6月号①「五味の楽しさ なのはなキャンプ2025」 なお

 

 山小屋キャンプ二〇二五。場所はもちろん、なのはなファミリーが始まった盛男おじいちゃんの山小屋で、ゴールデンウィークの五月三日から六日にかけて行ないました。キャンプ初日、乗用車やトラックにキャンプ用品を載せて、朝からみんなで山小屋へ向かいます。駐車場から坂道を上がっていきます。卒業生のみんなが建てた芳子庵、森盛庵が右手に見え、さらに続く坂の上を見上げると、山小屋の姿が目に入ります。

(帰りました)

 自然と、この言葉が出てきました。山小屋は私にとって、帰ってくることができる我が家です。山小屋はいつも、「おかえりなさい」とあたたかく迎えてくれます。大切なこの場所を使わせてもらい、みんなと思い切り遊べることが幸せだなと思いました。

 

■豊かな楽しさ

 

 今年のキャンプのテーマは、ちょっと不気味で、でもどことなく愛らしさがある『妖怪』。ウォークラリーや基地作り、吹き矢では山の中にはユニークな妖怪たちが次々に現れました。妖怪と山の自然がマッチしていて、不思議な妖怪の世界が山の中にできあがりました。そして夜には、バーベキューにライブ、火起こしから始める料理対決『料理の鉄人』。いつもと違う場所で過ごす一日一日に、新しい体験や面白さがつまっていました。キャンプには、相川さんや、りゅうさんのご友人のたくろうさんがご家族で遊びに来てくださり、なのはなのキャンプでしか味わえない楽しさや景色を一緒に体験することができました。そして、盛男おじいちゃんの山の自然に包まれている安心感がずっとある、そんな三日間でした。

 なのはなファミリーのキャンプでは、全員が企画する側、人を楽しませる人になります。四月からチームに分かれてアトラクションや台所の準備をしてきました。基地作りやファッションショーもぶっつけ本番ではなく、図面描きなどの下準備を綿密にして、作るからには良いものを、という思いでのぞみました。

 人に喜んでもらいたい、人を楽しませたい。キャンプに向かう私たちの気持ちの真ん中にあったのは、その情熱と意欲でした。

(お互いを楽しませ、なのはなファミリーのキャンプに初めて参加するゲストの方に楽しんでもらうために、どんなアトラクションを作ろうか?)

 そう考えていると、エネルギーがわきました。ゲームの内容はもちろん、当日の現場での段取りや、どのように進行をしたらスムーズかを細かく考えていきます。チームで企画し、流れをシミュレーションし、改善をしていく、そういった積み重ねで本当の『楽しさ』を作り出していきます。お父さんとお母さんは、家族ができたら、母親として家族を楽しませるプランをいつも持っていくことが大切なのだと話してくださいます。私たちは、キャンプを通してそういった誰かを楽しませる生き方の練習をしているのだなと思います。そして、誰かを楽しませようと動くことで、一番楽しいのは自分自身なのだと気づきます。

 

 

 そしてキャンプは、私たちの生きる力を磨いていく場でもあります。いつもと違う環境に身を置いて、食事を作り、寝場所を確保する。条件が全く違ったり、自然相手で思い通りにいかないこともある中で、みんなで知恵を絞り解決していったり、アクシデントにも対応していきます。キャンプで新しい体験をすることで、仲間の素敵な一面を新たに知ることができたり、自分にできることが増えることも喜びです。そして、拘っていたことから解放されて心が自由に、幅も広がっていきます。

 お父さんがこんな話をしてくれたことがあります。

「楽しさには、甘い楽しさ、酸っぱい楽しさ、苦い楽しさ、といくつも種類がある。何をしても楽しめる人は、その楽しさの幅を知っているということ」

 キャンプはまさに、五味の楽しさが味わえるイベントだなと思います。受け身でお客様になって楽しむだけではなく、自ら遊びを企画しプロデュースする楽しさ、不便さをアイディアで乗り越える楽しさ、少し寒い中テントでみんなと寝袋にくるまって眠る楽しさ。こんな豊かな楽しさを、私たちは山小屋キャンプで体験します。

 

大竹さんがキャンプのテーマに合わせて彫ってく ださったお面がみんなを見守ってくれました

 

■まずは、我が家を立てる!

