【10月号⑫】「躍進! シャインマスカットとオーロラブラックの収穫」 よしみ

 
シャインマスカット、初収穫の日

  
 なのはなに来て、私は産まれて初めてブドウを育てるという経験をしています。

 なのはなには、古畑にシャインマスカットの木が一本、池上ブドウ畑にオーロラブラックの木が四本あり、この秋、それらの木からたくさんのブドウを収穫することができました。

 以前ブドウを担当してくれていた子から私がブドウの担当を引き継ぐことになったのは七月のことです。そのときのブドウは、まだ粒が緑色で収穫までにはまだまだの状態でした。それまで私はブドウの知識は全くなく、そのときの自分にとってブドウは、収穫されたものを食べるという受け取る側の人間でした。

 でも、ブドウの担当を引き継ぐことになったときから、初めてブドウが収穫されるまでの手入れについて知ったり、なのはなのシャインマスカットとオーロラブラックの木の様子をじっくりと見るようになり、今は自分の頭の中のどこかに必ずブドウが居るほど、私はブドウに夢中です。
  
  
 七月始め、袋がけの手入れを行いました。自分にとって初めてのブドウの手入れです。お父さんに相談し、桃の袋がけに使っている袋を少し譲っていただきその袋をシャインマスカットとオーロラブラックの房にかけることになりました。桃用の袋なのでブドウにとっては少し小さく、袋をかけるときに底をやぶって無底の状態にしてかける作戦で行いました。

 一房一房、大切に大切に袋をかけていると、ブドウたちが可愛く見えてきて、ブドウへの愛情が湧いてきたのを今でも覚えています。
  
  
 七月中旬に入り、ブドウの果肉が柔らかくなり始めるベレーゾン期という期間になり、ブドウから香りがし始めます。そのため、池上ブドウ畑には獣対策として木の外周に害獣ネットを張りました。昨年、収穫直前のオーロラブラックが獣に食べられてしまったという悔しい経験を踏まえて、以前担当していた子が早めにしっかりと獣対策をしたいと資料に書いてくれてあって、早めに対策を打てたことがありがたかったです。

■愛おしい百七十房

 八月に入り、収穫期の九月に向けてオーロラブラックは完全着色し、香りもどんどん強くなっていきます。シャインマスカットも最初はすごく小さかった粒が、八月には一粒の大きさが直径四センチほどになっていて、収穫が近づいていくに連れて自分の気持ちも緊張と共にワクワクもしてきました。

 しかし、この夏の異常な暑さに野菜だけでなく、桃やブドウなどの果樹にも大きな影響があったなと思います。日中の気温が三十五度以上の日が当たり前のように毎日続き、雨も数えるほどしか降りませんでした。ブドウの粒も日中は温度があがっていて、木になった状態のまま煮え上がってしまうのではないかと心配したほどです。

 でも、そんな自分の不安を救ってくれたのは、あゆみちゃん、のぞみちゃん、そしてその二人の可愛いキッズ達です。晴れが続く期間は、週に二日くらいのペースで池上ブドウ畑のオーロラブラックの木にあゆみちゃんやのぞみちゃんたちがたっぷりと水やりをしてくれました。

 この厳しい暑さの中、ブドウが無事に収穫まで結びついたのはあゆみちゃんたちの水やりの効果だと思います。キッズたちを連れて、いつも楽しそうに水やりへと向かって行くあゆみちゃんたちの姿がとても素敵でした。収穫近くまで定期的に水やりをしてくださっていて、本当にありがたかったです。
  
  
 収穫直前になってくると、毎日ブドウに会いに畑へ通いました。袋を少し開けてチラッとのぞき、「おはよう」「今日も元気だね」「頑張るんだよ」などとブドウに声をかけながら熟れ具合などの状態を見る時間が私にとって幸せで、毎日の楽しみでした。気持ちが落ち込みそうになっても、ブドウのことを考えていると、「落ち込んでられない!」と、踏ん張ることができたなあと思います。ブドウにたくさん救ってもらいました。
  

  
 そして九月、初収穫をしたときは忘れられません。最初はブドウの収穫基準が難しくて袋を開けては閉じ、また開けては閉じと、悩みながら繰り返していました。

 特に、シャインマスカットは熟れても黄緑色なので、微妙な色の変化や粒の柔らかさなどを見ながらどれが収穫基準を満たしているのか考えるのが、とても難しかったなあと思います。「これだ!!」と決めた一房を剪定ばさみで収穫し、そのブドウの重さがズシッと手に乗った感覚が今もすごく残っています。初収穫ができたとき、本当に本当に嬉しかったです。

 収穫したシャインマスカットを食堂に飾ると、それを見たみんなが次々に「綺麗!」「大きい!!」と言ってくれました。みんなが喜んでくれて、みんなの笑顔を見て私もとても嬉しくなりました。
  
  
 今年、シャインマスカットは約百房、オーロラブラックは約七十房ほど収穫することができました。収穫したブドウは、稲刈りの日のみんなのお弁当に入っていたり、イチジクなどと一緒にガラスのプレートに綺麗に盛り付けられて食卓に登場したりと、みんなと一緒にいただけて嬉しかったなあと思います。

 オーロラブラックは、収穫までの手入れをするなかでいろいろと失敗や改善点なども見つかりました。手入れで見つかった改善点を、これからへ繋げていきたいです。

 収穫が終わったら、お礼肥やりや冬に向けての手入れなどもあります。継続して手入れができるように、これからも大切にブドウをそだてていきたいです。