

第34回『梅』
冬は白。
寒い、寒い、白。
悲しい白。
寂しい白。
悲しみに耐えて、
寂しさを湛えて、
寒風に耐えながら、
梅は白を貯め、育んでいく。
やがて梅は、
はちきれんばかりになった白を、
春の兆しを告げる陽光のなかで、
誇り高く開いてみせるのだ。
悲しみの白が胸を打つのか、
寂しさの白が胸を打つのか、
寒さの中で梅の花を見上げると、
言葉にできない感傷に心を揺さぶられる
その悲しみの白の奥に隠された蜜を、
メジロが細い舌でなめとるために、
今日もやってきた。
でも、悲しみは忘れない。
証しの白を、眼の縁に彩りながら。
〈撮影場所:梅林〉



