【6月号⑪】「あのナナフシに届いて! 吹き矢大会」 ななほ

 ここは、昆虫たちの集まる秘密の住処。今日は、そんな昆虫たちの世界へ少しだけ、おじゃまします。
 なのはな山小屋キャンプ、最終日は……。
 キャンプには欠かせない、お父さんの大好きなあの遊び。そう、吹き矢大会です!

 

 

 吹き矢大会では、ノーマル戦・名人戦・団体戦の全三種目を楽しみました。
 一種目めのノーマル戦は、花火の絵の的を狙い、高得点を目指していきます。中央には、黒・青・赤・黄・緑の五重の円形をした的があり、高得点の緑色は直径二センチです。

 一回戦目は、的までの距離が五メートル。二回戦目は七メートルの距離から矢を吹きました。
 ちょうど、この日は、卒業生のちかちゃんご家族が、なのはなファミリーへ里帰りしてくれていて、私は水色チームで、ちかちゃんご家族と試合に臨みました。

 と、その前に。お父さんから、吹き矢を命中させるためのアドバイスをいただきました。
「吹き矢をするときのポイントは二つ。一つは筒から息が漏れると矢が飛ばないため、しっかりとマウスピースをつけて空気が漏れないようにすること。二つは、的は片目で見るのではなく、両目でねらいを定めること」

 お父さんが最後に、
「そして、最大のポイントは目で見るのではなく、心の目で見ることです!」
 と言っていて、的に集中し、心の目を使って、どうにか、的に当てたいと思いました。

 私はこれまで、吹き矢は得意でもなければ、苦手でもないといったところだったのですが、なのはなファミリーのイベントで吹き矢で遊べば遊ぶほど、吹き矢が上達していくことを感じています。

 第一試合目。筒にぴったりとはまる矢をセレクトして、いざ、勝負。

 

 

■心の目で当てる

 吹き矢は人によって、吹くときのフォームや利き目なども違うのですが、私が一番好きなのは、「的の真正面に両足を開いて立ち、両目で的を見て打つ」というやり方です。

「一発目、どうぞ!」
 五メートルと聞いた時は、初めはすごく近いように感じたのですが、実際に吹き矢を吹くラインに立ってみると、緊張して的がどんどん遠くなっていくように見えました。けれど、〝パシュ!〟
 三発の矢が無事に的に当たり、高得点を獲得できました。

 最初に、吹き矢は心の目で見ること、と書きましたが、これは本当にそうなのです。というのも、山小屋ウォークラリーでゲストとして参加してくださった相川さんやあきなちゃんは視力がそれほど良くないそうなのですが、スウィートスポットという高得点的に一発で当てるほどの名人。

 なのはなの子の中にも吹き矢名人はたくさんいて、やはり、吹き矢は視力がいいか、目でよく狙いを定めるかよりも、「心の目で当てる」というほうが大切なようです。

 そして、七メートル地点に行くと、思っていた以上に遠く、緊張しました。けれど、狙いを定めるときにジャストな位置より少しだけ上に筒の先端を向けることで、ちょうどよいくらいの位置に飛んでいきました。

 今回の花火の的は、上手く、中心の緑ゾーンにあたると「カーン」と音が鳴る仕掛けが作られていたのですが、あゆちゃんやせいこちゃんなどは何度か「カーン」と音を鳴らしていて、そのたびに歓声が上がりました。

 

 

■緊張の名人戦

 二種目めは名人戦。名人戦は各チームから二人ずつ出場することになっていて、私は今回、名人戦にも出場させていただくことになりました。一人はカブトムシリーグ、もう一人はクワガタリーグで試合を行い、二つのリーグの決勝戦に勝ったチームと、カブトムシ対クワガタリーグでさらに勝ち上がったチームには、各三百点が加算されるという、ボーナスの大きいこの試合。

 名人戦出場に選ばれたからには、何としてもチームのみんなの為に勝ちたい。そう思い、試合に臨みました。が、私が戦うことになったのは、りゅうさん、あゆちゃん、お父さんという誰が見ても名人にふさわしいような技量を持った方々。ものすごく緊張が高まりました。
 しかし、名人戦は通常の的ではなく、的に貼った風船をどちらが早く割れたかで競います。その為、「まずは的に当たればいい」と思い、気持ちを引き締めました。

