実りの秋。夏の猛暑が落ち着き、少しずつ涼しく、作物にとっても過ごしやすい天候になってきました。夏野菜も、収量を盛り返し、イチジクや、クリ、ブドウなど、秋の美味しい果物も収穫が始まります。
その中に、ポポーという果物もあります。数年前、池上桃畑の奥に、盛男おじいちゃんが育てていたポポーの苗を一本植え付けて下さりました。その、一本のポポーの木は、今は背丈二,三メートルもある、とても大きな成木に成長しています。私は、それまでポポーという果物の存在があること自体、知りませんでした。でも、なのはなに植わる一本のポポーの木と出会って、たくさんポポーの魅力を知りました。
なぜ、ポポーは知名度が低く、あまり見ないのかというと、収穫してからの傷みが早く、流通に乗りづらいからのようです。けれど、とても育てやすくて、耐暑性も、耐寒性もあるので、岡山の、この地で育てるのにはとても適しています。
バンレイシ科で、北米が原産地のポポー。葉の一枚一枚が手のひらを広げたぐらいに大きくて、丸い形をしています。幹は、ごつごつしていなくて、むしろつるつるとしていて、本当にポポーの木の周りにいると、その周りだけまるで空間を切り取られたかのように、違う世界に来たような気持ちになります。
ポポーの実は、そんな大きな葉に隠されて、生っています。熟れてくると、木に近づいただけでもとてもトロピカルな、甘い香りが強く漂ってきました。
ポポーの収穫基準は少し特殊で、落ちた実を収穫します。自然と、熟れるとヘタのところがぽろっと取れて落果する仕組みができていることが、とても面白いなあと思いました。樹の下がちょうど人が入れるようなアーチになっていて、潜り込んで収穫するのがとても楽しいです。
ぷっくりと膨らんで、薄緑色のポポーは、それほど惹きつけるような華やかさはなくて、これは本当に果物か!?
と思うような見た目をしています。けれど、中を割ってみると、綺麗なオレンジ色をした果肉がぎゅっと詰まっています。
果肉は、ムースのように柔らかくて、マンゴーとリンゴとバナナを足して割ったような、南国のトロピカルな味がします。甘くて、香りが高く、とても美味しいです。
■人工受粉の効果は……
今年から、初めての試みで五月の花が咲く時期に、人工授粉を行いました。ポポーの花は、一つの花の中に雄しべと雌しべの両方が備わっています。しかし、雌しべのほうが先に熟れて、そのあとに雄しべが熟れるので、雄しべの葯から花粉が飛び出す頃には雌しべの役目が終わっている、ということがあるのです。そのため、ポポーの受粉には、ミツバチ等の昆虫や、自然の風の助けが必要になります。
人工授粉の効果が、どう収穫に繋がるのか、とても楽しみにしていました。花が終わった後、結実している実が去年よりも少し多いことを感じていました。実の数が多いことによって、一つひとつの実の大きさは、若干小さくなったけれど、去年は高い位置に実が付かなかったのが、今年は付いていたり、人工授粉の効果が現れていることを感じて、新たな発見でした。
収穫は、去年よりも十日ほど早く、もうポポーの収穫は終盤に差し掛かっています。これからの手入れも欠かさず、成長を見守っていきたいです。
また、収穫した実から種を採り、発芽している苗がいくつもあります。まだ背丈十センチほどでとても小さな苗だけれど、時間をかけて、着実に元気に大きくなっていることがとても嬉しいなと思います。小さなポポーの苗たちが、これからの明るい希望を見せてくれています。