写真:さとみ  文:たけひと

いまの季節に、なのはなファミリーとその周りで見ることのできる花たち。
それぞれの花の表情と物語を、写真と文章でお届けします。


 





「第57回 タンポポ」



なんだって、
  そんなに地面にへばりつき、
 頑張って、
    空を見上げているんだい。  
こんな寒い冬だというのに、
  もう春を感じているのかい。
 それとも、枯れ野を行く旅人の、
   歩き捨てる
    哀しみに感じ入って、
  その鮮やかな黄色で、
   足下から癒してやろう
         とでも――。

 

 

キク科タンポポ属の
   タラクサクムという学名は、
 「苦痛を癒す」という意味だとか。
 
フランス名は、ピサンリ。
「ベッドの中のおしっこ」
  を意味するとは、詩情がない。
 
君を根ごと掘り上げて乾燥させ、
   細かく刻んで煮出したなら、
 ベッドを濡らすほど
  おしっこが出る
   利尿作用ということか。
 
はては解熱作用、
  健胃、胆汁分泌促進まで。
 
 
いやいや、君を掘り上げて、
   飲もうなどとは思わない。
 
潔く、たった3日だけ、
 朝に蕾を開き、
  夕方閉じて、花の命を終える君と、
 もう少しだけ
   一緒に居させてもらおうか。
 
陽に輝くその黄色を、
   もっと心に留めたいから。

 


〈 撮影場所: 開墾26a 桃畑 〉



 
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