4月13日(木)「慎ましい花びらの奥に、大きな装置 ――ポポーの人工受粉 & 流れるように植え付け レタス、キャベツ、スイートコーン」

4月13日のなのはな

「霜対策に行きます」
 この発表を聞いたとき、私は、楽しみな気持ちで心は風船のように膨らみました。私はずっと、霜対策に憧れていました。

 音楽室にみんなで布団を並べて、ギターに囲まれて寝ているとき、これからはじまる物語はどんな物語だろうと、ドキドキしてなかなか寝付けませんでした。

 

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 ついに午前3時がやってきました。いつの間にか私は熟睡していて、鮮やかな目覚めでした。大急ぎで上着を着て長靴を履いて、外に出ました。こんな真夜中にみんなと外に出ることが、秘密の冒険のはじまりみたいで、心が躍りました。玄関下に集合して、あんなちゃんの真剣なまなざしを見ると、私たちには桃を守る使命があるんだと、気持ちが引き締まりました。ペンダント型の懐中電灯が配られました。首にかけると、お守りのように感じて、心があたたかかったです。

 車に乗って出発です。心地よい緊張と、非日常の楽しさを感じました。月がとても明るくて、大きな何者かに見守られているように感じました。1巡目は、一斗缶に入った資材に点火してまわります。火が桃の木を照らしました。その景色が強く心に焼き付いています。まるで、桃畑で火の妖精が、桃をあたためるための炎の舞を踊っているようでした。「大丈夫だよ」という言葉を、人でも動物でもない、何者かが語りかけているように感じて、安心した気持ちになりました。

 

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 2巡目以降は、ひたすら桃畑をまわって、竹の棒で一斗缶をかき混ぜて、火を絶やさないようにします。あんなちゃんが、軽トラに棒を載せるときは、持ち手の反対側を運転席に向けることをみんなで共通認識にしようと、事前に話してくれていました。そうすることで、手を汚さずに棒を取ることが出来ました。こういった細かいことまで気を配るあんなちゃんの緻密さと美意識の高さが、格好いいです。

 4巡目、暗かった空が少しずつ明るくなってきました。一斗缶の火が消えてしまったとき、あんなちゃんが、他の火が着いている一斗缶から火種をもらって、火が消えた一斗缶に移して、かき混ぜるとまた火が着くことを、教えてくれました。教えてもらった通りにすると、すぐに火が着きました。私は、新しい魔法を覚えたみたいで、嬉しかったです。

 

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 5巡目、もう夜の面影は薄くなり、早朝の景色になりました。暗い中に火が燃えている光景も美しかったけれど、早朝の薄明るい中で火が燃えている光景も、また違った美しさがありました。あんなちゃんが、今が一番冷え込むということを、教えてくれました。走り回っていたので身体体はぽかぽかと暖かかったけれど、気温はマイナス3度だと教えてくれました。今が山場だと、気持ちが引き締まりました。早朝の明るさの中で舞う火の妖精たちが、クライマックスの音楽を奏でているように見えました。

 6巡目。「あと10分で日の出です」あんなちゃんがそう声をかけてくれて、みんなでひとつになって桃を守るという気持ちが、マックスになりました。どうか桃たちが霜から守られますようにと、祈る気持ちでした。私たちは夢中になって走って、一斗缶をかき混ぜました。梅林の一斗缶をかき混ぜ終え、石生桃畑でみんなと合流したとき、やり遂げた、という達成感でいっぱいになりました。

 

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 みんなで並んで、朝日を見ました。肉眼でもわかるくらいに、朝日の昇るスピードがはやかったです。人間には計り知れないような大きな存在によって、地球は動いていて、私たちはその中の小さな一部である、そんなことを感じました。

 達成感と喜びをいっぱい感じながら、古吉野へ戻り、そしてまた、音楽室でギターに囲まれて眠りにつきました。幸せな気持ちで心がいっぱいです。

(えつこ)

 

***

 

 池上桃畑に植わっているポポーの花が咲き始めています。ポポーの花は、とても不思議な色や形をしています。よく見て見ないと、周りの背景に同化して、花が咲いていることに気が付きません。でも、気が付くと、たくさんの花が見えてきて、ポポーの木の周りだけ、違う場所に来たかのような気持ちになります。

 