 

 三泊四日の山小屋キャンプ。私たちの最初のミッションであり、最初のお楽しみ。それはテントを設営すること。同じテントで眠るメンバーで、自分たちのテントを立てます。ウォークラリーやファッションショー、吹き矢、料理の鉄人はもちろんのこと、テント設営も重要なアトラクションのひとつです。なぜなら、テントがなければ夜は越せない。盛男おじいちゃんの山の自然を感じながらテントで眠る夜は、私にとってキャンプの大きな楽しみのひとつなのです。だから、テント設営は大事なミッションなのです。

 

 

 はじめに、あけみちゃんと、ふみちゃんがテントの張り方をデモンストレーションしてくれました。整地をしてテントを張る場所(土台)を作る。テントの対角線上にポールを通してたてる、ペグを打つ。タープを張る。説明をしながらさくさくと進めていく二人。手際よくテントを張る姿は、たくましく、かっこいいなと思いました。

 一連の手順を見せてもらったら、いよいよチームにわかれてテント設営の開始です。

 私のテントチームメンバーは、のりこちゃん、りなちゃん、かのんちゃん。一日目、一緒に眠る四人です。クワ、鋤簾、筵、段ボール。そして、テント一式。実行委員が用意してくれたアイテムを携えて、山の中に入っていきます。初めてテントをたてるという、のりこちゃんと、荷物を運びながら話しました。

「いいテントにしたいね」

「うまく立てられるかな」

「前に、地面が斜めになっていて、朝起きたらみんなが端っこに固まっていたことがあって、面白かった」

 

 

 山小屋キャンプのテントサイトは、山の中。いわゆるオートキャンプ場のように、テントを張るために用意された平地ではありません。山へ登っていく道沿い、木々の合間のスペースだから、だいたいが斜面になっています。整えられていないからこそ、心地よい『家』にするためにみんなで力を合わせて工夫のし甲斐があるというものです。道の脇に、チームナンバーが書かれた紙が置いてありました。私たちの、テントナンバーは四。ありました、四の表示が。

 いかに地面を平らするか。

 いかに地面にクッション性を持たせて寝心地よく仕上げるか。

 そして、正しくテントを組み立てること。

 テント設営で大事なポイントを思い浮かべつつ、設営をはじめます。ところで、キャンプ(CAMP)の語源を調べてみると、ラテン語の「キャンパス(campus)」で、もともと「平らな」という意味を表したそうです。そうか、やはり“平ら”というのが命なのだと思いました。

 

 

■うずうず……

 

 私たちがテントを張るスペースの傾斜はゆるやかでした。木や小枝を積み上げて高さを調整しなくてはならないほどではなく、クワや鋤簾で土を均していけば、良い感じに平らになりそうです。

「立地条件、良いね!」と言いながら、りなちゃんとクワで土を寄せていきました。ならした土の上に、段ボールを敷いてみます。良い感じに平らにできたように見えます。

 私たちは、うずうずしました。

(ああ……寝転んでみたい!)

 ということで、「土台が平らかどうかチェックしてみよう」とりなちゃんと二人で段ボールにゴロン。どっちの方向を頭にしたらよいか、方向を変えてまたまたゴロン。のりこちゃんとかのんちゃんにも声をかけて、四人んでゴロン。まだテントも張っていない、ただの段ボールの上でだけれど、なんとも心地よい。四人でごろ寝をしながら、「夜が楽しみだねえ」「このまま寝てもいいね」と話しました。自分の身体のすぐ下にある土の感触と、高い木々に囲まれた安心感。たったこれだけで、キャンプっていいなあと幸せな気持ちになりました。しかし、いつまでもゴロンと寝ているわけにはいきません。テント設営はまだまだ序盤です。

 

 

