4月9日(日)「桃畑の戦士たち、特別な夜 & 歌にも力を込める『ザ・グレイテスト・ショー』」

4月9日のなのはな

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 桃を守る戦士となって、桃畑を駆け回った一晩は特別な一晩でした。

「今夜、桃の霜対策があります。もし、霜対策に行ってもいいよという人がいたら集まってください」
 霜対策の前日、あゆちゃんが放送をしてくれると、20人以上のみんなが目をきりっと輝かせて勇敢に集まりました。

 桃の樹も年々大きくなり、今年からは桃畑も増えて規模が大きくなったため、今回は1晩13人体制で霜対策に行きました。

 今年初めての霜対策ということもあり、初めは緊張していたのですが、こんなにもたくさんの人が集まって、人数がいてくれると思うと心強く感じたし、桃が霜の被害に遭う可能性がゼロではないことを思うと緊張したけれど、それと同時に何か大切な任務を任されたようなワクワク感がありました。

 長ぐつとジャンバーをセットして、桃の霜対策メンバーは音楽室に布団を敷いて、出動に備えます。

 

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 AM:2時

 外へ出ると、真っ先に目に飛び込んできたのは、空に浮かぶ天然の懐中電灯でした。そう、3日前が満月だったこともあり、お月様はまだまん丸としていて、私たちの足下を静かに照らしてくれます。
 私たちも、ちさとちゃんから預かった魔法のペンダント(首かけの懐中電灯)を下げて、いよいよ、夜の桃畑の度へ出発です。

 

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 今回の霜対策は、あんなちゃんチーム、あゆちゃんチームと二手に分かれて行い、私はあんなちゃんチームで畑を回りました。
 私たちの担当する畑は開墾26アールから始まり、17アール、新桃畑、池上の桃畑、奥桃畑、古畑の6枚。あゆちゃんチームは、山の桃畑と、夕の子畑、石生の桃畑を回ってくれます。

 出動した2時の時点でもう、車の窓ガラスがうっすらと凍り付き、辺りの雑草や花がキラキラとしていて、霜が降りていました。
 霜対策1巡目は点火です。

 日中の時間にあんなちゃんを中心にみんなと準備・設置をした一斗缶。一斗缶の中には、あんなちゃんが配合を考えて、米ぬかや籾殻、かんなくず、油などが調合された資材が入っています。
 その、かんなくずにチャッカマンで火をつけると、パッと火がついて、みるみるうちに缶の中が真っ赤に染まりました。

 

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 初めは2チーム合同で26アールと17アールの点火をしたのですが、真っ暗だった畑に、灯がともると、とても幻想的でした。

 開墾26アールは斜面になっていることもあり、畑を移動するとき、上から畑を見下ろすと畑の中に転々とオレンジ色の光がともっていました。それは、『夜の太陽』という名前がぴったりなくらいに明るくて、美しくて、小さな太陽が集まって桃を守ってくれているようでした。

 

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 霜対策に行く度に感じることなのですが、桃を守る1つひとつの光の中に、命が宿っているような、桃を守る精霊が宿っているような気がして、それらを感じながら、私も桃を守る戦士となって畑を駆け回るのがとても楽しいです。

 桃の霜対策は真夜中と言うこともあり、何か、物語の世界の一部のような、映画のワンシーンのような、本の中の一場面のようなスリリングさと冒険心、好奇心を感じるのですが、それが「おはなし」の世界ではなく、今見ている現実の世界だと思うと、(私たちの生きる世界には、こんなにも美しい世界が広がっているのか)と嬉しい気持ちになります。

 1巡目の点火は私たちの担当する畑を30分もかからずに回ることができました。桃の霜対策では、桃を霜から守るために火を絶やしてはいけないため、スピード感も大切です。

 そのため、畑に着いたら誰が何を言わなくてもそれぞれが走って火をつけてもらい、全ての缶に火がついたら、それぞれが走って車に乗り込み、その「私たちに与えられた役割を果たす」という責任を持てる喜びを感じました。

 天下が終わり次第、また開墾26アール畑へ戻り、今度は日の出まで火を絶やさないために資材を攪拌して回ります。

 

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 攪拌は竹の棒を使って混ぜるのですが、これから4時間、缶の中にある資材を燃やし続けるため、最初はさっくり混ぜていきました。それもみんなでやるとあっという間で、2巡目も30分ほどで回ることができました。

