「全力で楽しんで、桃を」 あんな

5月15日

◆アサギマダラ
 今日の午前、17aの加納岩白桃を摘果しているとき、桃の葉と実の隙間に止まって羽を休めているアサギマダラを見かけました。とてもびっくりして、お父さんが好きな蝶々だ! と思って、「すごく綺麗な蝶々がいる」とみんなに声をかけて、一緒に見ました。綺麗でした。アサギマダラがここら辺にいるなんて、嬉しかったです。これまで、桃畑で、黒い大きなアゲハ蝶がヒラヒラ飛んでいるのはよく見かけていたのですが、アサギマダラを見たのは初めてでした。ただ、ここら辺に本当にいるのだろうか? と不安だったので調べたところ、「旅する蝶々」ということで、ここら辺にいてもおかしくないのだと思いました。
 アサギマダラの透き通るような色が繊細で、とても綺麗だと思いました。羽を広げて休んでいて、よく見えました。誰かが、「ああ、カメラを持ってない」、と残念そうに言って、私がスマホを持っていると言ってスマホを向けたら、ヒラッと飛んでいってしまいました。

◆桃の作業
 今日も1日、朝から、桃の摘果を進めました。朝食前はあまり晴れていなかったと思うのですが、朝食後に行くと、太陽が出てきていて、強い日差しに、桃の葉と実を透かして見ると、本当にキラキラと輝いていて、生命力に溢れていて、誰ともなく「綺麗……」と言って、みんなで綺麗だねと言い合って、自然のみずみずしさを感じられたひと時が、幸せでした。私は今の時期は、1年の中で一番好きかもしれません。どこを見ても、緑が鮮やかで、陽の光に輝いて、若々しい生命力に溢れていて、とても心が癒されて、満たされるのを感じます。特に、桃の樹の、今の時期の生命力溢れる初々しい感じが、とても心躍るというか、高揚感が増してきます。

 昨日、ハウスミーティングで、大相撲が始まったことや、四股を踏むというのが、大したことないような動作に見えてとても重要なことだということ、人間の筋肉の大部分が下半身にあるから四股を踏むみたいな基本的な動作が大事なのだというお話を、お父さんがしてくださったのが印象に残っていて、今日は、みんなで四股を踏んでみよう、と思っていました。
 午前のはじめに、お父さんが昨日してくれた話を簡単にして、「みんなで四股を踏んでから始めようと思います!」と言うと、みんなが笑顔で乗ってくれて、喜んでくれて嬉しかったです。
 みんなで声を揃えて、四股を踏むと、気合が入って、メンバーの気持ちも一つにまとまって、集中力も入った感じがしました。

 今日も引き続き2巡目を進めました。26aの浅間と白鳳、17aの白鳳と夢白、池上のなつごころと夢白、奥桃の白鳳、なつごころをしました。途中で、加納岩の3巡目(仕上げ摘果)を入れました。もう早生は硬核期に入ってくる頃だと思うので、先に済ませておきたかったためです。これで、はなよめ、日川、加納岩は、もう収穫まで摘果しないことになります。
 
 あと2巡目は、夕の子桃畑の全部と、山桃畑の全部の樹です。
 明日か明後日には3巡目に入れるのではないかと思います。

◆懸念
 加納岩白桃の葉が乏しく元気がないことの原因がわかりました。
 調べたところ、品種の特徴で、摘果が遅れると、展葉や新梢伸長が劣る傾向が強いということで、それだと思いました。摘蕾が甘くて摘果が遅れたことの影響が、加納岩はそのように出たのだと思います。

 今年の重大な反省点としては、摘蕾が甘くて1回目の摘果が遅れたことです。
 その結果、4月末~5月始めに、1巡目が一気摘果のようになってしまって、急激な養水分の変動が起こってしまったと思います。既に、第一次核割れが結構多く出てしまっていて、それが変形になっていたりします。変形果を割ってみると、一次種割れの亀裂が茶色く修復されつつある状態になっています。
 また、その一気摘果と同時に、5月に入ってから降水量の多い雨が降ったことで、余計に成長のバランスの崩れ方が大かったと思います。
 今、硬核期直前ですが、既に、実を割ってみると、硬くなる前の種の部分が、縦にピシッと割れているものが多くて、(それは割るときにできてしまったのかもしれないし、私が神経質になりすぎて気にしているだけかもしれないのですが)、それは第一次種割れのあとにできた亀裂で、割れたばかりで綺麗で、ここ1~2日でできたように見えます。だから、今回の雨で、という感じがします。その割れが今後、どのように影響するのか、見届けなければいけません。
 これから硬核期に入るので、そのときに固まるのかもしれないし、種割れになるのかもしれないし、今の段階ではわかりません。

