写真:さとみ  文:たけひと

いまの季節に、なのはなファミリーとその周りで見ることのできる花たち。
それぞれの花の表情と物語を、写真と文章でお届けします。


 





第28回『桜蓼(サクラタデ)』



 ぼくは、だれにも会いたくなかった。
      だれにも、見られたくなかった。
 ぼくは、1人でいるときだけ、
        息をすることができた。

 人間をやるのがむずかしい。
       そう思うことがある。
 そんなとき、
   ぼくは自分を取り戻すまで、
       隠れている場所があった。

 いつものようにそこへもぐりこむと、
   透き通るような声で、
    「おかえり」と
      女の子が優しく迎えてくれた。
 人とは話しができなかったけれど、
       花とならば話しができた。
           あの頃は――。

 少年はそこが秘密の場所なりき
       地蔵堂うらサクラタデ咲く
              (鳥海昭子)

〈撮影場所:崖崩れハウス周辺〉



 
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