【4月号⑥】「つぼみに桃の実、思い描いて」 つき

 

 桃の摘蕾を進めました。一巡目の初日はほぼ全員でスタート。開墾二十六アール畑に集合し、最初にあんなちゃんが説明をしてくれました。一巡目の摘蕾は、基本的に実をつけられない枝の先端と背中側の蕾を落とすこと。一センチから二センチほどの短い枝は蕾を一つに絞ることなど、気を付けるべきポイントなども実践しながら丁寧に教えてくれました。サーっと撫でるように蕾を落としていくあんなちゃんの手元がとてもきれいで、みんなでそのイメージを持ちながら始めました。

 普段、桃で使っている桃用の脚立では足りないので、コンテナや古吉野にある脚立も持っていきました。高めの脚立と低めの脚立の人同士で三人から四人のグループを作り、一本の樹にとりついていきます。声を掛け合いながらみんなで一本を終わらせて、次の樹に移るという方法で進めました。

 みんなでやると、一回で六本から七本の桃の樹を進めることができます。いつもは五人ほどの桃メンバーでしている桃作業ですが、大人数だと何倍もの速さで作業が進んでいき、みんなの力を感じました。普段は桃作業をする機会が少ないメンバーとも一緒にできて、みんなとできたことがとても嬉しかったです。活気のある桃畑にたくさんの笑顔があって、すごく温かい空間でした。

 

 

■一巡目ならではの楽しさ

 一巡目の摘蕾はスピード重視でいきたいと、あんなちゃんが話してくれました。蕾を一つひとつつまんで取るのではなくて、あんなちゃんのように指で撫でるようにして取ることができるので一本の枝にかかる時間は数秒です。慣れてきたらそのスピード感も意識しながら摘蕾ができると、より楽しくなっていき、夢中になって集中して作業をしていると、タイムスリップしたかのようにあっという間に時間が過ぎてしまいました。

 蕾には葉芽と花芽があり、葉芽はこれから葉が出てきて枝が伸びていく芽なので、全部残します。強い力で撫でてしまうと葉芽まで取れてしまうため、程よい力加減が必要です。その力加減も身体に入ってきて、花芽だけがポロポロと落ちていく感覚がとても気持ちがよかったです。地面に蕾が落ちていく度に聞こえる“ポツポツ”という音も、なんとも可愛らしく感じられました。

 

 

 品種ごとに蕾の付きや膨らみ具合にも差があり、違いを感じられました。開花時期の早い「白皇」「はなよめ」「さくらピーチ」は、ぷっくりとした蕾にほんのりピンク色が見えていて、とてもかわいかったです。そして「加納岩白桃」は蕾の付きがとてもよく感じました。蕾を落としていくのが少し心苦しくもなるほど、たくさんついている蕾を見るだけでも嬉しかったです。

 二日目からも、ある程度の大人数で進めていき、日に日にみんなのスピードも上がって、勢いよく進んでいきました。百本以上ある桃の樹を、約一週間という速さで一巡目を終えることができました。

 

 

 一巡目の最後の畑では、あんなちゃんが、
「今、ちょうど蕾が膨れてきて取れやすくなっている時期で、豪快に落としていけるのは一巡目だけだから、今日の摘蕾を存分に楽しんでください!」
 と話してくれて、みんなで一巡目ならではの豪快さを満喫しながら最後の樹の摘蕾をすることができました。終わってしまうのが少し寂しいくらいでしたが、順調に一巡目をみんなで進めることができて、とても楽しかったです。

 二巡目はさらに厳選していく摘蕾になるので、一巡目よりも慎重さが必要になり、豪快さのある一巡目とはまた違う楽しさがあります。落とす蕾の数は少なくなるので進みも速く、人数も絞って進めています。

 

〈桃の木の下で一休み〉

■緊張感と胸の高鳴り

 二巡目の摘蕾では、実を付けにくい先のほうの蕾や、食い込んでしまう下のほうの蕾など、実際に桃の実をつけたときにどうなるかをイメージして、付けられないところの蕾は取ってしまいます。逆に、一番実をつけやすい〝スイートスポット〟とあんなちゃんが呼んでいる枝の三分の二くらいところまでに付いている蕾は、もしも霜でやられてしまう蕾があっても大丈夫なように多めに残しておきます。

 常にイメージしながら頭を使っての作業は、やはり一巡目とは全然違って、より集中力が高まりました。摘蕾をしたあとの枝は、整理された感じがして、だんだんと実をつける準備が整っていくことを感じられました。それを見ていると、桃のシーズンがやってくるんだな、という緊張感とワクワク感がありました。

 日に日に暖かくなってきて、蕾もみるみるうちに膨らんでいます。ちらほら開花しているものも見受けられて、少し焦る気持ちもありますが、最後までスピード感も持ちながら集中して頑張りたいです。