『なのはなファミリーとは何か』

《新しい書籍のご紹介》

著者:立瀬 剛志
(富山大学学術研究部疫学健康政策学講座助教)

監修:小野瀬健人

定価:825円(税込)
発行:なのはなファミリー企画株式会社

立瀬剛志 ◆ たつせ たけし

  富山大学学術研究部疫学・健康政策学講座助教。1972年富山県舟橋村生まれ。早稲田大学第一文学部哲学科卒業。富山県の伝統医学センターにてインド医学の思想について研究をしたのち、経済産業省産業クラスター計画ライフケアクラスター研究員、北陸先端科学技術大学院大学COEフェローを経て、2006年富山大学医学部着任。公衆衛生学認定専門家。専門領域は精神保健学。自殺対策・孤独孤立予防、女性のWell-being推進、社会的処方研究など社会資源の視点から実践的な研究活動を推進。現在、富山県孤独・孤立対策プラットフォーム推進事業幹事会長、富山市健康づくりプラン21委員、舟橋村政策フェロー、NPO法人富山カウンセリングセンター顧問などの社会活動を中心に社会的健康の実装に取り組む。

はじめに

  方法
  結果

 第1章  回復施設をはじめたきっかけ

――施設をはじめたきっかけ その1
 心の傷が摂食障害の原因になるとわかった

摂食障害女性に向き合う基本的なスタンス
親に対しての「心配」が傷になっていく?
「心の傷」がどう摂食障害とつながっていくのか
摂食障害が発症するまでは普通の子と異なる点はないのか
なぜ、摂食障害の女性の症状が消えるのか
なのはなファミリーではこの暴走をどのように治めているのか
未来に希望を持たせるということですが――
生きる希望を持つときに利他心が必須だというのはなぜか
「共感できる」ツールなり情報が必要になると思われるが

――施設をはじめたきっかけ その2
 「生きる意味」への応答としての施設構想

 なのはなファミリーでは「生きる意味」をどう考え、どう扱っているか
 その「意味」というのは、絶対に自分を利するものであってはならない、と
 どのような方法で人類に貢献することが夢なのか
 図 ソーシャル・フィールド構想(ホリスティック・インディペンデンス・プログラム構想)

――施設をはじめたきっかけ その3
 物書きとしての役割から、実践者へと転換

――施設をはじめたきっかけ その4
 「共感は回復を導く」という確信を得た原体験

 実際にどうやって夜驚症を改善できたのか?

 第2章  「他の回復支援との違い」

 他の摂食障害への支援と異なる点
 ミーティングについて――
 就職や大学受験、資格取得までフォロー

 第3章  「回復支援の柱となる農業・音楽・運動の特性」

 農業・舞台(音楽)・運動という活動の三本柱のそれぞれの意味
 作り込み過ぎた自分でも、純粋無垢な自分だけでも社会を生き抜けない――
 摂食障害におけるユアペースの態度について
 「メタ認知」によって社会の課題が見え、動機づけがなされる
 問題になる消費財的扱いとは

 考 察

 三つの特徴
 二つの課題

 参 考 なのはなファミリーQ&A 解説

 なのはなファミリーと公衆衛生
 依存から自立へ
 逆境体験と向き合う
 ソーシャルファームという社会資源

 近年、依存症という分野での回復支援が注目されている。それは単に治療の現場だけではなく、治療後に社会復帰をどのように果たしていくかという視点での非常に重要な公衆衛生分野の実践である。私が専門とする公衆衛生学の分野では疾病予防を病気の発症前、早期発見後の治療、治療後の回復期という一次から三次に段階的に分けて保健業務を遂行するという特徴がある。今回、私が着目した回復支援はこの中の三次予防として非常に重要な段階と考えられる。それはとりもなおさず、病気の寛解の先にある再発予防そして、社会復帰または社会活動の支援までを射程に入れるという段階である。

 また、社会資源という言葉が昨今医療の現場でも使われるようになっている。それは英国に端を発する社会的処方の考えである。社会的処方とは患者の課題を解決するために地域の活動やサービスなどの社会参加の機会を「処方」することを意味し、退院後の患者や社会参加が十分でない者の社会的健康を向上させることを目的としたものである。

 こうした地域の社会資源と医療との連携の必要性が注目される中、ある学生から拒食症患者の回復を支援しているなのはなファミリーの存在を知ることとなる。二〇二五年現在、日本では摂食障害治療支援センターが中心となり国内に八カ所摂食障害者支援拠点病院が設置されており、今後全国に広がっていくことが予測されている。一方、長期間での入院が難しい状況にて、短期間の治療後に社会的回復を支援する社会資源はほとんど見られない。こうした最中、実際に二年間ほど入居して摂食障害からの回復を体験した医学生が直接私の元を訪ねてきたのである。こうした経緯から摂食障害回復施設のなのはなファミリーとの関係が始まった。

 これまで地方ダルクなどでのフィールド調査を行った経緯から、今回社会資源の一翼を担う可能性のあるなのはなファミリーの実態と課題を調査することで、今後の日本の特に、精神保健分野での社会資源としての活用の可能性を探る試みを行った。また調査の枠組みとして、我が国における社会的処方の展開とそれに応じる行政での地域支援の現状を踏まえ、民間活動の新たなメンタルへルス支援事業という位置づけにて、実態及び現状における課題、そして今後の発展可能性についての検証を主な目的とした。
 

富山大学学術研究部疫学・健康政策学講座助教
 立瀬 剛志  

「なのはなファミリーとは何か」
社会支援としての回復支援モニタリングレポート

著者:立瀬 剛志
(富山大学学術研究部疫学健康政策学講座助教)
監修:小野瀬健人

定価:825円(税込)

 

 

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