【11月号⑯】「1つの美しさを作る時間 ―― 版画になった新前田橋 ――」 まなか

 「古吉野百景」をテーマに作品作りに励んできた木版画教室。ついに、第二弾のメンバー全員の作品が完成しました。
 今期のメンバーはほとんどが小学生のときぶりに彫刻刀を持つ版画初心者でした。
 藤井さんに一から教えて頂いて、版画の楽しさに触れることができました。

 まず選んだテーマで下絵を描きながら、どんな風に表現するのか、どんな構図にするかから考えます。
 私が選んだテーマは、かちかち畑のそばにある「新前田橋」。
 ガードレールと橋の骨組みの面白さが出せたらいいなと、このテーマを選びました。

 この下絵と構図を考える工程が一番苦戦して悩みました。ああでもない、こうでもないと苦戦しているときに、先生がアドバイスを下さったり一緒に考えて下さったことが有難くて、いい作品にしたい! という気持ちで悩む楽しさを味わえて、とても嬉しかったです。

 




 

■光と影

 下絵が出来たら版画板に写して彫りに入ります。
どこを彫っていくかが分かるように、板に直接色をつけていきました。今回は白と黒の二色なので白い部分を彫っていきます。
 その時に藤井先生が、
「光が当たっている場所と影になっている場所を考えて、あえて彫り残しを少しつくると表情がつくよ」
 と教えて下さりました。

 ぐっと集中していると時間があっという間に過ぎていきます。
 板を彫る匂いや音、手の感覚が気持ちよくて、彫り進めていくのが楽しかったです。

 アスファルトの凹凸の表現や、細かい葉はルーターを使って彫らせてもらいました。ルーターは、先が大きく丸っぽいビットから、ブラシみたいなビット、ほそーい針みたいなビットもあって、眺めているのも面白いです。
 初めて使う道具にどきどきしながら彫っていくのはとても楽しく、先生の手元を見させて頂くのもとても勉強になりました。

 刷る工程では絵の具の溶き方や、粘度の具合、板に乗せる量、その後にはばれんのの当て方や場所々々に合った刷り方のポイントを教えて頂きました。

 試し刷りで、板から紙を剥がして絵が現れた瞬間、「ああ、版画になった!」とすごく感動しました。
 工夫した部分がちゃんと表現出来ている場所もあって、それがまた嬉しかったです。
 刷りは思っていたよりもずっと難しくて驚きました。
 先生がお手本で刷って見せてくれると濃淡が簡単に付けられるように感じるのですが、自分で刷ると全然思い通りの色にならなくて刷るのは技術や勘が必要なんだなと思いました。

 

 

 何枚か刷っていくとだんだん、
「ここをしっかり濃くしたい、ここはちょっと薄く霧がかったみたいなのが綺麗だったなあ」
 と、どんなふうに刷りたいかの理想が出てきて、調整しながらするのが面白かったです。

 彫りも刷りも悔しいところがたくさんあるのですが、先生にも刷り終えたものを見て頂いて、自分でも、「これならいいかも!」と思える作品を完成させることができて本当に嬉しかったです。

 振り返るとあっという間だったのですが、木版画を通して一つの美しさや見せたいものを作り出すという経験をさせてもらえたことが有難かったです。
 何よりも藤井先生が作ってくださる空気が優しく、とても温かくて毎週の楽しみでした。
 また機会があればチャレンジしてみたいです。
 ほかのメンバーの作品と一緒に、またみんなに見てもらえたら良いなと思います。