「本気で、全て自分ごとにして動く」 りな

9月8日

 今年の夏を通して桃の作業に入り、桃メンバーのみんなと一緒に乗り越えた桃のシーズンが、本当に自分にとって価値があって、大切な時間だったと思いました。
 これまでも、私は桃の作業に入ることがたびたびありました。これまでは、私は言われたとおりの事をちゃんとする、働きバチのようになってしまっていたと、感じました。言われたことがちゃんと出来なければいけないと思い込んで、必死に出来る人になろうとしてきました。だから、それは、本質的な目標ではなくて、あくまで自己中心的な、利己的な頑張り方になっていました。

 なのはなの桃のレベルを下げてはいけない、と保守的な気持ちになって、いつも緊張し、不安がずっとありました。本当には楽しめていませんでした。
 でも、7月の半ばの頃、桃メンバーのみんなと聞いたお父さんとお母さんのお話で、気持ちがガラッと変わるのを感じました。
「極端な言い方、今年、桃が全滅したっていいんだよ」
 そのお母さんの言葉が、ものすごく印象に残りました。加納岩白桃の糖度が低くて、きちんとした甘い桃が一つも出なかったときでした。
 桃が全滅したっていい、その代わり、自分の出せるベストで桃に向かおう、そう思いました。
 本当に大切なのは、周りからの評価だったり、保守的なものではないと思いました。

 何のために桃をしているのか。お父さんがこのお話の時に、「新しい価値を自分たちで生み出していくんだ」と話してくれました。
 これからも絶対に良い桃が採れ続ける、という保証も、安定もないです。だからなんだと思いました。保証はないけれど、本気で、今の精一杯で仲間と一緒に良い桃を作ろうとするならば、失うものは何もないと思いました。自分たちが正義だと思うこと、クリエイティブだと思うことを、作っていきたいと思いました。桃チームが2チームに分かれて、前代未聞で先に付けられた道はないけれど、自分たちで新しい道を切り拓いていくんだと思うと、勇気が湧いてきました。後に続く人の道になると信じることができました。

 桃作業でこんな気持ちになったのは初めてでした。桃メンバーのみんなと一緒に、大変なことばかりだったけれど、乗り越えていく時間が、心の底から楽しくて、幸せだと感じました。
 そして、自分の未熟さもとても痛感しました。これまで自分は桃作業をしてきたけれど、何を見てきたんだ、とこれまでの自分に残念感もありました。でも、ここからは、ちゃんと記録に残して、後になっても知りたい情報がちゃんとあって、誰が見ても分かるようにしたい、と思いました。それが、今の自分に出来る役割だと思いました。

 桃メンバーのみんな、一人ひとり得手不得手がそれぞれあって、私もたくさんできてない所もあるけれど、みんながお互いに理解して、カバーしあっている空気がありました。一人ひとりが全力で、良い桃を届ける、という一つの目標に向かっているから意見がぶつかり合ったときも、どんな時も必ず良い方向に向かう、と信じることが出来ました。個人で何が出来る、出来ない、ではなく、チームを底上げする一部の材料として、居られたことが本当に嬉しくて、力が湧きました。
 夜の8時までかかったネット掛け、台風でネットが剥がれたこと、本当にたくさんのことがあったけれど、それも全部、桃メンバーのみんなと、一人ひとり欠けてはならない一パーツとして、一丸となってできたからだなあと思います。
 この先も、明日もどうなるか分からないけれど、今この瞬間、桃メンバーの一員として、もっと良くしようと攻めの気持ちでいられること、それが私にとって、桃メンバーみんなにとってすごく大切なことのように感じます。

 昨日のミーティングでお父さんが、「本気で、全て自分ごとにして動く」ことが自分たちが回復していくすごく重要なキーワードであることを教えて下さりました。
 私は、この気持ちを桃や、桃メンバーのみんなから教えてもらいました。
 そして、今もこれからも、ずっとずっと桃から教えてもらった気持ちを忘れてはいけないと思いました。
 今日、桃が全収穫されて少し寂しい気持ちもあります。けれど、これで終わったわけではなくて、剪定や防除、これからの手入れも待っています。
 そして、桃以外にも稲刈りや冬野菜も始まります。
 どんな役割になったとしても、周りのみんなと協力して、より良くしていく。それは終わりというものはなくて、自分が生きている限りずっとです。それが自分を生かす原動力となり、きっとまだ見ぬ誰かの続く道になるのだと思います。
 その覚悟を持って、勇気を出して、これからも過ごしていきたいです。

 読んでくださりありがとうございました。おやすみなさい。