【6月号⑯】「餡と愛を詰めた まんじゅう畝のカボチャたち」 りんね

 四種のカボチャ、いよいよ畑に出揃いました。新入りも登場です。
 今年は、四枚の畑で四品種のカボチャを育てます。

 梅林手前畑に『粉雪姫』七十五株、うなぎとり大畑、うなぎとり向こう畑に『えびす』百四十一株と『グラッセ』十八株、原一畑に『バターナッツ』二十四株。
 一足早く種まきをした粉雪姫カボチャから順に、植え付けをして、最後のバターナッツまで、植え付けが完了しました。

 

■饅頭型の畝

 カボチャは他の野菜の苗に比べても、丸い葉が一段と大きいです。そのため、暑さには弱い。直射日光を浴び続けると、くたっとしがちですが、育苗時、晴天の日中には、ハウス外で黒い寒冷紗をかけて、暑さをしのぎました。
 順調に苗が育ち、緑も濃く、勢いのある良い苗を、本葉四、五枚の定植適期に植え付けることができました。

 植え付ける畝は、饅頭型です。一株一株が独立した饅頭のようになっている畝は、なのはなのお父さんが考案してくれた形です。カボチャが成長したら、蔓を饅頭型の畝にぐるぐると沿わせて、誘引ができるようになっています。

 カボチャならではの畝立て。印付けは、えびすとグラッセは二メートル×二メートル、粉雪姫とバターナッツは二メートル×一・五メートルという株間で、列ごとに互い違いになるように、しの竹を挿して印にしました。

 私は、カボチャの畝の印付けを行うのは今季が初めてでした。まっすぐで、いつもの野菜でやるような畝と違っていたので、はじめは大丈夫かしらという思いがありました。
 けれど、先輩のまりのちゃんに教えてもらい、方法を知りました。カボチャの印付けは、ラインを引く必要がなくて、しの竹を挿すだけ。案外シンプルで楽しい。

 

 

 三回の定植を重ねるごとに、印付けもばっちり、自信を持ってできるようになりました。

 株が植わる位置に挿したしの竹を中心にして、周囲の土を寄せて饅頭の形を作ります。鍬で、土を大きく寄せて饅頭にしていく畝立は、力も使って豪快に行います。カボチャの畑は、どの畑もフカフカに耕されていました。フカフカな土を、存分に上げていきます。

 実はこの畝立、行う人の個性が表れてしまいます。一応、適度な見本を作って、それを目標にみんなで作るけれど、どうしても表れてしまう、それぞれの個性。ビックサイズの饅頭も、ちょっぴり小型の饅頭も、あって面白いなと思います。

 けれど、そんな畝の通りがすっとそろって見えると、不ぞろいなんて気にならない。畑一面に饅頭が並ぶと、突如現れた遺跡のような、少し非日常的な光景です。みんなとだから作れる光景でした。

■餡を詰めて

 お父さんと相談をして、饅頭の中に、牛肥をテミ半杯、草木灰を片手一つかみ分、苦土石灰を片手一つかみ分、という肥料を仕込むことになりました。
 饅頭を最後まで成形せずに、中央が窪んだ火山のようになっているところに、肥料を入れていきます。
 濃茶の牛肥の上に、調味料のように灰色の草木灰と、白い苦土石灰の粉がかかります。それを、鍬で軽く混ぜ合わせて、十センチ程度土を被せる。
 本当に特製の餡を詰めて、饅頭を作っているようでした。

 

 

 饅頭が完成したら、苗を置いて植え付けです。饅頭の真ん中に、培土と畝の土が平行になるように植え付けます。
 植え付けするにも、饅頭の真ん中に手を伸ばすのに全身を使うくらい、大きな饅頭です。
 ももかちゃんが、「カボチャにとっては東京ドームだね」と言っていて、確かに、と思いました。

 十・五センチのポットに所狭しと育っていた苗たち。広い大地に植えられて、これからは思う存分、根を広げて成長することができます。カボチャたちも、喜んでいるように感じました。

 

 