 五メートル、七メートルに続き、十メートル地点からの戦いとなる名人戦。
 結果的に、あゆちゃんには負けてしまったのですが、お父さんとりゅうさんにはなんとか、勝つことができて嬉しかったです。

 

 

 そして、カブトムシリーグ対クワガタリーグの最終名人戦では、あゆちゃんとせいこちゃんが出場しました。
 両者とも、この時点で三百点は獲得しているのですが、さらに三百点を獲得できるかは、この試合にかかっています。あゆちゃんもせいこちゃんも相手のチームなのですが、決勝戦では、どのチームの人もあゆちゃんとせいこちゃんの試合に集中し、自分のことのように応援し、盛り上がりました。

 

 

 緊張の一発目は、二人とも惜しくも場外。それから、何発かを打ち続けても、中々、中心の風船には当たらず、あゆちゃんもせいこちゃんも「え~」と叫びながら、二人で顔を見合わせて笑っていました。しかし、二人とも名人だけあって、あと五ミリ内側だったら当たっているというようなスレスレに矢を撃ちつつ、なかなか勝負が決まらなくて、観客の私たちも冷や冷やして試合の結果を待ちました。

 そして、「バン!」。どっちが当たったのかと目を凝らすと、二人とも当たっている。そんなこともありましたが、最終的にはあゆちゃんが風船を割り、六百点を獲得しました。見ていても心臓がバクバクする名人戦。これは、吹き矢大会に欠かせないワクワク感を味わせてくれます。

 

 

 

■永禮さんと大逆転

 最終種目は、ハイリスク・ハイリターンの団体戦。
 どうして、ハイリスク・ハイリターンなのかというと、体育館の壁いっぱいに描かれたトンボやミツバチ、バッタにカマキリ。そして、いかにも細くて狙うのが難しそうなナナフシに、何匹もの怪しげなゴキブリたち。そう、高得点のナナフシの周りや、各昆虫の高得点スイートスポットの付近には、マイナス五十~百点となるゴキブリたちが生息しているのです。

 さあ、どこを狙うか。
 団体戦の頃、ちょうど体育館に永禮さんが来てくださり、「僕もどこかに入ります!」と言って私たちのチームに入ってくださりました。そんな、スペシャルゲストの登場は、私たちのチームの救世主となりました。
 的はバッタやチョウなど的が大きいものは十~五十点。トンボやミツバチは百点で、その中でも急所にあたれば三百点。そして、ナナフシは身体が三百点で急所が五百点という高得点です。

 けれど、やはりトンボやナナフシの周りには何匹ものゴキブリが。私は思い切って、トンボを狙うことにしたのですが、永禮さんはさらにハイリスクをとり、ナナフシを狙いました。
 結果は……。

「やったー。トンボの急所にあたった!」
 私が三百点をゲットしたことに喜んでいたら、隣で永禮さんが満面の笑みを浮かべられていて、よく見ると、永禮さんがナナフシの急所に当てているではありませんか。私たちのチームは、永禮さんのお陰で一試合で千点近くを獲得し、一気に総合順位が入れ替わりました。

 

 

 その後も永禮さんが二回ほど、ナナフシに当ててくださりました。また、時には永禮さんの姿を見てナナフシを狙ったら、すべてゴキブリにあたり、マイナス点になるチームもあったり、何人かの子がナナフシの急所に当てて喜んでいたりし、各チームのハイリスク・ハイリターンの作戦が見られました。

 集中して自分自身を信じて向かう個人戦。チームの代表として緊張感のある空気の中、白熱した名人戦。そして、もはや矢が吹き終わるまで結果が分からない、波乱万丈の団体戦。やっぱり、吹き矢が大好きだと思いました。

 昆虫の色鮮やかな吹き矢の的もとても素敵だったし、吹き矢大会が終わったら、色々な子から、
「週三回のソフトバレーに、時には吹き矢があってもいいよね」
「毎月七日はセブンブリッジ大会だけれど、毎月、何日かには吹き矢大会をしたいね」
 という声も上がりました。

 そのくらい、吹き矢はとても魅力的で面白いのです。