【7月号⑦】「喜びをくれた“秋”ジャガイモ」 るりこ

 ジャガイモ栽培の旅が終わりました。
 この春、約四十四アールの面積で大規模にジャガイモを育てました。品種はメークインにアンデス、デストロイヤーです。
 植え付けは三月に行い、お父さんが監督をしてくれるなかで、まるで一種のスポーツのようにハイスピードで、かつ楽しく植え付けをしました。大規模だったはずなのに、大人数でやるとあっという間で、みんなの明るい声と笑顔が広がるなかで植え付けられたジャガイモは、数週間後、どの畑も揃って発芽してくれました。さい先の良いスタートでした。

 

 

 七枚の畑の中に、実は秋ジャガイモの出島が含まれていました。この秋ジャガイモ、植え付けられたのは昨年の八月末。それが一か月経っても、二か月経っても、一向に芽が出ず、そのうちに、「もうダメだ」と諦められて、みんなからの関心もなくなっていました。残念ながら、秋ジャガイモは失敗だった。誰もがそう思い、諦められ、忘れかけられた秋ジャガイモ。ジャガイモ掘りをすることもなく、冬がやって来て、長く厳しい寒さを耐えた先に、季節が巡り巡って、芽吹きの季節の春がやって来ました。
 梅林の梅の花が咲いてきた頃、思わぬ光景が梅林奥、奥々畑に広がっていました。半年越しに、秋ジャガイモの芽がぞろっと出始めたのです。驚くべきニュースはすぐに古吉野なのはなに広がり、みんなの関心を一度に引き戻しました。

 

春になり芽を出した、梅林畑のジャガイモのスケッチ

 

 秋ジャガは芽が出てから、半年間以上も土の中で溜めに溜めたパワーを発揮するかのように、めざましい成長を見せました。芽の生育がどの畝もびしっと揃い、青々とした柔らかく旺盛な葉が勢いよく茂りました。
 その頃、春夏野菜の担当が発表され、わたしはジャガイモを担当することになりました。ジャガイモと聞いて、正直、ぱっとしない印象がありました。長持ちして、食卓に欠かすことのできない、大切なメイン野菜の一つですが、丈夫な野菜なので、毎年、植え付けられてから収穫までの期間は放任されがちでした。

 でも、畑に足を運ぶごとに元気な生命力を見せてくれるジャガイモを見ていると、だんだんと可愛いなと思う気持ちが膨らんでいきました。特に秋ジャガイモは一度は諦めかけられたのに、みんなを良い意味で裏切るように、「どうだ、見ろ」と言わんばかりに挽回して、元気な姿を見せてくれます。そんな秋ジャガイモを見ていると、例え大器晩成であったとしても、芽が出たら本来の力を取り戻している姿が自分たちの回復に重なる部分があり、わたし自身が励まされるようで、ジャガイモからパワーや意欲を充電してもらっているようでした。
 毎朝、ジャガイモ畑に行くことが日課となり、少しずつ変化をしていく様子を大切に見守りました。

「絶対にこの秋ジャガを大豊作にさせて、みんなを驚かせたい!」
 共に担当するやよいちゃんと、目指す目標が定まりました。

 四月の初旬には遅霜が降りましたが、霜予報が下りるたびに霜対策用にビニールかけや藁敷きをして、ようやく出てくれた大切な幼い芽を守るために走りました。はらはらする期間が続きましたが、気持ちを切らさずに霜には敏感になって、無事、霜対策は成功し、どの畑の芽も守ることができました。

 

葉が茂り始めた4月の芽かき作業

 

 その後、一回目の追肥と土寄せを行いました。ジャガイモは土を寄せただけ、その土の下に芋がたくさんなるので、芽の先端が二から三センチ見えるくらいまでたっぷりと土を寄せてあげました。

 春ジャガイモを植え付けたジャガイモ畑は五枚ありましたが、担当者としては、やっぱり梅林畑の秋ジャガイモが最も思い入れが強く、どの畑よりも梅林畑のジャガイモの土寄せは特にたっぷりと土を寄せてあげ、高いかまぼこ型の畝ができあがりました。

■迎える収穫の日

 五月初旬。いよいよ蕾が膨らみ始めました。花が開花する前に二回目の追肥と土寄せをするのがベストタイミングで、良い時期に手入れを進めていくことができました。
 二回の追肥と土寄せ後は、収穫まで草取りを徹底して行いました。前年度の反省で、雑草が伸びすぎて、芋の肥大より雑草の勢いが強く、小さな芋ばかりになってしまったためです。今回は大きな芋にしたいと、雑草が栄養を吸収してしまう前に徹底して草を取り除きました。

 その他にも保存性を良くする目的で石灰を撒いたり、アミノ酸を散布して、収穫直前まで少しでも株を元気にさせようと、やよいちゃんと試行錯誤して、畑を駆け回りました。通常の手入れ以上にジャガイモのためにできることをプラスアルファで行うことができて、ジャガイモがどんな状態で掘り上げられるのかを想像するだけで期待が膨らみました。

 五月三十日。いよいよ葉が黄色く枯れてきました。収穫の目安です。わさわさと茂っていた葉が萎むように枯れてきて、軽く掘ってみると、茎の下でしっかり芋がなっているのが見えました。
 六月に入って、梅雨入りをしてから、なかなか収穫のタイミングが掴めずにいましたが、試し掘りをしてみたところ、理想的なサイズの芋がたくさん出てきて、雨間のワンチャンスを活かして、長い間、待ちに待った収穫を翌日に実行することを決定しました。

