【5月号⑮】「初めての草刈り機 桃畑にて」 ななほ

 

 私の憧れのお姉さん達の姿の一つに、真夏の畑で汗をかきながら、ニコッと真っ白な歯を見せて笑う、草刈りをするなのはなの子の姿がありました。
 そして、ついに私も草刈りメンバーに仲間入りすることに。

 ある晴れた日曜日のこと。
 あんなちゃんから、
「今日から、ななほちゃんに草刈りメンバーに入ってほしいんだ!」
 と声をかけてもらい、あんなちゃんとふみちゃん、つきちゃんと桃畑の草刈りへ出発しました。

 なのはなに来てからたくさんのお姉さん達に教えてもらい、私もエンジン噴霧器や動噴、エンジンポンプなどは日頃、使っているのですが、草刈り機は持つのも初めてでドキドキしました。
 でも、あんなちゃんが草刈り機を使うときのポイントを紙にまとめたものを渡してくれて、それを道しるべとして手に持って、玄関下へ草刈り機の準備をしにいきました。

 その紙には、草刈りをするときは、草刈り機の他にも草を集める熊手や、桃のネットかけ用のポールの周りを刈るときなどに使う草刈り鎌、二サイクルエンジンオイルの混合燃料を準備すること。
 草刈りをするときは畑の中の石やパイプなどを隅に寄せて環境を整えるということ。
 斜面の草刈りなどをして側溝に草が落ちた場合は、必ず熊手で草を上げることなど、基本的なことから草刈りをするときのマナーなどが書かれてありました。

 二サイクルエンジンオイルは草刈り機によっても二十五:一なのか、五十:一なのか、ガソリンと二サイクルエンジンオイルの割合が違い、ガソリンだけで草刈りをしたり、比率を間違えたりしたらエンジンの焼き付きを起こしてしまうことも教えてもらいました。この二サイクルエンジンがどんな役割をしているのかを知った上で、混合燃料の作り方も教えてもらえたことが嬉しかったです。

 そして、最初に向かったのは石生の桃畑。七本の樹のまわりを四人で手分けして担当場所を決め、私も二本の範囲の草刈りを担当しました。
 初めての草刈りはちょっとドキドキ。エンジンをかけるところから緊張したのですが、プライミングポンプを押して、チョークを閉じ、エンジンスイッチをオン。そして、草刈り機を押さえながら勢いよくスターターロープを引くと……。「ブルン、ブンブンブンブン……」。
 無事に草刈り機が動き出してほっとしたし、それからはまたチョークを開いて、いよいよ刈り始めました。

 

■初めての感覚

 頭の中であんなちゃんから教えてもらった「右から左」という言葉をリズムよく頭で歌うようにして草刈り機を動かします。
 草刈り機は思っていたよりも軽く感じたのですが、エンジンがかかると最初は腕から顔までブルブルと振動が伝わってきて、マッサージチェアに座っているような感覚になりました。

 でもすぐに、身体が安定するとその振動も収まり、目の前でもさもさと茂っていたカラスノエンドウやヒエなどの雑草が、ひとかきで横に倒れていく光景はとても面白く、気持ち良かったです。

 なのはなファミリーのある地域は『石生』というだけあって、桃畑の中にも小さな小石から手のひら以上もある大きな石などが出てきたのですが、それらも木の根元に固めて後で畑の隅などに回収しました。
 そして、気がついたら夢中になってしまい、顔を上げたときには畑一面の草刈りが終わっていて驚きました。

 でも、まだ初めは草刈り機をコントロールするという状態と草刈り機にコントロールされているという状態を繰り返していて、草を地面すれすれで刈るのが難しかったり、刈った後の地面を見ると一部、刈り残しがあったりして難しく感じました。
 だけれど、やっぱり楽しかったし、あんなちゃんが、
「初めての草刈り機はどう? うん、いい感じだね!」
 と声をかけてくれて嬉しかったです。
 あんなちゃんの草刈りは本当に綺麗で、刈り残しもなければ、全ての草が同じ高さで綺麗に刈られて、それでいて速いです。
 あんなちゃんの姿を見ながら、あんなちゃんの隣で草刈りをさせていただけることが、とてもありがたいなと思いました。

■腕を上げて

 そして、その後も池上の桃畑とスモモ畑に向かい、草刈り修行。池上の桃畑は面積も広く、立っているポールも多かったのですが、スピード感を意識して進めると、一時間もかからずに終わりました。
 畑によっても、どんなふうに人を割り振り、どのくらいの質でやるのかも違えば、草のコンデションや石などの障害物があるかどうかも異なります。
 でも、あんなちゃんが最初に、
「この畑は◯◯分で終わらせる目標にします」
 と話してくれると、ペースが掴みやすく、とても楽しかったです。

 最後は新桃畑まで進み、草刈りデビューのこの日はお開きに。約三時間、草刈りをしていると身体も疲れていたのですが、それ以上に楽しくて、気持ちがよくて、元気が出ました。
 草刈りは片付けまでが草刈りです。最後は草刈り機や刃を綺麗に洗って、次の人のために燃料を満タンにいて草刈り機置き場へ収納。

 

 

 初めての草刈りデビュー、感想を一言で言うとしたら、「とにかく、楽しい!」です。
 晴れた日に思いっきり草刈りをするの以上に楽しい作業はないんじゃないかと言うくらい、草刈りをして汗をかいて、身体を動かして、草を刈るのが楽しかったです。
 伸びた草も、草刈り機の力があれば、一秒で二センチに。こんなに気持ちのいい、スッキリする作業があったのかと驚くほどでした。

 次の日も、開墾二十六アール畑や十七アール畑、夕の子畑など、なのはなファミリーにある桃畑を回ったのですが、どの畑も綺麗に草が刈られた光景を見るとすごく達成感を感じて、手入れされた整った畑という印象が嬉しかったです。
 憧れだった草刈り機。真夏は草の伸びも早く、草刈りが大忙しなので、これからも、あんなちゃんのような質とスピード感を目指して、上達していきたいです!