【7月号②】「泥のなか、ただ全力で! 白熱・泥んこ運動会」 るりこ

 

 何よりも楽しくて、なのはなのイベントでは最上位に選ぶくらい、大人気の泥んこ運動会がやって来ました。
 大会は池上田んぼにて行い、全四チームに分かれて、定番の泥んこ相撲から、新種目の目隠しフラッグ、タイヤ取り、リレーの全四種目の競技で勝敗を競いました。

 

 

■目隠しフラッグ取りの名場面

 なかでも印象に強く残っているのは、今回初めて取り入れた、新種目の目隠しフラッグ取りです。
 ルールはシンプルで、目隠しをした状態で、誘導係の子の声だけを頼りに、田んぼに立てられたフラッグを探し当て、先に取ったチームに得点が入るというものでした。スイカ割りの田んぼバージョンのようなゲームです。

 四チームから一人ずつ出場し、目隠しをしてスタンバイができたら、あゆちゃんがそーっとフラッグを、田んぼのどこかに差します。その場所は誘導係の子と、周りで観戦しているみんなしか見えません。それを誘導係の子が、方角や歩数などを叫んで伝え、フラッグの在処を、目隠しした子に伝えてあげるのです。

 

 

 このゲームは観戦しているのが面白く、目隠しをされた子が田んぼの真ん中で右往左往して、彷徨っている姿に笑いが尽きませんでした。まるで見えているかのようにフラッグに向かって真っ直ぐに歩いていっているのに、そのまま通り過ぎて畦に激突していたり、田んぼに這いつくばるように、泥の中を手探りであさっている子など、やっている本人は必死ですが、見ている側としては涙が出るくらいに笑いました。

 

 

 なかでも面白かったのが、あけみちゃんとなつみちゃんが出ている試合で、フラッグは時計の十一時の方向にありました。「よーい、スタート」と同時にあけみちゃんとなつみちゃんがその方向に向かって全力疾走で田んぼを横断していき、その走りが本当に速くて、フォームも格好良かったのですが、そのままの勢いで畦を跳び超えてしまい、ガマの穂がある沼の中に落ちていってしまいました。一瞬の出来事で、
「あけみちゃんとなつみちゃんが消えてしまった!」
 と思ったら、二人はまたすぐに立ち上がって、沼の中から出てきて、何事もなかったかのようにフラッグを探していました。この場面には大きな笑いが起こりました。

 

 

 みんなの必死な姿に大笑いをしていたわたしですが、実際に目隠しをされてしまうと、本当に右も左も平衡感覚もなくなってしまうことに驚きました。数歩進んだら、もう自分がどこに立っているのかわからなくなってしまい、必死に誘導係の子の声を聞こうとしましたが、田んぼの隅で仁王立ちしている間に、敵チームのりゅうさんにフラッグを取られてしまいました。このゲームは是非、定番にしてほしいくらいに面白かったです。

 

 

 わたしは今回、ちさとちゃんリーダーの赤チームに入らせてもらいました。泥んこ運動会が今回初めて子も全身泥まみれになることを気にせず、思い切り楽しんでいました。団結力と明るさに満ちたチームメンバーに囲まれて、より楽しさが倍増しました。

■本気勝負のタイヤ取り

 三種目目のタイヤ取りでは、作戦を立てるのが難しかったです。田んぼの中央に小さなタイヤが五つ、大きなタイヤが二つ置かれてあり、小さいタイヤは一つ一点、大きなタイヤは二点です。「よーい、スタート」で、両チームが両端から勢いよく走り出し、中央のタイヤを自分たちのチームの陣地に多く運び込んだチームが勝利になります。

 

 

 一試合目は作戦が失敗してしまい、二試合目からはとにかく五点を取ろうという作戦に変えて、得点倍の大タイヤを確実にチームの陣地に寄せようということになりました。
 小タイヤ二個を早々にゲットして、大タイヤ一個も取れて、最後の大タイヤ一個は敵陣も合わせて全十二人で取り合いになりました。この瞬間が楽しくて、誰が誰かわからずに引きずり合ったり、腕をはがそうとしたり、泥の中だからこそ本気勝負でぶつかれる感じがあります。今回は誰かにずっと羽交い締めのように押さえられていたけれど、何があっても絶対にタイヤから手を離さないぞと、意地でも掴んでいました。