 次回の反省・改善点としては、霜を恐れずに摘蕾2巡目を10センチ間隔に残すくらいにしっかりすることと、霜対策をもっと火点を増やして万全にすることと、1回目の予備摘果を時期を逃さずに厳しくやることたと思います。それで変形果が少なくなったら、そういうことだと思うし、加納岩の元気のなさもかなり改善すると思います。

 摘果に関しては、前年までの反省点を踏まえて行ってはいます。摘蕾から徐々に減らしていくという、タイミングは万全にはできなかったけど、最終着果数の管理は、かなり改善できています。去年は、全体的に多くつけ過ぎて、早生品種は、かなりの小玉になりました。それ以降の品種は、特に清水など、硬核期後に摘果をかなりすることになってしまい、コンポートをいっぱい作った、というふうでしたが、今年はそういうことにはならないと思います。なるとしたら、大玉が多くなる、種割れが多くなる、というふうだと思います。
 かなりいいふうに着果管理できたとして、それが、今年の天候とかこれまでの生育状況と合わなかったら、もっと多くつけておいたほうがよかった、というふうに品種によってはなると思います。だから、とても難しいところです。
ベストを尽くしてやるしかないし、最善を尽くします。

◆桃に関して思うこと
 昨日、ハウスミーティングで少し話させてもらったのですが、最近、桃について思っていることは、「ずっと心配し続けてあげないと機嫌を損ねちゃう」ということです。気難しいというか、女王様気質というか、お父さんが言っていた「わがまま娘」というか、世話がやけます。ですが、そこがまた可愛いと思います。
 品種によって、畑によって、訴えが違って、言ってくることが違うから、てんてこ舞いになってきます。「ずっと心配し続けてあげないと」、というのは、具体的に言うと、虫、病気、防除、元気、葉色、葉の茂り、変形、肥大速度、手入れのタイミング、草刈りのタイミング、草丈、天候、雨、雨量、土質、肥料、気温、風、など、いろいろです。この畑のこの品種がすごく調子がいいと思っていたら、他の畑で元気が全然ないとか、変形ばかりになっているとか、毛虫が出てるとか、草がすごいことになってるとか。

 自分の最大限で心配し続けてあげないといけないんだな、というふうに思えてきています。自分の最大限で心配し続けてあげて、ようやく、気が済んでくれる納得してくれる、というような感じがします。最大限で心配しつづけるのは大変だから、心配し続けるというのができていなかったです。もしかしたら、自分の最大限でも足りないのかもしれないけど、まだ最大限ではないと思っていてひとまず最大限でやってみるしかないという感じです。
 
 お父さんは、カルチャーの語源はアグリカルチャー、農業から来ていて、教養がないとできないのだと話してくれました。そのことを誇りに、農業、桃に取り組みたいです。教養がないなら、足りないなら、身につけて、ちゃんと農業、桃をしていることを誇りにしたいです。

 かっこつけて書くわけではなく、私は本当にまだまだだと思います。桃のことを、全然、まだ解っていないです。経験もそれほどないです。私が知らないことを、長年、桃作りに携わっているベテラン農家さんは、経験として知っていることが、桃への理解が、とてもあるだろうと思っています。桃をやらせてもらっていて、桃の品質などで評価をもらってはいるけど、私の知識は、まだ上辺のところに留まっていると思います。例えば、変形が出るのはどういうときなのか、そういうことが、隅々まで説明できるようになりたいし、肥培管理に関して、こういう生育状況ならこの肥料をこれくらいの強さで入れるといいとか、そういうことを深い知識と説得力で語れるくらいになりたいです。薬のことも、結構わかってないながらにやっていて、迷ってばかりになっているけど、本当は一つひとつの薬の特性と効き方を解って、防除のタイミングも薬も迷いなく判断できたらいいと思うし、虫への理解も浅いです。天候、気温、雨と生育の関係を考えて的確な判断をすることも、教養だと思います。
 そこまでには、まだまだ遠いけど、教養をつけていきたいし、全力で楽しんで、桃をやっていきたいです。