写真:さとみ  文:たけひと

いまの季節に、なのはなファミリーとその周りで見ることのできる花たち。
それぞれの花の表情と物語を、写真と文章でお届けします。


 





第25回『秋明菊(シュウメイギク)』



どうしてだろう。
お前を見ていると、
なぜか悲しく、心が騒ぐ。

健気だし、真面目だし、誠実なのに、
いや、それだけじゃない、
華やかで、可愛らしくて、
悪いところなんて、ひとつも目につかないのに、
胸の奥の小さな動揺を、
僕はいつまでも、なだめることができない。

やっぱり、忘れられないんだ。
お前の仲間のアネモネは、
そう、花と春の女神フローラの侍女をしていたアネモネのことだが、
西風の神ゼピュロスはフローラではなく、アネモネを愛していた。
それを知った女神フローラは、怒って彼女を追放した。
なのに、ゼピュロスは愛していたアネモネを見捨てて、
フローラをアネモネの姿に変えて愛した――。
ひどい話だ。
「はかない恋」「見捨てられた」がアネモネの花言葉なら、
仲間のお前の花言葉は「薄れゆく愛」。
花びらは退化していて、
その花びらに見えるものが、本当は顎(がく)だというのも、
心が騒ぐ理由かもしれないのだけれど……。

(「でも大丈夫、なのはなファミリーの玄関前で咲いているから」
お母さんより

〈撮影場所:なのはなファミリー玄関前〉
(2019年10月21日)



 
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