■たっぷりの水

 嬉しかったことは、どの品種も、苗の数と、ほとんどぴったりの数で畑に植わったことです。畑の隅から隅まで、元気な苗が植わっていると、気持ちも満たされました。

 植え付けができたら、硫安を四本指で一つまみ分と、牛肥一握りを、苗を囲むように施していきます。饅頭の中に仕込んだ肥料に根が届くまでの、栄養分です。

 その肥料を効かせる思いも込めて、上から水やり。うなぎとり畑の二枚は、側面に水路が流れています。水が滔々と流れ、ジョウロ満タンまで汲むことができました。

 一杯四株。たっぷりと水をやれると、ほっとした気持ちになります。

 地域の方から、水路の水が少ないときに、汲みやすくする仕切り板の使い方も教えていただきました。田んぼで使う水路の水ですが、快く使っていいよと言っていただけて、ありがたいなと思いました。

 お次は草敷き。これは、ネキリムシ対策と保湿を兼ねています。

 饅頭の広い範囲にたっぷりと草を敷きます。うなぎとりの二枚の畑では、なつみちゃんが斜面の草を草刈り機で刈ってくれました。刈りたての青い草を、惜しみなく敷くことができるなんて、贅沢。

 草敷きの効果は抜群です。定植後も、ネキリムシの被害を受けることなく株は育っています。

 

 

 最後はウリハムシ対策のネットかけ。一つひとつの饅頭にポールをバッテンにして立てて、その上からネットをかけていきました。
 ネットの端は、土でとめて、さらに小さく開いてしまった穴も、洗濯ばさみで塞いでいきます。ウリハムシが入ってくる隙間を、与えません。

 『粉雪姫』『えびす』『グラッセ』『バターナッツ』。全ての品種が、四枚の畑に植わり切って、一安心しました。
 この記事を書いている時点で、一番初めに植え付けた『粉雪姫』は、植え付けてから約三週間が経過しました。今では本葉約七枚、草丈二十七センチ。そろそろネットも狭くなってきて、整枝する時期にも近づいてきました。

 『粉雪姫』は、なのはなのお父さんが大好きなカボチャです。両手に乗るほどの小さめのサイズで、色白のかわいらしいカボチャ。ほくほくとした味わいが特徴です。

 次に植え付けた『えびす』と『グラッセ』も、定植から約一週間が経過し、順調に活着しました。目に見えるくらい、日に日に葉も草丈も大きくなっています。

 『えびす』はカボチャと言えば……というくらい定番。皮は濃い緑の、ずっしり大きな王道のカボチャです。株数も百四十一株と、主力になっています。今年はそれに加えて、ちょこっと十八株、『グラッセ』という品種も加わりました。

 グラッセ。どういう意味なのかなと思って、辞書で調べました。フランス語とのこと。——野菜をバターや砂糖を加えた水で煮たり、菓子の表面に糖衣をかけたりして、つやのある仕上がりにしたもの。

 そういえば、お父さんの大好きなマロングラッセも、グラッセでした。種袋に乗っていた写真には、『えびす』のように濃い緑の皮と、濃い黄色の中身でしたが、なんだか旨味が詰まっていそうだな、と思いました。

 『グラッセ』は、苗の時点ではどの品種よりも元気でした。経過も順調で、同じ日に植え付けた『えびす』よりも少し大きく勢いの良さを保っています。育てやすくて、美味しいのなら、最高だなと思います。新たに加わった品種の、株の成長、味について、どんな個性があるのか知ることが楽しみです。

 最後に原一畑に植えたのが、『バターナッツ』。名前からは意外ですが、四種中、唯一のひょうたん型をした日本カボチャです。
 苗も西洋カボチャとは少し違っていて、葉の厚みは薄めで、どこか和風な印象を受けました。
 植え付けた日の午後に恵みの雨が降り、植え付けから三日でも一回り大きく、元気に成長しています。

 『バターナッツ』は、お菓子作りに適している品種で、なのはなではパウンドケーキ作りで活躍しています。今年も、美味しいパウンドケーキが作れるように、いい実を収穫したいです。

 カボチャ栽培、出だしは順調。梅雨前には消石灰を撒いて、大敵のうどん粉病に備えます。
 これから、長い蔓と大きな葉を茂らせて、饅頭の畝が緑に覆われるくらい、元気に育ちますように。そして、四種それぞれの味わいで、美味しさの詰まったカボチャをたくさん収穫出来ますように!

 四枚の畑を、ツアーのように見回りながら、カボチャに心を添わせて、成長を見守っていきたいです。