【6月号⑫】「第十四回 ツツジ祭への出演」 のん

 

「ツツジ祭りで、『キラー・クイーン』をやりたいね」
 ある日の車内、ダンス部での会話。先日、なのはなのバンドメンバーが演奏してくれた曲のなかに『キラー・クイーン』があって、それを聴いて、ダンス係のなかに湧き上がってきた気持ち。
 五月五日は、武蔵の里の鎌坂峠ツツジ園にて、ツツジ祭りが開かれ、なのはなファミリーは毎年、演奏とダンスで出演をさせていただいています。前回と同じ演目ではつまらない。何か、新しいものがなくちゃ。車の中で、衣裳替えの都合を考えつつ、帰ってからツツジ祭りまでに確保できる練習時間で実現できる曲を考えて、曲目を組み立てながら帰りました。

 帰ってきた次の週末にはフルマラソン大会。次はキャンプ。そしてツツジ祭り。毎週末に待っている、なのはな内外のイベントに向けての準備、待ってくれない畑の作物たち。そんなドタバタな日々の中で、練習を少しずつ進めていきました。

 今回の目玉は、なのはなとしては久しぶりに、けれど全員が新しいメンバーで踊る『キラー・クイーン』。そして、なるちゃんがソロで踊る『トゥ・マッチ・ラブ・ウィル・キル・ユー』。『キラー・クイーン』はもともと四人のダンスでしたが、今回はあけみちゃんをセンターにゆずちゃん、よしみちゃん、ななほちゃんと、のんの五人に構成を変えて、踊ることになりました。

 『キラー・クイーン』は、私がアセスメントに来た時に見た曲で、初めてアセスメントに出たときや、初めて外のイベントに出たときに、みんなと並んでコーラスを歌った、思い出の曲です。アセスメントで見た曲というのは自分にとっては特別な曲で、それを踊らせてもらえることはすごく感慨深い、嬉しいことでした。

 けれども、イベント盛りだくさんの日々は、感慨に浸る時間を与えてはくれません。なるちゃんが前に踊っていたことがあった、ということで、なるちゃんが振り入れしてくれることになったのですが、如何せんお仕事組さんです。キャンプ前の二日間、なるちゃんが出勤する前で、七時十分から三十五分までの時間でサビの振り入れ。キャンプが終わったら、その朝の時間と、なるちゃんが帰って来てくれた夜の時間で振り入れ。

 

 

 練習期間は、ほぼ一週間の朝晩のみ。一週間で振り入れをした曲は、今までもあった! と鼓舞し合いながら練習を進めていきます。みんなとなら、できない気がしないから不思議です。

 この曲のダンスの特徴は、なんといってもステッキを使うところ。ステッキ型のキャンディーの形そのものの、棒の端に傘の持ち手のようなつるんとした柄がついたステッキ。『ホワイト・フラッグ』を踊ったときにも思ったけれど、何かをもって踊る、というのは、大きく華やかに見せる効果がある一方で、揃えるのが非常に難しい。けれど、それがそろった時には圧巻の迫力が出せる。そんな諸刃の剣のようなものです。

 ステッキさばきはなかなかに難しくて、途中は真ん中を持って回したり、柄に持ち替えて振り回したり、ポーズを取ったりするのですが、この、瞬時に持ち替える動作が曲者でした。回すには真ん中を持ちたいけれど、振り回すときにはダイナミックに見せたいからなるべく端を持ちたい。ステッキの握り加減で、シュッとうまくスライドさせられるかどうかが決まってくるのですが、その加減が絶妙に難しかったです。

 

 

■武蔵の里へ

 けれども、新しいダンスは魅力的ならどんなに難しくってもわくわくするもので、今までの自分になかった動きや身体の使い方を習得していくのは、楽しい作業でした。

 どんなに、大変と思ったことでも、そんなこんなで間に合ってしまうのが、なのはなファミリー。本番二日ほど前の、衣裳を着てのリハーサルも、全員そろって踊りきりました。

 本番前日には場ミリに行きました。ツツジ祭りの会場は、数あるイベントの中で、個人的には、景色がきれいで一番好きな会場です。しかし、やや変型のダンススペースのなかで、フォーメーション移動が複雑で人数が多い『ホワイト・フラッグ』を踊ることもあり、ダンス係のみんなと内心ドキドキしていました。

 

 

