【4月号⑦】「一緒に春を迎えよう イチジクとの対話」 りんね

 

 厳寒期を過ぎて、太陽の暖かさから春の兆しを感じるなか、イチジクの剪定と挿し木を行いました。
 剪定について、『蓬莱柿』『ブラウンターキー』の成木は、挿し木をしないこと、寒さに強いことを踏まえて、一月に済ませています。そのため、今回は『バナーネ』『桝井ドーフィン』の剪定でした。
 寒さに強くて育てやすく、果実は極甘なことが特徴の品種、『バナーネ』。
 バナーネは、育てている規模が大きく、主力になっている品種です。今年で三年目になる木が、プール下畑に二十六本。四年目になる木が、梅林手前畑に四本植わっています。

 アコースティックギター教室の藤井先生から、バナーネの挿し穂をいただいたことが始まりでした。挿し穂から始まり、一つの芽から成長した苗も、年月が経ち、秋には多くの実が収穫できるほど、立派に育っています。
 剪定はミーティングでも同じバディの、ほしちゃんと一緒に作業を行いました。イチジクの手入れは、私たちの共通点でもあります。
 丁寧で、愛情深くイチジクに向かうほしちゃん。ほしちゃんとイチジクの手入れに向かうとき、心が穏やかになって、ほのぼのとした幸せな気持ちが広がります。
 外にいるだけでもぽかぽかしてくる、太陽の暖かさを感じながらの作業でした。

 剪定は、
「前年に伸びた枝を二、三節残し、外芽の上で切る。ただし、夏果は前年枝の先端に着果するため、全体の四割ほど、少し弱めの枝を選んで切らないようにする」
「強い内向枝や、弱すぎる下垂枝は根元から切る」
 ということを基準に進めました。

 ほしちゃんが、切り口にトップジンを塗布し、枝を回収して補助をしてくれました。
 主枝がある程度決定してから、バナーネの剪定を行うのは今年で二回目。前回の剪定を踏まえて、どう木が成長したのかということや、木の成長が作業性に及ぼした影響など、経験が蓄積された上での剪定でした。

 切り戻した主枝から、二、三本ほど、一・五メートル程度の勢いの良い枝、その他、少し勢いの弱い枝が伸びる。この結果枝を、毎年二、三節残して切り戻すことがイチジクの剪定の基本になる。
 実際に成長を確認することができると、今行う剪定が、次のどんな成長へ繋がるのかということも、少し予測できると感じました。

 

 

 剪定すると、その結果として、木が成長する。まだまだ、理解不足な面もたくさんあるけれど、イチジクの木と対話をするように、剪定を行って、イチジクをより深く知り、心を通わせていけることが、嬉しいなと思いました。
 バディのほしちゃんと剪定を行って、また一つ私たちの交換日記のタイトルでもある、『プール下の絆』を深められたことも、嬉しかったです。

 剪定を終えて、また翌日に行う予定の挿し木をするため、挿し穂に向く太すぎない前年枝を選別しました。多めに枝を選んでおいて、水を張った樽に枝を浸けました。
 イチジクは、非常に挿し木が成功しやすい果樹です。そのほとんどが、挿し木で苗を増やしていると言われています。なのはなでは元々、盛男おじいちゃんが、挿し木を教えてくださっていました。

 挿し木は、木を剪定した枝を土に挿すことで、その枝から根が生え、芽が出る、というものです。
 今まで、植物は種から育つものだ、と思っていたところに、枝から育つこともできるんだと知ったとき、とても驚きました。そして、そんな植物の神秘に、ドキドキするような、すごいなあ、と思う気持ちが湧きました。

 

■ユーノス畑で育っていく

 盛男おじいちゃんから教えていただいた挿し木を、繋げていくため、そして、安定した苗作りに進化させていけるように、今年もイチジクの挿し木を行います。
 剪定に引き続き、バディのほしちゃんと挿し木を行いました。
 手始めに、剪定後から一晩水に浸けておいた枝を、挿し穂に切っていきました。
 挿し穂に向いているのは、昨年に伸びた若い枝です。太すぎず、細すぎず、丁度良い枝が発根しやすいと言われています。
 その枝を、三芽残して、下は節の真下を斜めに切り、上は節の真上をまっすぐに切りました。節の真下を斜めに切るのは、節の断面から、最も発根しやすいためです。