 幸いにも私たちは立地条件に恵まれ、整地ははやく済みました。むしろを敷く必要もなさそうで、段ボールのみでよい寝心地が確保できました。続いては、テント本体をたてます。あけみちゃんとふみちゃんのデモンストレーションを思い出し、二本のポールを通していきます。ここでちょっと手間取ります。一本目を通して、対角線に二本目。さあ持ち上げるぞ、となるとなぜかうまく立たない。テントが中途半端なところで突っ張ってしまいます。とおりかかった他のチームの人も一緒に見てくれて、ポールを通す順番が逆だったことがわかります。そして、先にポールにフックをかけてしまったというミスも。いやはや、実際に自分たちでやってみると、“サクサク手際よく”とはいかないな、と苦笑い。でもチーム全員で「こうじゃないか、ああじゃないか」と考えながら進める過程も面白かったです。

 ポールを正しく通せたら、無事にテントが立ち上がります。ポール四か所にとりついて、テントを均した場所に移動します。入口を道側に向けて、段ボールの位置もしっかりとテントの真下に来るようにします。銀マットも中に敷きます。我が家の完成に着々と近づいてきます。そして、またあの感情がわいてきます。

 私たちは、うずうずしました。

(ああ……寝転んでみたい!)

 ということで、またまた寝心地チェックタイムがやってきました。四人で銀マットにゴロン。今度は、木々ではなく、テントに包まれています。テントの中に入ると、みんなの声が少しシャットアウトされ、山の中の我が家という感覚がより強くなります。はじめてテントで眠る、かのんちゃんとのりこちゃんも、気持ちいい〜、と笑顔です。山に守られ、テントに守られ、川の字(四人だけど)になって眠る仲間がいる。この空間が、私は大好きだなと思いました。

 

 

 私たちのチームは、なにかと寝心地チェックをするのが好きな四人組でした。テント設営をしながら、何度もゴロンゴロンと横になっていると、テントで眠ることを心から楽しみにしているメンバーなんだなと思えて、それが嬉しかったです。ホームページカメラマンも、笑いながら私たちの写真を撮りに来ました。

 寝心地がよさそうであることが十分確認出来たところで、次の工程に入ります。夜露から守るタープをかけよう、と進めようとして気づきます。本体がうまく立って安心していたけれど、私たちはまだペグを打っていませんでした。かのんちゃんとのりこちゃんと、笑い合います。

「危なかったね、ペグ打っていなかったら、私たちのテント移動式になっちゃう、風で浮いちゃうよ!」

 ポール四か所を、ペグを打ちます。斜めの角度で、しっかりと。みんなできるようになろう、と三人で交代で打っていきました。そして、最後の工程のテープ張りです。タープにもポールを通して、向きを確かめてテントの上に張ります。このあたりにくると、だいぶテント張りも手馴れてきたように感じます。ちょうど良い位置に木があり、紐でしばってタープを引っ張ることもできました。かのんちゃんとのりこちゃんが、二か所をしっかりと結んでくれて、タープも無事に完成。ということは、我が家の完成です。

 私たちは、うずうずしました。

(ああ……寝転んでみたい!)

 恒例の、そして最後の寝心地チェックタイム! 私たち、このテントで眠る夜が本当に楽しみで仕方ないのです。ゴロン、ゴロン。さらにゴロン。他の準備に入っていた、りなちゃんが戻ってきたので、チームのテント設営ができたことを伝えます。そして四人ゴロンゴロン。のりこちゃん、りなちゃん、かのんちゃん、私。キャンプ限定の小さな四人家族です。チームみんなの力を合わせてテントをたてられた達成感を味わいました。手間取った工程もあったけれど、ひとつの成功体験です。とても寝心地の良いテントが仕上がり、キャンプのスタートは幸先の良いものとなりました。

 

 

■すべてのテントが完成

 

