第44回『樒(シキミ)』
霊界の入り口に立ち、
おぼろげな花びらの佇まいとは裏腹に、
シトラスの強い香りは人々を深く慰め、
邪気と獣たちを遠ざける
植物でたった1つだけ、
「劇物」の指定を受ける猛毒を持つ。
それはあたかも強烈な魅力と
人生を狂わせる毒と併せ持つ
恋しい君のようだ
奥山の 樒が花の名のごとや
しくしく君に 恋わたりなむ (万葉集より)
人里離れた奥山にひっそりとさくしきみの名のように、
しくしくといつまでも届かぬ恋を僕は患い続けるのだ
〈撮影場所:ユーノス畑〉