 2チームで霜対策を回ると、全9枚の畑を30分コースで回ることができてとても早いし、1巡して帰ってきてもまだ一斗缶の中の火は燃え続けてくれているので安心しました。

 また、4巡目では全ての缶に油を足していき、長くしっかり資材が燃えるようにと、あんなちゃんが考えてくれました。

 あんなちゃんやあけみちゃんが油を入れてくれると、弱くなっていた火がパッと燃えて、輝いているのが何かの魔法のようだったし、油が資材にしみこんで、資材がちゃんと燃えるよう、攪拌していくのも大切な任務を任されているような気持ちでした。

 

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 あんなちゃんの油を入れるタイミングの読み方とか、これまであんなちゃんを中心にみんなが積み上げてきてくれた霜対策の流れや、資材の配合がすごいなと改めて感じました。私も霜対策をする中でも、あんなちゃんの姿から霜対策の手順や大切な点を学ばせてもらっているし、改めて桃は繊細で、霜対策などは大変だけれど、その分、みんなの愛情が込められているのを感じました。

 桃の霜対策では火をたくことで空気を動かし、霜が降りないようにするのですが、1巡して帰ってきても、火が燃え尽きていると言うことはなくて、桃が守られているのを感じました。

 私たちも、集中していると寒さも忘れてしまったし、動いているとほんのり汗ばむくらいで、畑を駆け回るのが楽しくて、気持ち良かったです。

 6巡目。
 開墾17アールの一斗缶を攪拌した後、ふと東の空を見上げると、空が明るくなってきていました。

 あんなちゃんにそれを伝えると、「もうすぐ、終わりが見えてきたね」と笑いかけてくれて嬉しかったです。

 

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 夜の間は空の明るさも、ただ暗いだけでそれほど時間の流れを感じなかったのですが、朝方になるにつれて、数分ごとに空の色が変化していきました。

 6巡目の最後、古畑に着いたとき、あんなちゃんが、「空のグラデーションが綺麗だね」と声をかけてくれて、桃の樹の陰の向こうに、ピンク、黄色、青と空に虹が架かっているような景色に力が湧いてきました。

 そして、ラストの7巡目に入ります。時計の針は4時50分を指していました。
 その頃にはもうすっかり、空も明るくなっていたのですが池上の桃畑に行ったとき、あんなちゃんが、「今、スモモの畑がマイナス5.5度です」と教えてくれました。

 以前、あんなちゃんから、「気温は夜間よりも朝方の方が冷え込みがきついから気をつけなければいけない」と教えてもらったのですが、やっぱり朝の5時過ぎが一番寒いんだなと思い、気持ちが引き締まりました。

 

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 そして、一番最後は、石生の桃畑に行き、あゆちゃんチームに合流できてとても嬉しかったです。

 同じ時間にスタートしてから、時々、あゆちゃんが運転する車にすれ違ったものの、一緒に作業をすることはなく、久しぶりの再会でした。(久しぶりと行っても、3時間ぶりくらいですが)

 そして、本日の霜対策のミッションは完了です。
 でも、もう1つ、霜対策に欠かせないのは、「みんなで日の出をみること!」。

 なのはなに来てから、桃の霜対策に行かせてもらう度に何度も日の出を見させて貰っているのですが、みんなと夜の桃畑を駆け抜け、桃を霜から守った達成感を感じながら見る朝日は、何度見ても感動的です。

 

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 あゆちゃんが、「ななほちゃん、カメラ貸して」と言ってくれて、みんなと登っていく朝日を見ながら、手をつないでバンザイで写真を撮りました。

 隣の子がつないでくれた手がとても温かくて、力強くて、お互いに言葉はなくても同じ気持ちなのを感じました。

 

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 日の出は私の想像を遙かに超えてぐんぐんと昇っていったのですが、隣にいたあゆちゃんが、「太陽が昇っているように見えるけれど、地球が回っているんだよね」と話してくれて、そう思うと、また違った美しさを感じました。

 車の中でも、「私たちも桃を霜から守るけれど、究極の所は太陽や自然に助けられるんだね」と話していたのですが、改めて太陽の力、ありがたさを感じました。

 太陽が昇るだけで、霜で凍り付いていた草木たちは溶けて、太陽の光を浴びて朝露が輝いていました。

 夜中、畑を回っていたから身体は疲れているはずなのに、このままずっと、こうして太陽を見ていたいくらいに、目の前に広がる景色は美しくて、心を動かされました。

 

