【8月号⑫】「スモモを守るため 一段上がったら世界が変わった ―― 愉しさ感じるスモモのネットかけ ――」 どれみ

 スモモの収穫を桃チームから引き継いで、豆チームでスモモを見ていくことを、リーダーのまえちゃんが教えてくれました。
 収穫基準、選別などのことを、あんなちゃんや桃メンバーから教えてもらい、スモモ畑に久しぶりに行きました。スモモ畑ではメスレーという品種の実がとれる時期でした。
 スモモの畑には『メスレー』の大きい樹と小さい樹がありました。私が行ったときは、小さい樹から大きい樹の実がとれ始めるちょうど変わり目の時期でした。

 

 

 日に日に収量も伸びてきて、三人で午前いっぱいかかっても、収穫で精一杯になってきました。その日の夜、まえちゃんに相談し、次の日は六人で収穫することになりました。
 その日、六人でメスレーの大きい樹をまんべんなく見ることができました。軽トラの荷台が、スモモが入ったカゴでいっぱいになりました。
 スモモを鳥や夜蛾から守るため、スモモにネット掛けがしたい。念願のネットがけの日がやってきました。毎回苦戦するスモモのネットがけの難しさを教えてもらい、お父さんに来てもらいました。
 午後三時半から始まったネット掛け。用意した脚立は十二段が三台と、十段、八段と六段がそれぞれ一台でした。

 

■引っ張って壁超えて

 スモモ畑に着き、お父さんと、どの樹にネットを掛けるか確認して、はじめにネットを掛ける樹で一番大きい『太陽』という品種のネット掛けから始めることにしました。
 スモモ畑の道側にネットを広げ、脚立を立てていくことになったのですが、そこから私たちの、ネットがけとの奮闘が始まりました。
 まず、『太陽』の樹が斜面に近く、脚立を立てるとき、どの向きで立てたらいいのかが難しいこと、十二段の脚立の高さに上ることも、高い脚立の上で踏ん張りネットを引っ張ることも恐さがあり難しいこと、いろんな格闘が各メンバーにある中でのネット掛けでした。

 

 

「気遣わなくて良い枝を気遣って引っ張っていたら終わらないぞ、もっと引っ張るんだ、どんどん引っ張れ」
 私は頭の上で枝に引っかかっているネットを引っ張り続けました。
 高さに不慣れなこともあって、もうこれ以上引っ張ったら脚立から落ちるんじゃないか、力をかけるのがこわい、と思ったときにお父さんの声がきこえると、
(お父さんが言っているからまだ力を出しても大丈夫)
 と思えました。
 そう思いながら必死でネットを引っ張っていると、引っかかっていたネットをたぐり寄せることができて、終わったとき、これだけ脚立の上で力を出しても平気なんだと思えました。
 自分の中でひとつ壁を超えた感じがしました。終わったとき、緊張がとれて達成感を感じて笑えてきました。

 

ネット掛けを終えたスモモの樹

 

 『太陽』にネットをかけている間中、各ポジションについているメンバーにお父さんの監督の声が響いていました。
 脚立を立てる位置、ネットの引っ張り方など、すぐに軌道修正をしてくれるお父さんの声がなかったら、ネット掛けはこの日には終わらなかったです。やっている最中、汗が玉のように流れてきて、それでも必死でかけてネットが掛かったときは嬉しかったです。(大変だったね、やっと終わったね)と、『太陽』のネットをかけ終えて、木陰で一休憩していると、ちょうど池上桃畑の手入れをしにきたあんなちゃんも来てくれて、スモモの樹の話をしてくれました。そして、メンバーが減っていたためあんなちゃんがもうひとり助っ人を連れて来ますと言ってくれてしなこちゃんがメンバーに加わってくれました。

■スモモのために

 あと残り三本のスモモの樹のネット掛けが残っていました。お父さんが見て下さって一枚のネットでまず二本の樹に一気に掛けました。
 こちらは背丈が先ほどの『太陽』に比べて低く掛けやすくスムーズに進みました。
 最後、『ソルダム』という品種の樹が残っていたのですが、この樹が『メスレー』の樹と隣り合わせで、少し被った形になっているためネットもかけにくそうでした。
 お父さんが見てくれて、樹と樹が重なっていない方向からネットをかけること、葉が茂り実も鈴なりについているので実が落ちないように丁寧にかけていこう、と『ソルダム』ネット掛けのプランを話してくれました。

 まず、ネットを掛け始めるところに対照に脚立を立てて、先端がわからなくならないように捲し上げて持っておいて、大体上がったら、次の人が脚立を移動させて受け渡し、渡した人が脚立を移動させて受け渡していきました。
 はじまる前は掛けるのが難しそうだなと思っていたけれど、お父さんのプランに沿ってネット掛けが進み、十五分でネットが掛かり、ほっとしたし嬉しかったです。
 終わったあと、ネットがけメンバーで、「脚立に上るのこわかったよ」「足が震えてたよ」と、皆同じ気持ちだったんだねと笑いあったことも、そこを乗り越えスモモにネットを掛けるために力を合わせて掛け終えることができたことも、仲間の存在が嬉しかったです。
 お父さんが、
「じゃあ、僕戻るね」
 と言って帰るのを見送りながら、お父さんとネット掛けができたことが嬉しかったし、楽しかったなと感じました。

 スモモのネット掛けは格闘の連続だったけど、お父さんとネット掛けをして私の中で、大変なイメージから、楽しさおもしろさを感じるものになりました。