 

 

 七枚の畑のジャガイモ掘りのトップバッターは、わたしも最も期待の大きい、梅林奥と奥々畑の秋ジャガイモでした。この二枚の畑はどこの畑と比べても、土質がとてもさらさらとしていて、水はけも良いです。スコップを差すと、軽い力でぐっと奥まで入り込み、ペアの子と、「せーの」で持ち上げると、ごろごろとジャガイモが現れました。
 一株に大小サイズのものが十から十五個は付いているでしょうか。大半が握りこぶし大で、なかには握りこぶしよりも一回り大きなものもありました。一口サイズで食べられそうなミニジャガイモもありましたが、全体的によく肥えた大きな芋が掘れました。どのコンテナも大サイズのものがゴロゴロと積み重なっていて、皮が薄く、白さと艶々とした肌感が、今すぐに調理して食べたいと思うほど美味しそうに見えました。

 秋ジャガイモの山を見て、ここまで一緒にジャガイモを担当してきたやよいちゃんと顔を見合わせて、「やったね」と喜びを分かち合いました。掘られたジャガイモをみて、収穫には立ち会えなかったみんなも、「すごいね」「大きい!」と半年越しに出会う秋ジャガイモを見てびっくりしてくれました。誰もが同じくらいに、秋ジャガイモを収穫できたことを喜んでくれていることが伝わってきて、そのことがとてもとても嬉しかったです。

 

■ジャガイモ掘りウィーク

 秋ジャガイモの収穫に引き続き、春ジャガイモの収穫も四日間にわたって、一日一枚ペースで行われました。
 規模が大きい分、作業時間もかかりましたが、なのはな一丸となって、「ジャガイモ掘りウィークだ!」と協力体制で行えたことがとてもありがたくて嬉しかったです。
 広い畑もみんなでやると速くて、ところどころから歓声や笑い声が広がって、改めて芋掘りは収穫のなかでも群を抜いて楽しいなと思いました。

 七枚の畑を掘り上げてみて、畑の土質や元肥を入れたタイミングによって、収量に差が出ることがわかりました。植え付け直前に元肥を入れた山畑のジャガイモは、面積に対して最も収量が多く、反対に水はけが悪く、粘土質がきつい、新いいとこ畑のジャガイモは小さい芋ばかりで不作でした。
 ですがトータルでみると、どの畑も一株になる芋の数が多い印象で、全体的には豊作のジャガイモ掘りでした。

 

赤いジャガイモ、デストロイヤー

 

 ジャガイモの収穫を終え、ほっとする気持ちと、ここまでの過程を思い返し、ジャガイモと一緒に進んできた旅が終わったのだと、少し寂しい気持ちになりました。
 担当者として、「絶対に豊作にさせたい、質の良いジャガイモを育てたい」と心を込めて育てたジャガイモ。自分たちで言うのもおこがましいですが、こんなにみんなから愛されて、大切に育てられたジャガイモはこの子たちが一番だろうと思いました。そんなわたしたちの気持ちに応えるように、秋ジャガイモも春ジャガイモも目覚ましい成長を見せ、手入れをするたびに効果を見せてくれ、大ぶりできれいな芋をたくさん実らせてくれました。

 

ハートの形をした、2種の赤ジャガイモを発見

■ジャガイモとの旅

 今回、ジャガイモを担当させてもらい、改めて野菜を育てる楽しさを強く感じる機会となりました。自分がどれだけ気持ちを注げるか。野菜は正直に応えてくれます。手をかけずに簡単に育てられ、収穫できる野菜はありません。例え仮に収穫まで結びつけたとしても、その過程がいい加減だったり、適切な時期に適切な手入れができなかったり、一番は野菜に気持ちを向けられなかったら、それは本当に良い質の野菜にはなりません。
 なのはなで農業を体験させてもらうなかで、野菜を育てる難しさにたくさん直面するけれど、それ以上に農業を通して、一番は自分の心を育てさせてもらっているのだということを、今回、ジャガイモに深く学ばせてもらえたと思いました。

 

 

 これでジャガイモの旅はひとまず終わりですが、わたしたちにはまだまだ次の野菜が待っています。芋担当のわたしたちとしては、続くはサトイモとサツマイモです。
 一緒に楽しい期間を過ごし、嬉しい結果を見せてくれたジャガイモにお礼の気持ちを込めて、次の野菜へ気持ちを向けて、また頑張ります。この秋はサトイモもサツマイモも豊作になりますように。
 ジャガイモ、ジャガイモ、ジャガイモ!
 たくさんの嬉しさと、そして育てる楽しさを教えてくれてありがとう。とても、とても充実した、ジャガイモ栽培。ジャガイモと進んできた三か月間の旅は、わたしの宝物になりました。

 

 

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【コラム】新・畑チーム始動!

 夏の作物を担当する、新しいチームでの活動が始まっています。各野菜を見る2つのチーム。豆類を担当するチーム、田んぼの担当、そして桃チームで、良い収穫のために夏の田畑を動かしていきます。毎晩、リビングでは畑チームでのミーティングが和気あいあいと行なわれ、翌朝の手入れについて打ち合わせたり、担当している野菜について嬉しかったこと、困ったこと、その他自分の今の気持ちを話し合ったりしています。早朝の畝立て作業キュウリの手入れモロヘイヤを植え付けました野畑にスイカを植えましたミニトマトの収穫が始まっています!

 

早朝の畝立て
モロヘイヤを植え付けました
ミニトマトの収穫が始 まっています!
キュウリの手入れ
野畑にスイカを植えました