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 桃畑を駆け回り、桃を守り抜いた一晩。
 こんな風に、みんなと喜びや達成感を感じられたり、自然の美しさや尊さを感じる経験をさせてもらえたことが嬉しかったです。

 霜対策が終わってからも、日中にみんなと一斗缶の回収などをして回ったのですが、その時にはもう空は青く、今朝まで気温がマイナスだったのが信じられないくらいに、汗だくになりました。

 また、今夜も霜が降りる予報がでています。また明日、今夜霜対策に行ってくれた子達から霜対策物語を聞かせてもらえるのが楽しみだし、安全に霜対策ができたらいいなと思います。

 今年も甘くて美味しい桃ができますように、これからも桃の手入れを頑張っていきます!

(ななほ)

 

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〈9日の日中には、次の霜へ向けた燃料資材を、大人数で用意しました!〉

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〈今晩は桃の木の他にも、スモモや梅のそばで火を焚くため、一斗缶を増やす必要がありました。ハウスの建設作業で工具を使い慣れたメンバーが、すぐにディスクグラインダーで一斗缶の蓋をカットし、切り口を金槌で整えてくれました〉

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〈各畑に、完成した一斗缶を運び、設置して夜に備えました〉

 

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 大人数で練習している、『ザ・グレイテストショー』のコーラスを、ゆいちゃんやせいこちゃんから教えてもらいました。原曲の中には、ライオンの鳴き声や、たくさんの人のコーラスなども入っていて、とても迫力があります。ダンスは、20人以上で踊るので、私達一人ひとりがコーラスを歌ったら、それだけでもさらに演奏は大きく、ダイナミックになります。一人一つの楽器になったつもりで、コーラスも全力で歌います。

 

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 せいこちゃんがピアノを弾いて、音を取ってくれて、ゆいちゃんが、実際に歌って、私達に説明をしてくれました。ソプラノの旋律は、主旋律よりも1オクターブ高く歌うところがたくさんありました。

 これ以上出ない、と思う高い音を、当てることがとても難しくて、声が思わぬところで裏返ってしまったり、喉が涸れたようになってしまいます。ゆいちゃんが、腹筋を使って声を出すことを教えてくれて、みんなと何度も何度も、高い音を当てる練習をすると、すこしずつではあるけれど、声が出るようになってきて、とても嬉しかったです。

 

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 サビの部分は、ボーカルと同じ主旋律で、歌詞を歌います。みんなで歌うと、原曲以上に大迫力になって、後ろから聞こえてくるみんなの歌声に背中を押されているようでした。アルトとソプラノが合わさって、とても綺麗な和音に聞こえた時に、曲に深みが出て、世界がもっと広がっていくようでした。

 歌詞カードを見ながらではあるけれど、みんなと一緒に、1曲通してコーラスを歌うことが出来るようになりました。全員の歌声が合わさると、大音量で大きなパワーになって、図書室を越えて、もっともっと遠くまで響いていきそうだと思いました。その中の1パーツになって、声を重ねていると、とてもエネルギーに満ちた気持ちになれたし、勇気が湧いてきました。コーラスが、明るくて、希望が満ち溢れたグレイテストショーの曲の魅力を、さらに大きくしているように思いました。

 

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 コーラスを歌いながら、少し頭の中で、ダンスを踊っていることをイメージしました。すると、コーラスが入っている部分と、ダンスの決めポーズ、力を込める部分が一致していることに気が付きました。
 コーラスを歌うと、気持ちも外に開けて、さらにダンスが踊りやすくなりそうだと思いました。

 グレイテストショーのコーラスを、ダンスメンバー全員で、歌うことが出来ることが、とても嬉しいです。激しくて速いダンスではあるけれど、コーラスも演奏を引き立たせる重要な要素です。踊りながら歌えるように、これからも練習していきたいです。

(りな)

 

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〈籾摺機倉庫では、山小屋キャンプへ向けて、恐竜の制作も進みました〉
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〈須原さんが、型紙をもとに、骨格をカットしてくださいました〉
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〈骨盤や脚、肋骨などのパーツが着々と増えていきます〉

 

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〈昼食のお吸い物にはワラビが入っており、山小屋ウォークラリーでの山菜集めも、より楽しみになりました〉