「第55回 オータムポエム」
畑一面、真っ白に霜が降り、
冷気が頬を刺す朝、
ギシギシという足音と一緒に
ハウスに向かう。
ドアを開くと、何ということだ。
凍えた世界など無縁のように、
黄色い可憐な花で、
君が暖かく迎えてくれるのだ。
葉と茎には瑞々しい緑をしたたらせ、
黄色い花の付け根には、
まだよまだよと
蕾がたくさん控えている。
春を先取りした夢の空間に、
硬く閉ざした心がほぐされていく。
青菜が少ないこの1月、2月に、
採っても、採っても、
いつまでも収穫を許してくれる君。
そしてひとたびフライパンに載せたなら、
どんな隣人とも仲良く調和し、
口福をもたらしてくれる。
その甘み、食感は、
アスパラガスに例えられるが、
青菜の少ない厳寒期に、
この緑したたるビタミン感は、
ほかの何よりも
生命力を甦らせてくれるのだ。
それにしても、この真冬に、
いや譲ってこの春に、
なぜ「秋の詩」なのか。
それは34年前に
この名前で品種登録した
「サカタのタネ」の開発者だけが
秘めているポエムなのだ。
〈 撮影場所: 開墾26a 桃畑 〉