桃の冬剪定が終わったとき、小さな旅を終えたような気持ちがしました。
なのはなにある桃の木は、幼木を含め百本を越えます。スモモ畑を含めると、畑は九枚。その一本一本と向き合い、その木の将来を考えながら、イメージを持ちながら、一月から二月おわりにかけて、剪定を進めました。
はじめは、自分でここを切るのが良いのではないかと検討をつけつつ、あんなちゃんがここを切って欲しいと伝えてくれたところを切っていくというやり方で進めていました。あんなちゃんが伝えてくれることを、自分にインプットしながら切っていきました。
しかし、切るところがたくさんあると、分からなくなってしまうというリスクがありました。
そこで、お父さんが提案して下さって『クリップ方式』が生まれました。
『クリップ方式』とは、あんなちゃん以外のメンバーが、それぞれクリップを持ち、自分でここを切ろうと検討をつけた枝に、クリップをはさむ。それをあんなちゃんにチェックしてもらって、自分で切る。というものです。
クリップには、スズランテープをしばりつけて、太い枝にはスズランを輪にして留めるようにしました。
あんなちゃんがクリップの位置を修正してくれるとき、自分の中でも答え合わせをしていきました。
桃の木、枝は、一本一本違います。その木の特徴や、周りの枝との関係も踏まえて考えなければなりません。そうした考えかたも含めて、あんなちゃんの手元を見て、覚えていくことができ、理解も深めていけることが嬉しく思いました。
自分自身で考える、ということが、より自分の中に入っていき、楽しさも倍増したように感じました。
一緒にやっていたメンバーも、「桃の作業で一番好きかもしれない」「楽しい」と言いながらできて、インタレスティングな楽しさを共有することができて、とても嬉しかったです。
■看板つけ
また、今年収穫できる木の一本一本に看板をつけました。
かまぼこ板に、植えた年と品種名を書き、彫刻刀で彫り、ニスを塗りました。
工程がいくつもあり、設置までに期間がかかってしまったのですが、桃の作業が本格的になっていく前につけることができて安心しました。
私は、主に看板の文字の下書きをしました。一枚一枚書いていくことで、何年生の何の品種がどの畑にあるのかを覚えていくことができて、嬉しかったです。
彫刻刀で彫るときは、木版画を習っている子たちがコツを教えてくれ、たくさんの人が協力してくれました。彫ることで、ただ文字を書くだけよりも味が出て、素敵になりました。
ニスは、りなちゃんとりんねちゃんでしてくれて、二度塗りをして、テカテカにしてくれました。
設置は、看板となっている板に穴を二つあけ、そこに、番線を通し、マイカ線を桃の木の枝に巻いたところに通しました。
木に名札がついて、とても嬉しい気持ちになりました。あまり桃作業に入ったことのない子でも、木の名前が覚えやすくなるかなと思い、いろんな人に知ってもらえることが嬉しいなと思いました。
桃の木の下にいると、癒やされる感覚があります。桃はしゃべらないけれど、心と心で通じ合っているような感覚があり、桃の声が聞こえてくるような気持ちがしています。
作業中、おしゃべりをしないけれど、集中した真剣な空気は清らかで、みんなと心を一つにして桃の木に向かっている感覚があります。
桃チームのチームワークも深まってきて、みんなと桃を守る、良い桃を育てたいという思いで、桃にとってよかれの気持ちで精一杯で向かっていけることが嬉しく、これからも力を尽くしていきたいです。