 けれど、場ミリで会場に行ってみたら、なんということでしょう。実行委員の方々が、ダンススペースに緑色のマットを敷いてくださっていました。幅が約一メートルのマットを、平行に七枚ほど敷いてくださっていて、それに平行にダンススペースをとることができました。一番のネックだった、フォーメーション問題の不安がかなり減りました。控えテントの周りなども、私たちが移動しやすいよう筵を敷いてくださってあり、お祭りを催されている方々のお心遣いが、とても有り難かったです。

 そうして場ミリを進めて、出捌けの練習もして、帰ってから、そのスペースを想定して体育館で出捌けの練習をもう一度してから、本番を迎えました。

 本番当日は写真に映えそうないい天気で、少し斜め横からの日差しを浴びて、明るいけれど、目もぱっちり開けていられる、最高の環境でした。

 

 

■ステージ本番

 一曲目は『バッド・ハビット』。一気に、会場の空気を引き込みます。

 二曲目は『ハウ・ファー・アイル・ゴー』。少人数の四人の編成で披露しました。その間に着替えて、三曲目は『ウリリ』。コミカルで、ちょっとコケティッシュなフラダンスですが、実は腰の動きが、どのフラダンスよりも難しいのです。ファーラップ、という腰を回す動きがふんだんに使われていて、この、腰を動かす基礎練習は、四月のイベント時にも毎晩行なっていました。それから、振りを忘れることはなくても、定期的に練習を続けていました。

 四曲目はロングランになってきた、『ビューティフル・ピープル』。新しいダンスメンバーを迎えての披露になりました。今回のイベントに出るために、急ピッチで振り入れと練習を進めてくれて、初出演が叶いました。

 

 

 五曲目は『オ・ヴァイ』。この間にも急いで着替えをします。六曲目は、ウィンターコンサート以外では初めて演奏する曲、『セニョリータ』。とってもかわいい猫の衣裳で、ラテン風の曲調に合わせて踊ります。衣裳は、コンサートでは猫を模してファーなどを纏った仕様でしたが、衣裳部さんが、夏バージョンの、ちょっとさっぱりした仕様にしてくれました。

 三人で踊る曲で、うち二人がお仕事組さんなので、朝食前や夕食後に地道にそろえて練習してきました。

 

 

■『キラー・クイーン』

 そして、七曲目は『キラー・クイーン』です。ゆずちゃんと私はそのまま猫の衣裳で、加わる三人は女王様のような衣裳で。あゆちゃんのMCを聞いて、この曲を踊る気持ちを作ります。初めてだろうとなんだろうと、曲が始まれば、もう、なのはなが見せたい、聴かせたい曲の一部にならないといけません。

 ステッキの持ち替え、苦手な振り、移動、ドキドキポイントをそうとは悟らせないようにクリアしていきます。最後の八のカウントでステッキを大きく振って捌けていくときには、演じ続ける意識を持ちつつ、やり切った嬉しさを感じました。

 感じた瞬間には着替えテントに向かって走って、八曲目の『トゥ・マッチ・ラブ・ウィル・キル・ユー』の間に急いで着替えます。るりこちゃんがヘルプをしてくれるので、安心安全です。『ホワイト・フラッグ』の衣裳に早変わり。

 ラスト九曲目は『ホワイト・フラッグ』。なるちゃんが『トゥー・マッチ』から着替えてくるのを待ちます。全員で待機していると、全員の緊張感、気持ちの張りがそろっていることを感じます。

 

 

■ステージを終えて

 この曲はフォーメーション移動が複雑で、全員が自分の役割を全うする気持ちと、お互いを思う気持ちを同時に持っていないと成功しないダンスです。自分は絶対にあそこに行く、○○ちゃんをここに届かせる、そういう意識を同時に持っていないと全員がたどり着くことはできません。そういう綱渡りが何か所もあります。

 だからこそ、それが成功したときにはみんなが嬉しいし、みんなが嬉しいから自分の嬉しさも何倍にもなる、そんなダンスです。今回も成功だったと思います。

 

 

 今回のステージ、一曲一曲、どの曲をとっても、お客さんの向けてくださる反応があたたかかく、お祭りのスタッフの方々が歓迎してくださるなかで、表現する場を頂けたことが、とても有り難かったです。

 夏のイベントの幕開け、新メンバーでの『キラー・クイーン』『トゥー・マッチ』の初披露も、ツツジ祭りですることができ、嬉しかったです。