 

〈最後のタイヤを必死で引っ張ります!〉

 

 一度、相手チームに持って行かれそうになりましたが、タイヤにしがみついて持ちこたえ、最後はチームの陣地に少し引きずることができました。二分の試合時間が経ち、あゆちゃんから、「六対三で赤チームの勝利!」と聞こえたときは、思わず、「やったーー!」と大きな声を出してしまうほど嬉しかったです。

■一番嬉しかった瞬間

 最後のリレーはチームワークをより強く感じた戦いでした。
 赤チームではりなちゃんが第一走者として走ってくれて、スタートと同時にりなちゃんが駆けだして、コースを曲がり、トップでバトンを渡してくれました。それを受け取ったのが第二走者のふみちゃん。運動神経抜群のふみちゃんもそのままトップを貫き、バトンを引き継いでくれました。あんなちゃん、つきちゃん、ほしちゃんと続き、みんながトップのまま繋いでくれたバトンを、わたしも絶対にちさとちゃんに繋ごうと神様に祈る気持ちで走りました。ちさとちゃんが真っ直ぐこちらを見て、手を伸ばして待っていてくれて、バトンをちさとちゃんへ受け渡すことができました。

 

 

 アンカーは最年少のももかちゃんが走ってくれました。
 ももかちゃんは、「ももか、大丈夫かな」とレース直前は不安そうにしていましたが、バトンが渡った瞬間、思い切り走ってくれて、一瞬転びそうになったときには見ているわたしがヒヤッとしたけれど、後ろから迫るりゅうさんから逃げ切って、見事一位でゴールを切ってくれました。その瞬間をチームのみんなで、「ももちゃん、頑張れ!」と応援して、ももちゃんがゴールに入ったときにはみんなでももかちゃんに抱きついて、飛び跳ねて喜びました。それが泥んこ運動会のなかで一番嬉しかった瞬間で、チームのみんなで本気になり、そして仲間のことも自分のことも信じて、みんなの真摯に祈る気持ちが神様に届いて、手にすることができた勝利だったと思いました。

■思い切り泥だらけに

 四種目の結果を踏まえて、最後は緊張の結果発表がありました。総合得点は惜しくも僅かなポイント差で青チームに負けてしまい、二位でしたが、赤チームの自分たちとしては満足のいく結果にすることができました。

 第一競技の泥んこ相撲ではつきちゃんやあんなちゃん、ちさとちゃんを筆頭に粘りのある戦いを一人ひとりがすることができて、『泥んこ相撲』というゲームのなかでは一位になることができました。目隠しフラッグでは二位、タイヤ取りも一回は勝つことができて、最後のリレーでは一位になることができました。

 

 

 最下位チームには恒例の罰ゲームが待っています。最下位のチームの子は田んぼの中心に集まり、その子たちをみんながぐるっと囲み、水かけならぬ、泥のかけ合いです。もちろん、最下位のチームの子も反撃をしてよくて、円を囲んだわたしたちももっと泥だらけになりました。

 最後はみんなで万歳三唱をしてから、自由時間になりました。もう誰が誰かわからないままに取っ組み合いをしたり、あゆちゃんが鬼になって鬼ごっこをして、田んぼのなかを走り回って、ダイブをしたり。最後の最後に本当に泥んこになりました。

 

泥相撲対決では水入りになる勝負もあり、お互いの粘り強さ、底力が上がっていることを感じました。

 

■何にも縛られず

 周りにいるみんなも泥まみれで、誰一人として泥まみれじゃない人がいなくて、自分自身もみんなも何にも囚われることなく、喜んで泥まみれになっていたと思いました。

 

 

 まだまだ未熟なところはたくさんあるけれど、泥んこ運動会をしていると、ただ目の前の勝負に勝ちたいと思えて、そのために力を尽くしたいと思えて、何者にも縛られずに自由に動き回れている解放感がとても気持ちよく感じました。このままもうしばらく遊んでいたい気持ちを抑えつつ、田んぼをあとにしました。
 この泥んこ運動会の、私たちの健闘が田んぼに伝わって、今年も、稲作が順調に進むことを願います。