第38回『菜の花』
ある若い母親に女の子が授かった。
超未熟児だった。
「この子は重い障害があり、
一生、寝たきりです」
医師の言葉が胸に刺さった。
どうしたら、いいだろう。
この子のために、私は何ができるだろう。
母親は必死で考えた。
もしも、本当に一生、寝たきりなら、
歩けないのなら――。
この子のために、都を作ろう。
歩けないとしても、
みんなが都に通ってくれたらいい、
この子のもとへ大勢の人が、
通ってきてくれたらいい。
そう、菜の花が咲き乱れる庶民的な都、
菜の花の都なら寂しくない、
名前を菜都と名付けた。
それから30年以上もの年月が流れた。
菜の花の都を作る仲間集めに奔走した年月は、
なのはなファミリー設立へとつながっていった。
そして、寝たきりと言われた女の子は、
いまなのはなファミリーの中を車椅子で疾走し、
買い物や来客の送迎を自分の車でこなし、
たくさんの女の子のなかの1人として、
そして頼れるスタッフの1人として、
元気にすごしている。
1人の若い母親に、
生きる希望を与えた花、
そして誰もが生きられる道を求め続ける花、
菜の花、なのはな。
〈撮影場所:古畑〉