

「第54回 クチナシ」
その白い花は
ぽってりとした厚みに
思春期の苦い哀しみを含み
クチナシのその花は、
幾多の人生の節目に
幾度も立ち会いはするものの
やがて、慶事も年月とともに趣を変え、
時にはその思い出も、その白い花も、
胸掻きむしられるものでしかなくなり
降り積もった哀しみは、やがて発酵し、
その白い花から放たれるのは、
重く、甘い、この世のものとは思えない香り
〈撮影場所:駐車場前花壇〉


