写真:さとみ  文:たけひと

いまの季節に、なのはなファミリーとその周りで見ることのできる花たち。
それぞれの花の表情と物語を、写真と文章でお届けします。


 





第24回『マルバルコウソウ(丸葉縷紅草)』



おや、誰かと思ったら、またお前かい。
なんだろうね、誰にも見向きもされないなんて、
よっぽど、そういう星の下に生まれてきたんだね。

お前の姉妹だという縷紅草(ルコウソウ)は、
立派な家の庭やベランダで、
たっぷりごちそうをもらいながら、
深窓の令嬢として、大切にかわいがられているというのに、
お前ときたら……。
こうしてうちの畑のサツマイモに取り付いてみたり、
この夏はトウモロコシに取り付いてみたり、
そりゃ、じゃまけにはしないけどさ。

出身も同じ熱帯アメリカなのに、
江戸末期にやってきたお前の先祖が、
家出してからというもの、
代々、畑や野原で自生してきたなんて、ね。
細く繊細な葉の縷紅草は弱い故に大事にされ、
そして、丸葉の丈夫なお前をかばう人はいなくなった。
いやいや、バカにしているわけじゃないよ。
私もお前とおんなじ身の上なのさ。

〈撮影場所:ゆず畑周辺〉
(2019年10月16日)



 
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