「『青春を山に賭けて』感想文」 ここの

 私は『青春を山に賭けて』を読みました。4冊お父さんが選んでくださった本はまだどれも読んだことのない本でタイトルから興味深いものばかりでしたが、直観で読みやすそうなものを選びました。
 私は登山と言っても3時間くらいしかかからない小さな山にしか登ったことがありません。私の通っていた小学校では毎年伝統行事で4月に「空山遠足」というものがありました。近くの空山まで1年生は6年生と、2年生は5年生と、3年生は4年生とペアを作って上ります。その後ろを保護者が付いてきて一緒に風車近くの開けた広場のようなところまで目指します。1年生で初めての時はきつかった思い出もありますが6年生になると、楽々登れるようになっていきました。大きな山に登ったことのない私は、植村さんの経験した登山があまりにも異世界過ぎて言葉だけではあまりよくイメージが付きませんでした。けれど、実際に同じ山に登ったことのある人でしか味わうことのできない頂は、とても魅力的で死ぬまでに一回は味わってみたいと思うのは私だけではないはずです。ただ何の利益にもならない、命がけの山登り。私にそんな挑戦をする勇気は正直ないです。でも植村さんも大学時代に半ば無理やり入部させられたことが登山を始めるきっかけになったように人生何がきっかけになるのか本当に分からないものだなと思いました。
 植村さんが、きつい仕事でも、まともな食事がとれなくても、寝床がなくても、どんなことも乗り越えられたのは、ただ登りたい山があったから。一度決めた目標に対し植村さんの強くて堅い意志は普通の人とはかけ離れているように感じました。この本の中だけでもたくさん選択しなければいけない場面が出てきました。実際にはもっと数えきれないくらいあったのだと思いますが……。私たち一般人にとっては大きな選択でも植村さんにとって、初めから結果は決まっていた大したことのない当然の選択だったのかもしれません。植村さんは決して諦める選択肢を選ばなかった。どんな無茶な選択で悩んだとしても一度持った目標に向かっていった。「できるだろう」という強い自信があった。ただそれも今までやってきた実績があるからこそ、それが自信に変わっているのだと思いました。何も知らない人は一見ただの頭のおかしい人と思うのも無理はないけれど実際成功させてしまう、またはそれ以上の実力を見せてくれるのだから尊敬せざるを得ません。植村さんが、探検家になるうえで必要な資質は「臆病者である」と答えたこと。自分も同じように臆病な性格ならではの賜物で窮地を乗り越えられていたと解説を書いてくれている西木さんの言葉を読んで、私も自分のことを臆病者で弱い存在だとずっと思っていましたが、その臆病さが時にはいい方向に連れて行ってくれることもあると思うと力が湧くし、うれしくなりました。また植村さんはどんなに過酷な経験をしても「達成感があった」と言っていて、飛び入りで参加して自分が何一つ準備を手伝わなかった登山では、「喜びを感じなかった」「みんなに申し訳ない」と言っていて、単独遠征こそが本当に満足のいく登山だと気が付きました。「人のやった後にやるのは意味がない」「人のためにやるのではなく、自分のためにやる」ということ。中学の時に、「ファーストペンギンになりなさい」とよく言われていたことを思い出しました。人の後についていくのではなく率先して自分が先陣を切るべきだと分かっていましたが、自分は弱い人間でまた、山登りは一歩間違えれば死ぬかもしれない、死ぬか生きるかの窮地に立った時も何度かありました。しかし無事に生きて頂に上り帰ってこれたことはまさに神様が味方してくれているんだろうなと思いました。
 またアマゾンのイカダ下りは、登山とはまた違う危険な道で植村さんにとっては全く経験したことのないことだったにもかかわらず、また、猛暑地から極寒の地まで、地球の端から端まで各国の山上りをする中で出会ったたくさんの人々。またどの登山も人種が違っていくら言葉が通じなくてもたくさんの現地の人のおかげで成し遂げられたことは、読んでいてもよく伝わってきました。それもまた植村さん自身の人柄がにじみ出ていて、みんなに伝わっていたからこそ助けてくれたことだと思います。自分自身がいくらバカと言われてもなんともなかったけれど日本人がバカと言われて我慢できなかった植村さんは、日本人としての誇りを持っていることがよく分かって同じ日本人であることがうれしく思いました。最後のあとがきにあったように植村さんの夢は無限大で自分の体が動かなくなるまで登山を辞めることはないんだろうなと思いました。しかし、ネットで調べてみると40代の若さにして、遭難して今もなお遺体は行方不明と知りました。本の中で植村さんが、「山の好きなものは、山で死ねば本望だろうというが、とんでもないと思った」とモン・ブランでのクレバス落下時の思いを書いていたが、結局山で命を絶つことになってしまったんだなと思いました。正直こんなに毎回危険なことに挑戦していたらそうなってしまうのも時間の問題と言っても過言ではないような気がします。
 私はこの本、植村さんの歩んだ人生を読んで大きく世界が広がった気がします。マラソン練習のとき、作業の時、どんなにきつくても植村さんが経験したことに比べたらこんなちっぽけなことで苦しいなんて言えないなと思うとやる気が出ます。この苦しさを乗り越えた先に経験した人でしか味わうことのできない達成感があると思うとワクワクします。何にでも挑戦したくなります。自分の身体をもっと鍛えて自分がいろんな道を切り開く先駆者になりたいです。あと、まえちゃんとかにちゃんと須原さんという少し謎な組み合わせで那岐山に登ったと聞きました。ぜひ次に登山する機会があればぜひ私も一緒に登らせてもらえたらうれしいです。