◇なのはなファミリーで見られる花◇
〈第55回〉
『オータムポエム』
畑一面、真っ白に霜が降り、冷気が頬を刺す朝、
ギシギシという足音と一緒にハウスに向かう。
ドアを開くと、何ということだ。
凍えた世界など無縁のように、
黄色い可憐な花で、君が暖かく迎えてくれるのだ。
葉と茎には瑞々しい緑をしたたらせ、
黄色い花の付け根には、
まだよまだよと蕾がたくさん控えている。
春を先取りした夢の空間に、
硬く閉ざした心がほぐされていく。
青菜が少ないこの1月、2月に、
採っても、採っても、
いつまでも収穫を許してくれる君。
そしてひとたびフライパンに載せたなら、
どんな隣人とも仲良く調和し、
口福をもたらしてくれる。
その甘み、食感は、アスパラガスに例えられるが、
青菜の少ない厳寒期に、
この緑したたるビタミン感は、
ほかの何よりも生命力を甦らせてくれるのだ。
それにしても、この真冬に、
いや譲ってこの春に、なぜ「秋の詩」なのか。
それは34年前にこの名前で品種登録した
「サカタのタネ」の開発者だけが秘めているポエムなのだ。
写真:さとみ
文:たけひと
撮影場所:吉畑ハウス