 挿し穂は全部で二百本。ほしちゃんと二人で、どんどん切りました。
 イチジクの枝は柔らかいです。盛男おじいちゃんから、木質が“スポンジ状”になっていることを教えていただいたほど。剪定ばさみで切ると、サクッ、という感触がしました。
 また、断面からはイチジクの木の香りが漂いました。

 挿し穂の準備ができると、ユーノス畑へ場所を移動しました。
 これから苗を育てていくのに、園芸担当のさとみちゃんが、ユーノス畑の空きスペースを使っていいよ、と言ってくれました。さとみちゃんも、ほしちゃんと、私と同じバディです。
 ユーノス畑には、さとみちゃんが育てている宿根草や球根がたくさん植わっていて、ほしちゃんが育てているヤグルマソウも、植わっています。
 そこへ、イチジクの挿し木が加わることに。ブロックを四つ置いて、桟木を渡し、こじんまりとした挿し木のスペースを作りました。
 私たち三人のバディにとって、ユーノス畑が共通点になった、と思いました。

 

 

 今回は初めての試みで、ポットでの挿し木を行いました。
 土は、赤玉土、牛肥、落ち葉堆肥を配合して、半月ほど寝かせて発酵させた、特製の土を使いました。握ったら固まり、触ると崩れるくらい、を目安に水を加えて土を混ぜます。

 ポットへ土を詰めていると、落ち葉堆肥のいい香りがしてきました。山の中の土みたいに、フカフカした土になっていて、とても嬉しかったです。
 その日は雨がぱらついたり、粉雪が降ったり、落ち着かない空模様でしたが、パッと晴れると黄金色の光に包まれて、とても穏やかな気持ちになりました。

 土をポットに詰め終わると、「どうか、根が生えますように」と祈る気持ちで、挿し穂をどんどん、ポットの中心に挿していきました。
 ポットに全て挿すことができると、ポットの底から滴るくらい、たっぷりと水をやりました。
 最後に、ほしちゃんが上の断面に、病気が入ったり、枯れこんだりしないように、トップジンを塗ってくれました。
 これで無事に、イチジクの挿し木は完了。

■挿し木のお母さん

 

 挿し木は、日中気温が十五度前後のとき、最も発根しやすいと言われています。気温が高すぎても、発根よりも展葉に栄養が取られやすい。
 ほんの少し十五度よりも寒いくらいの時期に挿すことができて、いい時期に行うことができたのではないかな、と思いました。
 その後は毎日、挿し木を見回りを続けています。
 晴れの日は銀の紗を二重にかけて、雨の日はビニールをかける。
 挿し木のお母さんになったような気持ちで、心が温かくなりました。バディのみんなと一緒に挿し木を見に行ったとき、「生き生きとして見える」と言ってくれて、みんなが応援してくれることがすごく嬉しかったです。

 最初は乾燥しないようにとばかり思って、水をやりすぎてしまったな、と思います。
 調べてみると、挿し穂にとって乾燥は大敵ですが、水のやりすぎも厳禁とのこと。少し乾き気味の適度な水分が、発根を促すようです。
 恐る恐る、一本挿し穂を少し切ってみると、まだ瑞々しく生きていたので、ほっとしました。適切な水やりに切り替えて、うまく発根してますように、と願っています。

 剪定に挿し木。休眠期の終わりに行う作業を終えて、これからは春へ。
 気候が暖かくなるとともに、イチジクの木も今年の成長をしていきます。畑に植わっている木にとっても、スタートダッシュとなる春は大切な時期です。
 天気を気にして、必要があれば水やりの手入れも行っていきたいなと思います。

 

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【コラム】栗山も、次のシーズンへ向けて

 栗山では2月から3月にかけ、大規模な手入れを行いました。
 1つは間伐です。栗の枝が大幅に混んでしまっていたところを中心
に間伐を行ない、日当りや木の間隔を整えました。
 また、幼木を広いスペースへ移し、植え直しました。

 続いて、間伐した木の根をユンボで掘り返して回収しました。お父さんがユンボを操作して掘り上げた根を、永禮さんがダンプで運搬してくださいました。

 


 

 そして栗の木の剪定です。伐採と違い高い所の枝を切り落とすので、8段の脚立を駆使して、太い枝はチェーンソーで切っていきました。新しい環境で、たくさんの栗が実る秋を、願っています。