【12月号⑩】「チームで協力して、作り上げたワンシーン」ほのか

  
 お父さんのお誕生日会から約一週間。息つく暇もなく、次の一大イベントである、役者オーディションが開催されました。

 オーディション本番一週間前、夕食の席で演劇部のやよいちゃん、みつきちゃん、なおちゃんが、寸劇を交えた告知をしてくれました。今年はペアまたはトリオでのオーディションということで、やよいちゃんがチームのメンバーが書かれた紙を読み上げてくれました。

 メンバーの名前が次々発表され、発表後には「おお〜……」と期待のこもった歓声が上がりました。どのチームをとってもそれぞれのキャラが濃く、どうなっちゃうんだろうと想像しただけでわくわくが止まりませんでした。そのとき、「まえちゃん、まりかちゃん、ほのかちゃん」と、自分のチームのメンバーが発表されました。

 斜め前の席のまりかちゃんを見ると、すごく嬉しそうに口に手を当てて、今にもまえちゃんに飛びつきそうな勢いで脚をばたばたさせていました。

■楽しみな時間
  
  
 まえちゃんもにこにこしていて、私もすごく嬉しくて、これからがんばろう! と胸のあたりがじーんと暖かくなるような気持ちでその日は眠りました。

 その日からというもの、限られた時間の中での練習が始まりました。練習と言っても夜十五分程度集まるだけなのですが、それでも私にとっては一日の中で一番好きな時間で、その時間を楽しみに一日がんばるといっても過言ではないくらい、楽しみな時間でした。

 お題は、昨年と一昨年のコンサートのシーンより、演劇部の人で選んだ、七つの印象的なシーンから、チームで一つ選び、披露するというものでした。

 まりかちゃんは「猫がいい!」と、去年の最初のシーンである島の使い猫のシーンがやりたいと言っていたのですが、私は正直そのシーンをやることに賛成ではありませんでした。なぜなら、あまり起伏のないシーンで、自分がやったらつまらない演技になってしまいそうだったからです。
  
  
 するとまりかちゃんが今度は「ピエロ強盗がいい!!」と、これもまた去年のコンサートのワンシーンより、口真似で機関銃を操る魔女が印象的なピエロ強盗のシーンを提案してくれました。

■キャラクターの形

 荒い口調のセリフや、おもしろそうな表現がつけられそうだったので私もそれには賛成しました。しかし、どうしても一昨年のコンサートの「反愛情大王と子分二人」のセリフに惹かれてしまって、「やっぱり、これがやりたい」ということを、まりかちゃんやまえちゃんに相談すると、二人とも快く引き受けてくれて、いよいよ私たちの練習が幕を開けました。

 まずは読み合わせから。
 まえちゃんがギブソン大王の役、ということは決まっていて、私とまりかちゃんのどちらかが子分の一、二の役をやることになりました。初めて読む文章は、ストーリーの前後がわからなくて、キャラクターがつかめなくて混乱しました。文章の言葉の難しさ、量的に私が子分二の役をやることになりました。

 子分二は、噂ではおとぼけキャラと聞いていました。それなのに、実際に脚本を見ていると、難しい言葉を使ったり、知識をひけらかしていて、このキャラクターは頭が悪いのか、良いのか。性別は男性なのか女性なのか。何歳くらいなのか。

 全くイメージがつかめなくて、これはどう演技するものか……としばらく頭を悩ませていました。何回も読み合わせをしたり、実際にコンサートで子分二の役を演じたまえちゃんからアドバイスをもらう中で、なんとなくキャラクターの形が作られていきました。
  
  
「このシーンのおもしろさは気持ちのやりとりにある」
 とまえちゃんに教えてもらいました。そこで、
「ああ、そうか。これは、われらが大王の紹介をしつつ、結論として、この世界に愛はないということを言いたいがために、愛と世界について引き合いにだしているシーンなんだ」
 と理解しました。

 土台ができあがったあとは、どんどんおもしろみを加えていきました。
「愛は、あるんか?」の台詞では、正面に出て歌舞伎の決めポーズのようなことをしたり、子分二が失言して、それを大王と子分一がにらみつけるシーンなど。

 私は自分の台詞を言うので必死で、最初は表情をつけたり自分が人の台詞を聞いているときに、他の人を見ることができませんでした。台詞を間違えないように言えたと思ったら顔がつけられていなくて、顔ができたと思ったら台詞がつまってしまったり……。演技はとても頭を使うなと思いました。

 そしてなにより、にらみつけられて自分の失言に気づくシーンではまえちゃんの顔を見なくてはいけないのですが、まえちゃんがかっこよすぎて顔を直視することがなかなかできませんでした。(たぶん本番もしっかり見られなかったと思います……)

 そんな憧れの存在であるまえちゃんとまりかちゃんと夜の練習の賑やかな時間が、宝物のようで、一週間の練習期間があっという間に過ぎて行きました。

■無我夢中で

 そしてむかえた本番当日。その日は朝から金時祭りがあって、午後帰ってきてから役者オーディションが開催されました。

 ずっと発表順が気になっていたのですが、なんと私たちのチームは二番目でした!
 最初は緊張したのですが、今思えば二番目がちょうど良かったなと思います。

 登場してきたところから、みんなの暖かい視線やほほえみを感じました。
 演技中は無我夢中であまり記憶にないのですが、とくに大きな失敗はせずにうまくいったなという実感があります。
  
  
 終わった後もみんなが笑ってくれて、拍手をしてくれたのがすごく安心して、嬉しかったです。まりかちゃんも難しい言葉はありましたが今までの練習の成果が発揮できて、止まることなく台詞が言えていたのがすごかったなと思います。

 役者オーディションを通して三人で協力してひとつのワンシーンをつくりあげていくことができて嬉しかったです。

 演技のこともたくさん学ぶことができて、実りある時間でした。 今回役者オーディションを通して学んだことを今年のウィンターコンサート本番でも生かせるよう、これからの練習で意識していきたいです。