【6月号⑮】「水やりへの情熱と楽しさ」 りの

 みんなで播種をしてから十日後に、稲の苗の水やりをしました。十日しか経っていないのに、苗の背丈はかなり伸びていて、すくすくと成長している様子が、すごくかわいいです。グラウンドに広げた育苗場の半面で七百五十リットルずつ、水やりをします。全面で、五百リットルのローリータンク三杯分となると、二時間ちょっとで、かなり時間がかかります。もう少しスピード感を持ってやりたかったのですが、エンジンポンプの水圧を高くし過ぎるとヘッドが外れるので、あまり圧を上げることができません。稲が倒れてしまわない程度の水圧でなければいけないので、意外に繊細さが必要だと思いました。ペアの人が、タンクに水の補充をしながら水やりにまわるチームプレー作業で、すごく楽しいです。

 水やりをしていて困るのが、水をやる配分がわからないことです。多めにやったつもりでも、タンクの残りを見るとだいぶ余っていることが多いです。どれくらいのスピードで、どれくらいやるのか、とペアの人を見ると、かなり時間をかけてやっていることに気づきました。私は、もし水が足らなくなったらどうしようという不安でかなり控えめな水やりになってしまいます。でもそれでは稲だけでなく野菜には全然足らないんだなと感じました。お母さんが以前、集合の時に、
「水やりで水をやりすぎることはない。多すぎるくらいがちょうどいい」
 と教えてくださって、本当にその通りだなと実感しました。

 

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 稲は数日で背丈がぐんと伸び、びっくりするくらい成長が速いです。水やりをしていると稲がキラキラと輝いて喜んでるようでかわいくて癒されます。播種のときの、たくさん種籾が入ったトレーは、針山のように稲がみっちり生えています。

 水やりをしながら、「このトレーの苗たちはどんな調子だろう」と観察するのが楽しいです。紫黒米は、苗の時点で少し紫がかっています。稲の時点から違いがあることにびっくりしました。稲たちは少し見ないうちにあっという間に成長するので、水やりのたびに成長を見られることがワクワクします。

 稲の水やりでは補充が必要なので、補充の人との連携が必要です。私が水やりしたときには、まちちゃんが補充に回ってくれました。いつもナイスなタイミングで補充に来てくれて、お礼を言うと、ニコっとして華麗に去っていくまちちゃんがかっこよかったです。

 途中でエンジンポンプのエンジンをかけられなくなってしまった時に、まちちゃんがちょうど来てくれて、エンジンをかけてくれたり、予備のホースバンドを貸してくれたりと、スーパーマンでした。他の人と連携を取りながらの作業で、連携がかみ合うとこんなにも楽しいのか、とすごく嬉しく感じました。

 

新しい散水ノズルで、水やりのしやすさと効率が上がりました

 

■野菜の水やり

 ナスの水やりに入らせてもらいました。ナスは水不足で、カラカラで危機的な状態でした。私は、どれみちゃんとペアでエンジンポンプ二台を使い、水やりをしました。私が水やりをしたときはホース回しがかなり大変でした。畑が縦長なので、ホースを畑の奥まで伸ばしながらの水やりは意外に重労働です。大変ですが、終わった後の達成感は大きくて、すがすがしいです。しかし、お父さんが発案してくださった水やり法が、すごく画期的でした。畑中央にタンクを置いて、そのタンクに一台のエンジンポンプで水を入れ、もう一台で水やりをする方法なのですが、そうするとホースの引き回しは、畑の半分の距離で済み、隅々まで水が行き渡ります。それを思いついたお父さんが、本当にすごいと思いました。私はまだ試せていないのですが、その方法で水やりをするのがとても楽しみです。

 

■水やり作業で楽しいこと

 私は今まで一人でエンジンポンプをかけることができなかったのですが、どれみちゃんが丁寧に教えてくれたおかげで、一人でエンジンポンプをかけられるようになったのが嬉しいです。最初はうまくかからなくて、どれみちゃんが、
「チョークを閉めた状態で三回くらいロープを引いてから、そのあとにチョークを開けてエンジンをかける」
 ということを教えてもらいました。私はチョークを閉めてエンジンをかけていて、それだとかかりにくくなることを教えてもらって、次からそうすると、ちゃんとかけることができました。一人でもできるようになることは、すごく嬉しいし、作業も楽しくなりました。

 水やりをしていて、水が土にしみこんでいくのを見ていると、とても気持ちがいいです。それに、最近はとても暑いのですが、水やりをしていると涼しくなります。どの作業でもそうなのですが、効率のいい方法を考えながらの作業は楽しいし、やりがいを感じます。