【5月号⑬】「ウドの香り、両腕いっぱいに抱えて」 ほのか

 

 毎週、ギターと版画を教えてくださる、私たちの大好きな、藤井さん。
「ウドがもうとれるけん、誰か来てええよ」
 と、言ってくださり、ウドを藤井さんのお宅に行き収穫させていただくことになりました。今回は、版画教室メンバーの私と、スタッフのかにちゃんで行くことに。そのお庭は、ミツバチをはじめ、柿やブドウ、タラの芽など、様々な植物でいっぱいで、まるで植物園のようでした。まず玄関近くに数あるうちの1つ目の巣箱があり、そこには小さな日本ミツバチたちが群がっていました。

「今は暖かい時期やから、手を入れても刺さん」
 と、にこにこしながら藤井さんはミツバチの巣箱に手を入れていました。これが寒い冬の時期は気が立っていて少し刺激を加えるだけでもおそってくるのだそうです。私は蜂が怖くて、刺さないとわかっていてもなかなか近寄れませんでした。蜂の巣箱を通り過ぎて、お庭の奥のほうまで、道をすすんで歩きました。ウドのあるところまで行く途中にも、様々な木々や植物が並んでいて、思わず目を奪われました。案内されてたどり着くと、まず聞こえたのは「ワンワン!!」という元気な鳴き声で、その方を見るとそこに大きな黒い犬がいました。甲斐犬で、お名前は「ゆず」ちゃんといいました。初めて見る私たちを歓迎してか、警戒してか、「ワンワンワン!!」と吠え続けるゆずちゃん。そのたびに藤井さんは「これ、ゆず、わかったから」となだめて、ゆずちゃんが「フン……」とわかったようなため息混じりの声を出すのが可愛くて、笑みがこぼれました。

 

■ウドの収穫

 その横で、ついにウドとご対面。ウド? 名前は聞いたことあるけど、実際にはどんなものかよくわからないな、というのが私の本音でした。ウドは、仕切りのある籾殻の中に生えていて、背の高いものは自分の胸下くらいまでありました。

 

 

 まずは桶で、籾殻を仕切りの向こう側に寄せて、ウドの根元をかきわけました。ただ籾殻を移動させているだけなのに、とても暑くて汗をかきました。
 根元が見えたら、ナイフで根元を「ざくっ」と切って収穫しました。ナイフの向きがよくわからずに、ずっと峰のほうで切っていたので、なかなか切れないなあと思っていたら、「それ反対や」と笑顔の藤井さんに言われてやっと気づきました。自分の失敗も、笑って受け止めて、優しく導いてくださる藤井さんの大きな優しさが、安心するし大好きだなと感じました。

 何か所か、ウドの生えているところをまわって、合計25本も収穫させていただきました。かにちゃんと2人で抱えても、1つの束が「ずしっ」と重量感のある重みで、「こんなにいただいちゃっていいのかな……」と2人で話していました。

 帰りは、蜂がいなかったので崖の下のほうの道を通って行きました。日本庭園のように石がきれいにちりばめられた道を進んで歩きました。帰る前に、お宅の下のほうの川がある道にめずらしい葉があると教えてくださり、見に行きました。そこには、とてもいい香りのする、しそに似た葉が生えていました。それはうど菜で、天ぷらにしたりするとおいしいのだそうです。もうその川は埋め立てるので、無くなる前に移植されたそうですが、その葉の種をどんぶり2杯くらいまいたのに、出てきたのは1、2本だったことを教えてくれました。

「あと何年かしたら、もっといっぱいになるから、そしたらなのはなのみんなで食べられるのにな」
 とおっしゃっていて、そのお心遣いがありがたく、これからもなのはなのことを好きでいてくださるんだと思って、嬉しくなりました。本当に、ウドを収穫させていただきありがとうございました。