【5月号⑮】「たけちゃん、たいちゃんの入園式」あゆみ

 

 朝五時半、持ち物に名前が書けているか、忘れ物がないか、二人分の新しいお道具や持ち物を確認していると、階段を駆け下りてくる音がしました。

「ママが早く起きてるから僕も起きてきたよー!」

 と、たけひろがいつもよりも一時間近く早く起きてきたのでした。

 次男たいちも、六時過ぎには起きだしてきて、出発は九時目標なのに、英幸さんも七時半にはビシッとスーツを着ています。

 親子そろって、少しソワソワと緊張する、初めての入園式の朝です。

 四月二日は曇り空でしたが、雨はどうにか持ちこたえてくれました。

 保育園の駐車場に着くと、私が想像していたよりも多くの保護者と園児たちが登園してきていました。それぞれセミフォーマルのスーツを着た保護者の方達の中でドキドキしていると、なのはなファミリー卒業生ののぞみちゃんと、のぞみちゃんの娘であるゆりちゃんと出会いました。この日は昨年度から引き続き古吉野保育園に通うお友達の進級式でもあったのでした。

 保育園が楽しみなような、新しい生活(未知の世界)がちょっと不安な気持ちが入り混じったたけひろとたいちは、普段なのはなでよく遊ぶゆりちゃんと会えたことで、少し気持ちがほぐれた様子です。

 

 

 ほっとしたのも束の間、受付を済ませると、たけひろと私は四歳・五歳児クラスへ。たいちと英幸さんは三歳児クラスへと別れました。

 園長先生や保護者会会長からの挨拶が園内放送で流れました。たけひろとたいちが通う保育園は、今年度四十一名のお友達と一緒に過ごします。

 先生方のお話し、説明などを聞きながら、自分も新しい世界に足を踏み入れたような気持ちがしました。

 保護者会の案内用紙には、今年度の副会長に、のぞみちゃんの名前がありました。一歩先になのはなファミリーの仲間がいてくれると思うと、とても心強く感じました。

 園長先生からのお話し、保護者会の説明などが終わると、各クラスで先生のお話しになり、遊んでいた子供たちが集まり、席につきました。

 たけひろ達のクラスは三人の先生がついてくれます。子供たちの気持ちをほぐすのに、最初は三人の先生方が、それぞれ得意なことを披露してくださいました。ピアノが得意な先生、身体を動かすのが得意ということで、竹馬を披露してくれた先生、フラフープを使って子供たちと遊ぶのを楽しみにしていることを伝えてくれた先生。

 子供たちと一緒に保護者も先生方の得意技に拍手を送りました。クラスの空気が和んだところで、担任の先生がクラスのお友達の出席をとりました。

 五歳児クラスのお友達から名前が呼ばれていきます。みんな「はい!」とお返事を元気にしていて、途中の子からは、手もあげてお返事しています。五歳児クラスのゆりちゃんも、元気にお返事をしていました。

(たけひろはお返事できるだろうか。こういう場はたけひろにとって初めてだな……、ちょっと声をかけようか、いやいや、たけひろなら大丈夫だ。頑張れ!)

 と、座っているたけひろの後ろ姿を見守っていると、ついにたけひろの名前が呼ばれました。

「はい!」

 と、とても賢そうに、まっすぐに手を挙げてたけひろがお返事をしました。

 これまで一緒に過ごしてきたのとは違う、新しいたけひろでした。

 たけひろの背中が少し大きくなったように見えて、嬉しいような、切ないような、なんとも言えない、初めての気持ちを味わいました。

 

 

■一歩踏み出した節目に

 

 年が明けた頃から、保育園に行く準備をしてきました。

 子供たちの年齢や成長、自分自身の仕事や役割のこと、様々なことを考え、英幸さんとも相談して決めたことだったけれど、保育園に入園する日が近づくにつれ、ふとした時に、寂しいな、と思う瞬間がありました。

 なのはなのお母さんが、

「一緒に過ごせる時間はあっという間だから、本当に今を大切に子供たちと過ごさないと」

 と何度も折に触れて言ってくれていた言葉を、この数か月の間に、ひしひしと実感しました。

 子供たちが生まれてから、目まぐるしく月日が流れていき、いつも限界突破し続ける日々でした。もうこれは無理かもしれない、と弱音を漏らしそうになる時もあったけれど、なのはなファミリーのお父さん、お母さん、スタッフのみんな、仲間のみんなが、いつもたけひろとたいちを包んでくれていました。それはイコール、私自身が包んでもらっている、ということでもありました。

「たけひろやたいちをみんなで育てながら、お前の育て直しをしているんだよ」

 お母さんが笑いながら言ってくれた言葉を思い返し、何度も救われました。できているから親というより、親をしながら、子供たちに、子供たちを見守ってくれているたくさんのみんなに、私自身が育ててもらっていました。

 

 

 私が仕事が進まず切羽詰まっていると、知らぬ間にお母さんが子供たちを連れ出してくれていました。夕方、頭や服に枯れ葉やひっつき草をいっぱいつけて、お母さんと子供たちが笑いながら帰ってくる声が遠くから聞こえてくる度に、

(ありがとうございます)

 と心の中で思いました。

 あゆちゃんが、まえちゃんが、なっちゃんが、みんなが、たけひろとたいちの成長を見守り、嬉しいこと、楽しいことをたくさん共感してくれ、悪いことをしたときには、しかってくれ、くじけそうな時には一緒に考えてくれて、私が見逃してしまうことに、誰かが気付いて拾い上げて、たけひろやたいちの気持ちを理解してくれました。

 そして、その一つひとつの出来事を、「今日はたけちゃんがね、ちーちがね、」と私に教えてくれました。

 本当に、私達夫婦だけでは、たけひろのこと、たいちのことをこんなにのびのびと育てることはできなかったなと、思います。

 まだまだ先は長いけれど、この日、子供たちの保育園での後ろ姿を見ながら、改めてなのはなファミリーで子供たちをみんなに育ててもらってきたことを、ありがたく、かけがえのないものに感じました。

 そして、子供たちそれぞれが新しい世界に一歩踏みだした節目に、私自身もまた、一人の人間として、自分の役割や課題と向き合いながら、見守ってくれるたくさんの方に感謝しながら、成長していくぞ、と思いました。