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 ポポーの花は、最初、黄緑色をしていて、だんだんと熟してくると、ワインレッドのような深い赤色に変わっていきます。大きさも、どんどん大きくなります。何枚もの肉厚な花びらが重なっていて、それらが全部下を向いて、枝からぶら下がっているのだから、スカートのような形に見えます。枝に、たくさんの妖精たちが宿っているように見えます。

 

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 ポポーは、落葉樹で秋に大きな葉を全部落とし、枝だけの状態で、冬を越しました。そして、長かった冬も過ぎて、暖かくなってやっと、葉を出し始めました。今は、葉芽が息吹いて、茶色の、ビロードのようなふわふわした小さな葉を付けています。

 今年は、去年よりも、10日ほどはやく花が咲き始めました。今年は、新しい試みで、人工授粉をしました。
 ポポーは、一輪の花に、雄しべ、雌しべを持っています。半球型に雄しべの群があって、その真ん中に、雌しべの柱頭が、数本突き出している、というような形です。

 それでは、人工授粉が要らないのではないか、と思いますが、調べてみると、雄しべよりも雌しべの方が先に熟して、雄しべから花粉が出てくる頃になると、雌しべの機能が果たさなくなっている、という情報がありました。

 何品種も周りに植えていたら、花が咲く時期もずれて、自然に受粉が出来るかもしれないけれど、池上桃畑のポポーは、ぽつりと1本植わっているだけなので、人工授粉をすることにしました。

 

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 ポポーの花を見てみると、一輪一輪の花に成長段階があって、色や形も様々でした。だんだん赤く、大きく花を成長させるにつれ、内側でも雌しべや雄しべが、熟していくのだと思うと、面白いなあと思いました。

 本当に、下から花を覗いてみると、色が淡い花と、色が深く濃い花とでは、雄しべが全然違いました。咲いてからほんの少ししか経っていない花の雄しべは、黄緑色をしていて硬いです。でも、後者の咲いてしばらく経った花の雄しべは、茶色くなって、ぎゅっとくっついて硬かった雄しべのひとつひとつが、ポロポロと粉になっていました。ちょうど、咲き終わったヒマワリが種の集合体になった、というような感じです。手で触ると、簡単に崩れて落ちていきました。茶色い雄しべのなかには、ちゃんと黄色くて本当に細かくて小さな花粉が無数に入っていました。

 ポポーも、誰に何を教えてもらわなくても、ちゃんと子孫を残すための工夫が組み込まれているんだなあと思いました。ポポーの花に、大変な装置を見たような気持ちになりました。

 

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 熟した花から花粉を取り、集まったところで、綿棒を使ってまだ先始めの花の雌しべにポンポンと付けていきます。ポポーの雌しべは、花びらに守られて奥まったところにあるので、綿棒を花の奥まで入れます。

 花粉が小さくて、肉眼でちゃんと雌しべに花粉がついているかどうか、確認するのは困難です。そのため、どうか花粉が付いて、実がなりますように! と願いながら、一つひとつ、進めていきました。
 花の咲いている期間、晴れも続いているので、きっと、願いは届いたはず。それを信じて、実が生るときまで、待とうと思います。

(りな)

 

***

 

 第1鉄塔上、開墾野畑、カチカチ小……この3つの畑と言えば、一昨日の畝立てツアーにてまえちゃんたちと畝を立てた、思い出の場所。今日は、3つの畑に3種類の野菜を定植しました。お父さん・お母さん指揮の元で! ハウスから、畑へ、野菜のお引越しデイ。ワクワク・ドキドキです。

 今回は、苗の宅配を、まりのちゃんとせいこちゃん。牛肥の宅配を、さきちゃんとえつこちゃん。草敷き用の草の宅配を、まよちゃんとまちちゃんが。畑へ必要な物を届けてくれました。普段とは3種類と規模が大きいため、畑道具配達の子がいてくれました。

 

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 1枚目の第1鉄塔にお引っ越しするのは、キャベツ。住人さんが畑に届くまでに、急いで家つくり。畝に、三角ホーを使って穴を開けていきます。今までは、クワを使って穴を開けていたのですが、三角ホーの場合、先がとがっているので、軽い力でサクサクと穴を開けることができました。
 半分以上開け終えたところに、届きました。軽トラ一杯に積まれた牛肥に、キャベツの苗。これらが届くだけで始まるぞ! 頑張ろう! という気持ちが増した気がしました。

