【2月号⑩】「走れミシン 桃のネット作りマラソン!」つばめ

  

  桃の収穫へ向けた大切な作業、桃のネット作りに、専属で入らせて頂くことになりました。桃の樹を覆うことのできる大きさにネットをつなぎ合わせていく、この作業は、主に三人で進めていきます。

  さくらちゃんが、三人分の腰袋を用意してくれていたのですが、テープに、それぞれの子の名前を書いて貼ってありました。さくらちゃんの細やかな気配りや、優しさが感じられて、すごく温かい気持ちになりました。

  腰袋が相棒か、宝ものみたいで、毎日その腰袋をつけると、やる気がチャージされます。「今日もやるぞ!」と前向きな気持ちになれる、魔法のマストアイテムです。

  ネットの大きさですが、幅二メートルの防虫ネットを十枚繋いだ二十メートルが一辺の長さです。もう一辺は、必要な長さをロールから引き出し、カットしていきます。

  それを、八枚縫い合わせると、一枚の桃のネットが完成します。

  

  
 今の段階では、二十メートル× 四十メートルのネットを制作しているのですが、それを基準に、ざっくりとした作り方を記してみます。

  まず、ロールから出したネットを広げていって、さくらちゃんが床に引いてくれた二十メートルのラインに真っ直ぐ合わせます。四十メートル欲しいので、折り返し、もとの先端に合わせてカットすると、四十メートルを一枚取り出せます。

  できたその一枚をもう一度真っ直ぐ広げた上に、ロールから引き出したネットを重ね合わせ、一辺を洗濯ばさみで仮止めします。また、さらしを四センチ幅に裂いたものを、その横にねじれがないように床にのばしておきます。

  そこまでできたら、縫い付けに入ります。

  縫うときは、ミシンで縫う人、ミシンの前からネットを引っ張る人、縫う人の後ろでさらしをネットのつなぎ目に当て布していく人、に分かれます。

  大きなネットを作っていくため、前から引っ張る人がいないと、ミシンがネットの重さに負けて動かなくなったり、縫えなくなります。また、後ろで当て布をして、端を奇麗に整えてくれる人がいないと、ネットがズレたり、縫う人が当て布しながら縫っていかないといけなくなって、とても効率が悪くなります。ネット作りの作業は、三人の連携がとても大事な作業です。

  縫うまでの段階でも、さらしを裂く人、ネットをロールから出す人、ピンで留める人、カットする人、等々。その時その時配属させたポジションに三人がついて、協力し合うことで、大きな桃のネットが作られています。

  さくらちゃんの工夫で、ネットを樹に綺麗にかけやすいように、ネット中心部のさらしを赤色、端と端を青色に染めてあります。この色つきのさらしも、桃のネット作りメンバーで、夜などの空き時間に染め粉で染めて、作りました。
  

    
 今回私たちが、ネットをミシンで縫っていく長さを、さくらちゃんが計算してくれたのですが、なんと、五・一キロありました。

  ミシンで縫うのかと思うと、ものすごい長さ……というより距離です。

  フルマラソンにかけて、「桃のネット作りマラソン」と題した紙をさくらちゃんが作ってくれました。紙に毎日、進んだメートル数を記入していけるようになっていて、一日二百八十メートルを目標にミシンを走らせています。作業開始から一週間とちょっと、二キロメートル弱の距離を縫い進めることができています。

  はじめの頃は、百メートル縫うのにも一日かかっていましたが、今では百メートル程度なら一時間と少しあれば縫えるようになってきました。

「どれだけ効率的に、奇麗に縫えるか」、これは毎日、ネット作りメンバーで試行錯誤して、工夫してきた一大要素です。

  ネットが縫い合わさってくると、だんだん重量が増して縫いづらくなってきます。

  台車を使ってネットを引き寄せやすくしたり、蛇腹折りにしてみたり、色々試してみて、一番縫いやすい方法として、ミシン台自体を、当初の体育館舞台前スレスレの位置から、一メートル中央寄りにすることで安定しました。そうすることで、ネットを引っ張る人の可動域が広がって、重いネットを引っ張りやすくなりました。ミシン糸が切れない限り、ほぼノンストップで縫えるようになりました。他にも、さらしは使用分だけ裂くことで絡まるのを防止したり、四枚以上縫い合わさって重くなってきたらミシン側に蛇腹に引き寄せて軽量化する工夫も取り入れたり、等々。今でも発展途上で、工夫しがいのあるネット作りの作業がとても楽しいです。そして現在、目標(二百八十メートル)を順調に達成できるようになってきました。

  同じ工程の繰り返しで、とても地味な作業に思われるかも知れません。しかし、私にとって、地味に地道にコツコツと、日々の積み重ねにとても達成感とやりがい、充実感溢れる作業です。

  二月十八日には、五・一キロメートル完縫を目指して、三人で力を合わせ、頑張っていきます。