。

 

「ダッドロマンス」の4人組による奇想天外なダンス

 

 ここで、前半が終わり、一休憩。
 休憩の時間には、お仕事組さんたちが作ってくださった特製スイーツを頂きました。

■第二部

 ひんやりと冷たくて甘い、酒粕アイス。米粉クッキーのクランチの上にふんわりと真っ白なアイスがのっていて、上には星がたくさんちらしてありました。見た目も本当に可愛くて、美味しいスイーツに身体も心も満たされ、続いての後半に向かいます。
 
 五チーム目は、「ソウルフル・ディーヴァ・ファイブ」によるゴスペル。
 ゆいちゃんの伴奏に合わせて五人が歌う『オー・ハッピー・デー』は、不思議と、一度聞いただけで頭の中を何度も流れるほど引き付けられる力がありました。

 

第2部の始まりはゴスペル風のステージ

 

 続いては、「劇団ナノワーツ」によるミュージカル。起承転結のあるストーリーに歌やダンスが織り交ぜられた面白い舞台でみんなを楽しませてくれました。

 

 

 そこには、魔法学校の新入生として選ばれた五人が、登場。そのうちの三人はみんなのために魔法を使いたいという夢を持ち、残りの二人が持つのは利己的な自分の欲望のための夢。
 お互いにぶつかり合う中、そこに魔法学校の先生が現れて、呪文や歌で利己的な夢を持つ二人の気持ちも変わり、最後には五人が友達に。
 途中から出てきた校長夫人役のほしちゃんの迫力ある演技にも驚きました。
 短期間の中で、一篇のミュージカルまで作れてしまうみんなが、本当にすごいなと感じました。

 七チーム目は、「風変わりな魔女」によるアンサンブル演奏です。頭から肩にかけてかけられたスカーフがポイントの、赤を基調とした衣裳が、とてもおしゃれで魅力的でした。
 演奏はチームのみんなと試行錯誤を重ねながら作り上げたというメドレーになっていて、中にはお父さんの好きな『鈴懸の径』も入っていて、お父さんも嬉しそう。
 何度でも聞きたくなるような素敵なオリジナルメドレーだったなと思います。

 

衣裳も大好評だったアンサンブルチーム

 

 続いては、なのはなバンド「パプリカ」による『天国への階段』。
 一曲の中に壮大な物語を感じさせる曲で、一つひとつの楽器が重なり、そんな世界を表現できるバンドメンバーがすごいなと思いました。お父さんが、演奏を聴きながらよりよい音楽になるように音調整もしてくれました。この曲は、これからまた、コンサートなどでもやりたいということで、また進化していくのがとても楽しみだなと思います。

■ナノベンジャーズ

 後半も、残るは二チーム。
 有志のチームで、ゆりかちゃんやダンス部のみんなの「ティアレ・なのはな」によるタヒチアンダンス、『オ・ヴァイ』では、はっと息を飲んでしまうような美しい女神たちが踊る、滑らかで上品なダンスに引き込まれました。
 お父さんお母さんが、この曲はそのまま今年の夏祭りなどでも踊っていきたいと話してくださったのも嬉しかったなと思います。

 

手作りの冠や、新鮮な衣裳も見どころの、 タヒチアンダンス『オ・ヴァイ』

 

 ラストは、「ナノベンジャーズ」で『サンダー』。
 まえちゃんチームのみんなと一緒に、踊りました。
「小さい頃は、ヒーローになれる訳ないって笑われてた。でも、僕たちヒーローになれたよ。見て、お父さんが育てたヒーロー! 何か困ったことがあったら呼んでね、すぐに駆け付けるよ。カモン!」
 これまでの練習の過程でみんなと揃えたところを一つひとつ思い出しながら、お父さんへの感謝の気持ちを込めて、踊りました。途中からはりゅうさん、さらにはなおちゃんが出てきて、どんどん仲間が増えていくのが心強くて、嬉しかったです。

 

『サンダー』のダンスパフォーマンス

 

 私は、練習を始めた頃は、まえちゃんに、
「恥ずかしいっていう気持ちが顔に出てるよ!」
 と言われてしまうくらい、なかなかこのダンスを踊る時に自分を離れることがなかなかできませんでした。

 でも、みんなと毎晩練習をしていく中で、みんなが表情のお手本を見せてくれたりもして、ある時からは自分の殻が一枚はがれたような気持ちになったなと思います。
 この曲を踊ることで自分の気持ちも強くなっていくことを感じたし、ナノベンジャーズのみんなと練習の過程を通してどんどん気持ちが一つになっていくことを感じて、みんなの前で表現できた時間もすごく楽しくて、幸せでした。

 

それぞれのチームで構成や衣裳を考え、練習しました

 

 スーパーマンをイメージした衣装は、まえちゃんが中心になって考案してくれたもの。みんながフェルト生地で雷マークを作ってくれて、胸のところにお揃いでついています。
 今までにない少し飛んだ衣装で、でもそれをみんなと着ている自分たちもそれだけで力が湧いてくる感じがしたなと思います。

 

■ヒーローとなって

 最後には、お父さんお母さんが感想を話してくださり、「なのはな音楽祭」はお開きとなりました。お父さんお母さんが、みんなの演奏やダンスが本当に面白かったと言ってくれて、その言葉がとても嬉しかったです。

 お父さん、いつも本当にありがとうございます。どこまでも自分たちのことを理解してくださって、どんなに未熟でも、失敗することがあっても、自分たちの未来を諦めずに信じていてくれるお父さんがいてくださるから、今自分たちは前を向いて生きていくことができます。
 これから、なのはなの子として、一人のヒーローになっていけるように、みんなの中で成長していきます!