 残り全ての穴開けをする人、牛肥を穴に入れていく人、それを追いかけて苗を置いていく人に分かれました。
 牛肥を一掴み、たっぷりと穴の中に入れることで、苗が活着して根が下まで伸びて行ったときに、養分をすぐに吸収することができるため、より元気の良い物ができるそうです。

 

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 私は、初め苗置きをさやちゃんとペアになって行いました。私が苗のトレーを持ち、さやちゃんが置いていってくれたのですが、さやちゃんが反復横跳びのように横に跳ねながら、ポンポンとテンポよく苗を置いて行ってくれたので、凄く苗置きのスピードが速くできたと思いました。お父さんたちも、「凄く速いなぁ」と言って下さって、嬉しかったです。
 トレーの上に苗がなくなって、次のトレーに移ろうと取りに行こうとしたら、お母さんが私たちの目の前に新しい苗のトレーを持って来てくれていて、笑顔で渡して下さって、お母さんの心遣い、やさしさがとても温かくて、嬉しかったです。

 

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 苗を置いているときには、既に穴開けを終えた子が、私たちを追いかけて定植を始めていてくれました。
 定植に入る前には、お父さんから植え方を教えて頂きました。牛肥の上に軽く土をかけ、苗を置き、3回ほどで上に土をかけて固定させて完了。お父さんが見本を見せてくれたのですが、その手元が速くて、かつきれいで分かりやすく、気合が入りました。

 お父さんの手元のイメージをしっかりと頭に残して、実践。スピード感を意識して行っていきました。一つひとつのキャベツがとっても立派で、大きくて、他の野菜に比べて比較的植えやすく感じました。先に1畝の定植を終えた子が、既に最後の草敷きに入っていて、私が1畝終えた頃には、草敷きも全て終えることができていて、その速さにとても驚きました。

 

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 1枚の畑を、1時間で草敷きまで終えることができたのです。
「いかに、効率よくスピード感を持って行なうか。移動時間をなるべく短くして、手の動きを止めることがないようにすること」
 そうお父さんが教えてくださいました。穴あけ、肥料入れ、苗置き、定植、草敷きの工程を一つひとつみんなでやって、終わらせて、次へ行って、と行なうのではなくて、穴開けの後ろから、肥料入れ、その後ろから苗置きと、追いかけるように行なっていくことの、効率の良さを身を持って実感しました。キャベツのお引越し完了!!

 

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 続いては、開墾野畑にレタスがお引越し。今回はお母さんが指揮をしてくださいました。キャベツに比べて、小さなレタス。ほんの少し細やかさはあるけれど、流れは同じ。1人1畝で、穴を開けて、その後から、肥料入れ、苗置き、定植、草敷きと、追いかけるようにして行なっていきました。お母さんがタイムコールもして下さって、時間を意識して行なうことができました。レタスもあっという間にお引越し、完了! またまた、1時間でできました。

 

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 残るは、カチカチ小へスイートコーンのお引越し。レタスの反省点で、株間が狭くなってしまった部分があったということ。最後は、株間も意識してきっちりととり、穴を開けることにしました。スピード感を持つけれど、丁寧に……最後も流れは同じ、お父さんに教えて頂いたことを意識して、効率よく! スピード感を持って!

 

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 スイートコーンはちょっと最後が特別。軽トラに積んでいた、残りの牛肥を筋状にたっぷりまいて。さらに、みんなでジョウロを使って水やり。定植の時点でこんなにもたっぷりと栄養をあたえることができて、お父さんも、「これは大物になるぞ」と定植のときにたっぷりと栄養を与えることの大切さを教えてもらいました。

 

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 スイートコーンのお引越しに掛かった時間は、1時間! すべての野菜を1時間ずつで終わらせることができました。17時の鐘の音楽とともに、最後はスイートコーンポーズを撮って、みんなで笑って、達成感一杯で終えることができて嬉しかったです。

 半日とは思えないくらい、たくさんの定植をして、充実した時間でした。キャベツにレタス、スイートコーン、全ての段数を今日にて定植し終えることができました。
 今年の夏がとても楽しみ! もう少しで、トマトやなす、ピーマンも、畑へ!?

(ももか)

 

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〈藤井先生の木版画教室がありました! 「古吉野百景」を題材に、滝川や、橋の欄干、池の水面にうつる木立、栗山の牛、那岐山を版画にするために、今は彫りの工程を進めています〉
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〈藤井さんが、「カギ見当」「引きつけ見当」の彫り方や、彫刻刀の選び方、使い方を教えてくださいました〉

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