「アンサンブルの3日間」 えつこ

2月24日

 この三連休は、三日間が一週間に感じたくらい、濃い三日間でした。やっぱり私は音楽なしでは生きていけません。主食のご飯と同じくらいに、音楽が必要だ、と感じました。

 先週の金曜日、私は焦っていました。町民音楽祭まで残り二週間なのに、『ねこバス』しかできていない。『弦楽セレナーデ』は人が揃わない、『ガラスの香り』は手つかず。でも、絶対にあきらめたくなくて、さとみちゃんと一緒にお父さんに相談しました。
 『ガラスの香り』を優先して練習して、『ねこバス』と『ガラスの香り』を死守して、『弦楽セレナーデ』は、余裕があったらする、という方針になりました。

 そして、三練休。このワンチャンスに、私たちは懸けました。この三日間は、『ガラスの香り』の三日間にして、死ぬ気で練習して絶対に形にする、と、気持ちを燃やしました。

 一日目。私は、一日三分の一ずつ進めて、三日間で形にするというプランをたてました。そのプランで練習にわかれようとしたとき、さとみちゃんが、「今日で、最後までやらない?」と、言いました。
 私は、目を見開き、「本当に?」と、言いました。さとみちゃんが、
「あらけずりでも良いから、最後までできるようにして、そこからブラッシュアップしていこう」
 と、言いました。

 それから、時間を区切って個人練習と合奏を、繰り返しました。私は、石にかじりついてでも吹けるようになる、という気持ちで練習に向かいました。私は、バリトンサックスのパートをトロンボーンで吹きます。楽譜の上には、音符がたくさん。トロンボーンの楽譜で滅多に見ないような複雑なフレーズ。それでも、私はみんなのために吹くんだ。
 今までも、自分の精一杯を尽くしてきたつもりだったけれど、こんなに必死になったのは、久しぶりだというくらいに必死でした。こだわりとか、雑念を全て打ち捨てました。心にあるのは、『ガラスの香り』を吹きたい、ただそれだけでした。
 今までの練習の概念が変わりました。私は、それまで、一小節ずつを確実に吹けるようにしていくというこだわりが強くて、吹けないフレーズがあると、なかなか次に進めませんでした。吹けないフレーズがあったとしても、とりあえず、最後まで吹けるようにする。私は、こだわりを打ち捨てて、練習に没頭しました。憑き物が落ちたような、清々しい気持ちになりました。

 土曜日も、日曜日も、日中から夜まで、へとへとになっても、「それでも練習できるのは今しかない!」と、さとみちゃんと言い合って、もっと良くしたい一心で、練習をしました。唇がふるえて音がふるえるくらいに、体の中がからっぽになるくらいに、練習をしました。でも、心は、これぞ生きている! という実感があり、幸せで、この時間がずっと続いて欲しいと思うくらいでした。

 日曜日、あらかた形になったところをお父さんが聞いてくださいました。なのはなの『ガラスの香り』今までで最少人数の4人でしたが、それでも成立していると、お父さんが言ってくださいました。
 よし、大事なのはこれからだ!

 三連休最終日の月曜日、日中の時間をもらい、日中も夜も、ずっと、みんなであわせました。
 バリトンサックスのパートは、複雑なフレーズよりも速い連符よりも何よりも、四分音符の刻みが難しいです。みんなの旋律を支える、四分音符の刻み。音楽に深みが出るような四分音符を刻みたいと、ひとつひとつの音をチューナーで確認をして音程を確認して、音源を聴き、その音をイメージして吹いて、を繰り返しました。
 さとみちゃんが、四分音符を切らずに、横の流を意識して吹くことを教えてくれました。私はそれまで、酸欠になるのが怖くて、四分音符を短く吹いていました。しかしそれでは子どもっぽいです。私は、酸欠になってもいい、ぶったおれても良い、という覚悟で吹きました。そしたら、さとみちゃんが、「いいね!」と言ってくれました。
 楽をして吹く音楽に感動はない。自分に厳しく吹かなくては、嘘だと思いました。

 また、なるちゃんのソロを支えるときに、なるちゃんのフレーズのはじまりを強めに吹いて、なるちゃんとのかみ合いを意識することを教えてくれました。そのときに「なるちゃんを応援するように」と、さとみちゃんが言いました。私は、その言葉をとても気に入りました。主旋律のさとみちゃん、なるちゃんを応援する気持ち、誇りに思う気持ちで、私は、さとみちゃんとなるちゃんの、床となって、バリトンサックスのパートを吹きたいです。

 そして、また、お父さんが、一日の練習の成果を聞いてくださいました。お父さんが、
「いいね! 文句なし。この調子で吹き込んでいったら良いと思うよ」
 と言ってくださいました。お父さんが演奏を聞いてくださっているとき、その眼差しが、お父さんの愛情をたくさん感じて、ずっと吹いていたいくらいに、幸せを感じました。まだまだ未完成でこれからなのですが、やっぱり、音楽がなくては生きていけないと、感じました。