第3回『あざみ(薊)』
子供の頃、その葉の棘に刺されるのが、嫌だった。
濃く、深い花の色に、窺い知れない大人の世界を感じた。
あざみ、触れてはいけない世界。
あざみ、覗き見てはいけない世界。
あざみ、子供は近寄ってはいけない花。
それから半世紀以上も過ぎてみると、
そのあざみの紫が、なんと優しく映ることか。
いまはあなたを身近に感じるのはなぜだろう。
あなたを見ると、懐かしく、
親しい感情がこみ上げてくる。
子供らしい心をなくしてしまったのか、
少し落胆しながら、花言葉を調べてみると、
「独立、報復、厳格」そして「触れないで」。
やっぱりあざみは、大人の世界を持っていたのだ。
スコットランドをその棘で守ったといわれ国花だという。
そう大人だけが持つことのできる奥行きのある強い優しさ、
野にありながら、独り立つあざみ――。