第33回『クロッカス』
春まだ浅い白い土より
細い細い葉が頭を出し
細く細く緑の葉を伸ばし
こちらから、そちらから、
いくつも、いくつも葉が伸び
春まだ浅い白い土を割って
蕾が頭をもたげ
蕾が伸び
ここにも、その隣にも、
そしてこちらにも、その隣にも
いくつもの蕾が伸び
朝陽が届くのを待ちかねたように
蕾たちは一斉に、
春の陽光の中で次々に花を開いていく
クロッカスの花たちの、
その柔らかい色、嫋やかな姿、
無邪気に、純粋に、
春の喜びを歌い上げる
そして1日中、春の宴を楽しんだ花たちは、
なんということだ、
陽が西に傾くと、
夜の寒さに備えるのか、
次々に花を閉じていく
小さな、ちいさな、僕の妖精たちよ!