第2回『ダリア』
ダリアの花言葉は「栄華」、「気まぐれ」、
あるいは「裏切り」とも――。
なかでも赤いダリアの花言葉は「華麗」。
超巨大輪から極少輪まで、
いずれも高貴な佇まいは変わることがありません。
ナポレオンの妻、ジョセフィーヌが
こよなく愛した花として知られています。
何を考えている? いえ、何も……。
何か、欲しい物はある? 何も……。
じゃあ、……。 ちょっと待って。
しばらく、そっとしておいてくださらない?
わかりました。では、どうぞお好きなように……。
そうして俯いた君の姿は、
それでも艶やかで、僕は言葉を失う。
その俯いた君にさえ、僕は心を奪われてしまうのだ。
ああ、君がずっとそばにいてくれたら、
もうそれだけでいい。
僕にさせてもらえることがあるのなら、
何でもさせてもらうよ。
つい、そんな言葉を発しそうになり、
慌てて口をつぐむのだ。
そして君が顔を上げたとき、
僕は思わず君から目を逸らしてしまう。
その可憐さに言葉を失ううち、
濃密な時間が僕から君を遠ざけていく。
ああ、君の住む世界は、僕とは違い過ぎるのだ。
僕はいつまでも君から圧倒されて、
やがて遠くから覗き見るように、
君の姿にため息を何度ももらすのだった。