 我が家が完成した後は、他のチームのヘルプに向かいました。隣のお宅は、今回のテント設営において最難関の場所でした。かなりの急斜面で、まずそこを平らに整えるという一大作業がありました。私たちが加わったときには、すでに整地は済んでいました。お隣で最初の状態(斜面)を見ていた私は、見事にテントがたつ平らな状態になっているのを見て、すごいなと思いました。ほのかちゃんたちの眠る土地は最難関の場所だけれど、たくさん敷き詰めた木々たちのおかげでクッション性抜群の土台になっているように見えました。大変だけれど、楽しい。大変だからこそ楽しい。それが自分たちで作るキャンプなんだなと思えました。

 

 

 ほのかちゃんたちのチームにはかのんちゃんが引き続きテント設営のヘルプに入り、のりこちゃんと私は、かにちゃんチームに合流しました。

 かにちゃんチームも、難易度の高い場所でした。多くのテントの設営地となった山道とは反対側の入口がその場所でした。テントがたつとほとんど道がふさがる幅で、ペグを打つ場所も固かったです。ポールが立つのが道のぎりぎりの場所でした。少しゆがんでしまっていたポールを綺麗になるように修正していきました。特に難しかったのは、すぐ近くにタープのロープを結びつける木がなかったことです。ほしちゃんが、入口の方向に、ロープを長くつないで結んでくれました。反対側は、簡易トイレに結ぼうかと無謀な(絶対に無理な)アイディアを出したりしていたところ、ももかちゃんが机に結びつけることを考えてくれました。机の重量では耐えられなかったのですが、どこからかももかちゃんがブロックを調達してきてくれました。これで、なんとかロープをくくれました。テントの形も、設営の場所もひとつひとつ違って、応用問題でした。基本のたて方を元に、自分たちで考えてなんとか難所でもテントを立てられると、私たち結構やるね! と思えました。かにちゃん、ほしちゃん、ももかちゃん、のりこちゃんと無事に設営ができたことが嬉しかったです。

 こうして、キャンプ一日目、最初のミッションをクリアしました。山へあがる道々には、ゲストを含めた大勢の人が夜を過ごす家がたっていました。自分たちのテントを見て、あらため夜が楽しみになりました。ゴロン、ゴロンとなんども寝心地をチェックしながら、チームのみんなと設営したテントは、安眠保証付きだと思いました。

■まさはるさんの焼きそば

 

 テント設営が済んで山小屋の前へ集まると、じゅうじゅうという音と美味しそうな香りがただよっています。これを食べなければ山小屋キャンプは始まらない、河上まさはるさんの焼きそばです! 大きな屋台用の鉄板で作ってくださるまさはるさんのソース焼きそばは、なのはなの夏のイベントに欠かせません。伝統のキャンプメニューです。私も、とても楽しみにしていました。りゅうさんがまさはるさんの助手に入り、次々と焼きそばが台所に届けられます。

 

 

「ご飯の時間でーす」

 あゆちゃんの召集の声が、山の方にも響きます。山小屋前にゴザを敷き、焼きそばランチの時間です。台所の勝手口に行列を作って、みんな焼きそばプレートを受け取ります。みんなニコニコの笑顔です。

「いただきます!」

 山の緑、青空、初夏の日差し、風車の飾りつけ、そして、できたてのまさはるさん特製焼きそば。なのはなでいただく食事は、料理の美味しさに加えて、シチュエーションや景色、空気、そしてたくさんの仲間で一緒に美味しさを共有して食べる、という要素が加わって、本当にいつも『世界一美味しいごはん』になります。山小屋キャンプでいただくまさはるさんの焼きそばも、やっぱり人生で一番おいしい焼きそばです。

 

 

 みんなが口々に本当に美味しいというコメントを伝えると、まさはるさんは照れながら焼きそばづくりのこだわり(ソースは絶対にオタフク焼きそばソース! など)を話してくださいました。まさはるさんと河上さんと一緒にキャンプのお昼を過ごせたことがとても嬉しかったです。美味しい焼きそばで私のキャンプ気分もますます高まり、午後のアトラクションに向かいました。

 最後にご報告。テントで過ごした私は、四人の中で起床が一番遅く、ぐっすりと眠りました。テント四は安眠できる最高の我が家でした。